連結会計・経験者向け基本講義

連結会計・経験者向け基本講義
連結会計のインプット学習はしたものの、今ひとつ腹落ちしていない、本試験で十分に得点できない、といった方向けの講義を行いましたので、その一部を公開します。
連結会計の仕訳はシンプルですし、タイムテーブルとともに暗記すればそれなりに得点は可能です。しかし、そういった学習方法では本試験でヒネられたときに対応できませんし、仮にミスをしたとしても気付かないものです。また、解答時間も掛かることでしょう。
そこで、本講義では、基本問題を設例として連結会計の基本的な解き方をご紹介します。
プロ簿記1級合格プログラム・連結会計基本講義
プロフェッショナル簿記1級合格プログラムでは、ライブ配信システムを用いた講義を行っています。そのときに使用した講義スライドの一部をブログ記事用に編集し公開します。
連結会計の盲点
- 連結会計はすでに個別F/Sが合算されている所からスタートする
- 連結会計は簿記の5要素ではなく直接F/Sを動かす
連結財務諸表は作成手順が重要
- 連結P/L→連結S/S→連結B/S という流れが重要
基本問題を解いてみよう
- タイムテーブルの作り方
- 連結修正仕訳
- 連結F/Sの作り方
スライドの内容から一部抜粋
連結会計は、今まで学習してきた一般的な期中仕訳や決算整理仕訳と比較して大きな相違点が2つあります。ひとつは、連結会計は個別財務諸表の合算からスタートする、という点です。ですから、行うべき仕訳は、その合算の修正(消去)仕訳です。この点をしっかり意識していないと、混乱のもとになります。
もう一つは、連結会計の仕訳は、簿記の5要素(資産、負債、純資産、収益、費用)を動かすのではなく、財務諸表を直接動かしているという点です。ですから、勘定科目ではなく表示科目を使います。
まずは、こういった前提となる点を押さえ、仕訳が切れるようになりましょう。このさい、タイムテーブルを利用すると短時間でスムーズに仕訳が切れます。ただし、仕訳が切れるだけでは、実際の本試験に対応できません。この仕訳を使ってどのように連結財務諸表を作成するのか、その手順を押さえることが大切です。
連結財務諸表の作成は、まず、①連結損益計算書を作成し、そこで算定された利益を、②連結株主資本等計算書に移し、その結果算定された期末残高を、③連結貸借対照表に移す、という手順を踏まなければいけません。この手順をないがしろにすると、仕訳が切れても、いざ連結財務諸表を作る段階になって戸惑ってしまうはずです。
本講義では、簡易な問題を用意しました。この問題を解きながら、その流れを理解してください。
資本連結の基本問題(スライド9ページ)
P社はX4年3月31日、S社発行済株式の80%を2,940万円で取得し支配を獲得。支配獲得日のS社の純資産は以下の通り。
- 資本金は2,000万円、利益剰余金は1,000万円
- S社の所有する土地に500万円の含み益があった。
法人税等税率40%とし、税効果会計を適用する。のれんは発生年度の翌年から10年間で均等償却する。また、個別財務諸表は以下のとおりである。5/3/31における連結財務諸表を作成しなさい。
個別損益計算書(4/4/1-5/3/31)
| P | S | |
|---|---|---|
| 諸収益 | 5,900 | 2,000 |
| 受取配当金 | 100 | 0 |
| 諸費用 | 5,300 | 1,650 |
| 法人税等 | 200 | 100 |
| 当期純利益 | 500 | 250 |
株主資本等変動計算書(5/3/31)
| 利益剰余金 | P | S |
|---|---|---|
| 期首残高 | 1,400 | 1,000 |
| 剰余金の配当 | -400 | -100 |
| 当期純利益 | 500 | 250 |
| 期末残高 | 1,500 | 1,150 |
個別貸借対照表(5/3/31)
| 借方 | P | S | 貸方 | P | S |
|---|---|---|---|---|---|
| 諸資産 | 27,060 | 6,000 | 諸負債 | 25,500 | 2,850 |
| S株式 | 2,940 | − | 資本金 | 3,000 | 2,000 |
| 利益剰余金 | 1,500 | 1,150 |
解き方
資本連結のタイムテーブル(スライド13ページ)
まず、タイムテーブルを作ります。評価差額は、土地の含み益500×(1−税率40%)=300で計算します。子会社の剰余金の配当(100)と非株へ振り替える利益(250×20%=50)は、株主資本等変動計算書から読み取ります。
| 4.3.31 | 5.3.31 | ||
|---|---|---|---|
| 資本金 | 2,000 | 2,000 | |
| 利益剰余金 | 1,000 | 剰余金の配当
P-80、非-20 利益の非株振替 P200、非50 |
1,150 |
| 評価差額 | 300 | 300 | |
| 合計 | 3,300 | 3,450 | |
| 非支配株主 | 660 | 690 | |
| のれん | 300 | のれん償却△30 | 270 |
資本連結の仕訳(スライド14ページ)
上記のタイムテーブルにもとづき仕訳を起こすと次のようになります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 土地 | 500 | 評価差額 | 300 |
| 繰延税金負債 | 200 | ||
| 資本金 | 2,000 | S株式 | 2,940 |
| 利首 | 1,000 | 非首 | 660 |
| 評価差額 | 300 | ||
| のれん | 300 | ||
| のれん償却 | 30 | のれん | 30 |
| 受取配当金 | 80 | 剰余金の配当 | 100 |
| 非当 | 20 | ||
| 非PL | 50 | 非当 | 50 |
連結P/Lの作成(スライド17ページ)
上記の仕訳からPL科目の動きだけを抜き出して連結P/Lを作成します。
| P | S | 合算 | 修正 | 連結 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 諸収益 | 5,900 | 2,000 | 7,900 | 7,900 | |
| 受取配当金 | 100 | 0 | 100 | -80 | 20 |
| 諸費用 | 5,300 | 1,650 | 6,950 | 6,950 | |
| のれん償却 | 30 | 30 | |||
| 法人税等 | 200 | 100 | 300 | 300 | |
| 非株の当期純利益 | 50 | 50 | |||
| P社の当期純利益 | 590 |
連結S/Sの作成(スライド19ページ)
上記の仕訳からSS科目(利益剰余金関連と非株関連)の動きだけを抜き出して連結S/Sを作成します。また、先に計算した連結P/Lの当期純利益(590)を連結S/Sに転記します。
| 利益剰余金 | P | S | 合算 | 修正 | 連結 |
|---|---|---|---|---|---|
| 期首残高 | 1,400 | 1,000 | 2,400 | -1,000 | 1,400 |
| 剰余金の配当 | -400 | -100 | -500 | 100 | -400 |
| 当期純利益 | 500 | 250 | 590 | ||
| 期末残高 | 1,500 | 1,150 | 1,590 |
| 非支配株主 | 連結 |
|---|---|
| 期首残高 | 660 |
| 当期変動額 | −20+50=30 |
| 期末残高 | 690 |
連結B/Sの作成(スライド21ページ)
上記の仕訳からBS科目の動きだけを抜き出して連結B/Sを作成します。また、先に計算した連結S/Sの利益剰余金と非支配株主持分の期末残高を連結B/Sに転記します。なお、S株式は計算するまでもなく、消去されます。また、資本金は動きがないので、P社の資本金だけとなります。
| 借方 | P | S | 合算 | 修正 | 連結 |
|---|---|---|---|---|---|
| 諸資産 | 27,060 | 6,000 | 33,060 | 500 | 33,560 |
| S株式 | 2,940 | – | 0 | ||
| のれん | 270 |
| 貸方 | P | S | 合算 | 修正 | 連結 |
|---|---|---|---|---|---|
| 諸負債 | 25,500 | 2,850 | 28,350 | 28,350 | |
| 繰延税金負債 | 200 | 200 | |||
| 資本金 | 3,000 | 2,000 | 3,000 | ||
| 利益剰余金 | 1,500 | 1,150 | 1,590 | ||
| 非支配株主 | 690 |
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“連結会計・経験者向け基本講義” に対して9件のコメントがあります。
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連結の基本解説をありがとうございました。
個別F/Sを合算してそれから修正仕訳にて引いていくという点は理解していましたが、
5要素を動かすのではなく、P/L-S/S-B/Sを直接動かしているという感覚はなかったので
(パターンでやっていました)解説でイメージがつかめました。
剰余金の配当の仕訳も今になってようやく理解できました。
解答までにとにかく時間がかかってしまうので、時間内に解けるようにしたいです。
>P/L-S/S-B/Sを直接動かしているという感覚はなかったので(パターンでやっていました)解説でイメージがつかめました。
良かったです。ちなみにですが、例えば、連結会計でよく出てくる商品未達の問題ってありますよね。「P社がS社から掛けで仕入れている商品10万円が未達である」みたいな問題です。
これって、 商品10万円/買掛金10万円 という仕訳切りますよね。これも期中なら、 仕入10万円/買掛金10万円 になるのに、なぜ、連結だと、仕入が商品になるの?という理由を考えるとより理解が深まると思います。
>解答までにとにかく時間がかかってしまうので、時間内に解けるようにしたいです。
連結は、非常にパターン化されているので、練習を重ねれば解く時間は飛躍的に伸びていきます。ただし、あまりにパターンで解いてしまうと、ヒネられたときに対処できなくなりますので、常に意味を考えるようにして頂ければと思います。
>商品10万円/買掛金10万円 という仕訳切りますよね。
→ 「未達」の仕訳はテキストだと①売原10万/買掛金10万→②商品10万/売原10万となって
③商品10万/買掛金10万とする、というステップですが、
結局、期末での「未達」は在庫となるので連結会計でどうするか考えると、
B/Sを動かし、表示科目を使うので、
商品10万/買掛金10万といきなり考えていいということでよろしいでしょうか?
そのとおりです。
商品到着前に決算をしてしまった場合と、到着後に決算をした場合の2パターンを考えてみましょう。到着前の期首が100、期末が200とします。また未着は10とします。
■パターンA:未着のまま決算をしたケース
決算:
仕入100/繰越商品100
繰越商品200/仕入200
■パターンB:到着してから決算をしたケース
到着時:
仕入10/買掛金10
決算:
仕入100/繰越商品100
繰越商品210/仕入210
パターンAとパターンBを比較して、どの科目がどれだけ増減したかを確認してください。一見すると仕入が変化しているようですが、よく計算すると変化していません。変化しているのは、繰越商品が10増えて、買掛金が10増えているだけです。ここで、繰越商品はB/Sでは商品と科目名が変わりますから、結果、商品10/買掛金10という仕訳になります。これが未着のときの仕訳の根拠です。これは、これで全くもって正しい解説です。
しかし、こんな長ったらしいプロセスをいちいち考えなくても、そもそも「もし商品が到着していたら、F/Sのどこを直せばいいのだろう」と考えればいいのです。
商品が到着しただけで、売ってもいないのに収益(売上高)や費用(売上原価)が増減するわけないので、PLが動くはずがない。ということは、BSしか動かない。商品が増えるのだから商品勘定が増えるのは当然。じゃあ、なぜ商品が増えたかといえば掛け仕入なので、買掛金だ。よって、商品10/買掛金10
このように、ある取引が発生したとき、直接F/Sを修正するとしたらどうすればいいかを考えれば、連結のたいていの仕訳は、一発でイメージできます。
先生、解説をありがとうございました。
PLが動くはずがない、BSしか動かない・・・なるほどです。
とてもよくわかりました。
直接F/Sを修正するとどうなるか考えて問題を解いていきたいと思います。
こんばんは!
以前何度かご回答ご返信していただきありがとうございました!
今回連結会計のところでも一つ疑問があって、ここでコメントするのが正解かは分かり兼ねてしまいますが、質問させていただきます。
そもそも非支配株主持分というものと親会社に帰属する分とに何故分けるのでしょうか。
親会社にとっては子会社の純資産も支配していると考えて非支配株主持分に分けないと言うふうには考えられないのでしょうか。
お手数をおかけしますが、ご回答お願いします。
>今回連結会計のところでも一つ疑問があって、ここでコメントするのが正解かは分かり兼ねてしまいますが、質問させていただきます。
記事に関連するご質問なら構いませんが、一般的な質問はご遠慮ください。ごめんなさい。
>そもそも非支配株主持分というものと親会社に帰属する分とに何故分けるのでしょうか。
まあ、せっかく来てくれたので今回だけ答えるかなと思ったのですが、質問がちょっと漠然としてて回答が難しいです。
理論対策として、親会社説と経済的単一体説のことを聞きたいってこと?それとももっと素朴な疑問?一応、後者だとして答えますよ。
なぜ、分けるか?
そもそも、連結財務諸表って作るのも公表するのも親会社です。ただ、自分だけの力じゃなくて非株の力も借りてグループ全体を構成しているわけです。
で、株主総会で、親会社が「我がグループの財務諸表はこれです!」って公表して「しかし、我々、親会社の持分については非公開です」っていうのもおかしいでしょ。
例えば子会社の業績がすごくいいとしても、その子会社を100%支配しているのか、60%くらいなのかによって投資家の判断が変わりますよね。それが分からないんじゃあ困っちゃうじゃないですか。
って、そういうことが聞きたいわけじゃないのかな。なんか答えになってなかったら、ごめん。
まあ、よく分からなければ「親会社説」でググってみておくれ。ヒントにはなると思う。
資産負債を時価評価する時になぜ評価差額が出てくるのかがわかりません。
時価評価する時は~益、~損みたいな損益項目がでてくるんじゃないんですか…?
ざっくりいうと、「○○益」とか「○○損」っていうのは、PLに計上されるものなんですけど、PLに計上されるためには「実現」していないといけなんです。
例えば保有している売買目的有価証券が値上がりしたとします。時価評価すると有利な評価差額が出ています。
この売買目的有価証券は「値動きで儲けよう」という気持ちで取得しているわけですから、実際に売ってなくても、含み益の段階で実現しているようなものと考えるんです。よって、PLに計上します。そのため「評価益」という勘定を使います。
一方で、その他有価証券が値上がりしたとします。時価評価すると有利な評価差額が出ています。
このその他有価証券は「値動きで儲けよう」ではなくて、例えば業務提携しようなどという気持ちで取得しているわけです。売る気がありません。その段階で含み益があっても、売る気がないので実現しないのです。そういう実現しない評価差額は、PLに計上しません。そのため「評価益」という勘定は使わず、単に差額ですよ、という意味を表す「評価差額」を使います。
会計のもっとも根本のところです。まだ、1級は未学習ですかね?学習していくと分かってくると思いますよ。