第170回日商簿記1級・詳細解説【商業簿記】

商簿

第170回商業簿記の感想

第170回日商簿記1級本試験、受験してきました。

商品売買を中心にボリュームもあり難しかったですね。商品売買関連は思い切って捨てて、それ以外の論点をいかに取りこぼさないかの勝負だったように思います。

得点の目安は、目標13点です。傾斜配点があると思います。

商簿・問題概要

答案要求

個別財務諸表の損益計算書と貸借対照表が問われました。

問題概要
  1. 特殊商品売買(一般販売、割賦販売、未着品販売)
  2. 貸倒引当金(CF見積法による貸倒懸念債権の処理)
  3. 貸倒引当金(一般債権)
  4. 商品保証引当金
  5. 有価証券(受取配当金の処理)
  6. 為替予約(振当処理)
  7. 固定資産
    7.1 圧縮積立金
    7.2 200%定率法
    7.3 資産除去債務
  8. 新株予約権付社債(現金払込による行使)
  9. 法人税等
以下の解説をご覧頂くうえでのお願い
  • 原則として金額の単位が無いものはすべて千円単位です。
  • 誤字脱字などありましたらご連絡ください。

1.1 特殊商品売買(割賦販売の貸し倒れ)

割賦販売の貸し倒れの処理です。

  1. 割賦販売は、いずれも20回の月賦払いで、販売した月末から第1回目の代金を回収している。前期および当期の割賦販売価格は、毎期一般商品販売価格の15%増しである。
  2. 割賦売掛金は利息を含む金額で計上しており、割賦販売の金利部分については利息未決算勘定で処理し、割賦売掛金回収時に利息法で受取利息に振り替える方法によっている。
  3. 当期中に次の割賦売掛金が貸し倒れたが、期末現在未処理となっている。なお、戻り商品は期末現在再販されていない。
    ① 当期に販売した商品(利息未決算残高2,310千円、割賦販売売価34,500千円)が期中に6回目の代金を回収した後に貸し倒れた。戻り商品の評価額は9,375千円である。
    ② 前期に販売した商品(利息未決算残高1,154千円、割賦販売売価23,000千円)が前期末に8回目の代金を回収した後、当期4月末に入金されずに貸し倒れた。戻り商品の評価額は1,875千円である。なお、前期末において割賦売掛金に対して2,850千円の貸倒引当金を設定している。

3.の①は、当期に販売した割賦売掛金が貸し倒れて戻り商品があるケースです。貸倒引当金は設定されていないため、貸倒損失とします。

利息未決算 2,310 割賦売掛金 24,150*1
戻り商品 9,375    
貸倒損失 12,465    

*1 割賦販売売価34,500千円×14回÷20回=24,150千円

3.の②は、前期に販売した割賦売掛金が貸し倒れて戻り商品があるケースです。貸倒引当金を取り崩したうえでそれを超える損失を貸倒損失とします。

利息未決算 1,154 割賦売掛金 13,800*1
貸倒引当金 2,850    
戻り商品 1,875    
貸倒損失 7,291    

*1 割賦販売売価23,000千円×12回÷20回=13,800千円

1.2 特殊商品売買(一般販売と未着品)

商品ボックスを使って分析を行います。

  1. 未着品売価は、毎期一般商品販売価格の10%引で、分記法により記帳している。当期中の取引については、期首未着品残高18,750千円、貨物代表証券当期取得高790,250千円、当期商品引取高134,000千円である。引取時に引取運賃8,500千円を別途支払っている。当期に貨物代表証券のまま転売した売価の総額は777,600千円である。なお、未着のまま商品を売渡す場合であっても、仕入先から顧客に商品が到着するまでは当社が当該商品を支配しており顧客への引渡しも当社の責任において行っている。
  2. 期末の商品棚卸高は101,250千円である(戻り商品評価額と未着品は含まれていない)。棚卸減耗損および商品評価損は生じていない。

一般商品ボックス

期首商品
97,500*1
売上原価
1,346,250*5

当期仕入
1,350,000*2
11,250*4
期末商品
101,250*3
11,250*4

*1 前TBの繰越商品
*2 前TBの仕入
*3 資料5より
*4 戻り商品:9,375千円+1,875千円=11,250千円
*5 貸借差額

未着品ボックス

期首商品
18,750*1
転売(売上原価)
648,000*2

当期仕入
790,250*1

引取
△134,000*1

期末商品
27,000*3

*1 資料4より
*2 転売分の原価:売価777,600千円÷0.9×一般販売原価率75%=648,000千円
*3 貸借差額

解法手順
Step.1 一般販売ボックスの作成

一般商品(割賦販売分含む)ボックスを作り、問題資料から判明している金額を埋めます。すると、貸借差額から売上原価1,346,250千円が判明します。

Step.2 一般販売の原価率の算定

この売上原価は、一般売上(前TB 1,175,000千円)と割賦売上(前TB 713,000千円)の合計に対応するものであり、資料1に「当期の割賦販売価格は、毎期一般商品販売価格の15%増し」とあることから、次の式によって一般販売の原価率を算定します。

一般販売の原価率:
 1,346,250千円÷(一般販売1,175,000千円+割賦販売713,000÷1.15)=75%

Step.3 未着品ボックスの作成

未着品ボックスを作り、問題資料から判明している金額を埋めます。続いて転売分の売上原価を求めます。資料4に「未着品売価は、毎期一般商品販売価格の10%引」「転売した売価の総額は777,600千円」とあることから、次の式によって未着品を転売した分の原価を求めます。

転売分の原価:
 売価777,600千円÷0.9×一般販売原価率75%=648,000千円

最後に、貸借差額で未着品の期末商品棚卸高27,000千円を求めます。

なお、資料5に「引取時に引取運賃8,500千円を別途支払っている」とあり、仕訳にすると「仕入8,500/現金預金8,500」ですが、これは期中処理として処理済みですから(前TBの仕入勘定はこの8,500千円を含んだ金額)、特段、処理は必要ありません。

【解答欄】

売上高:1,175,000千円+713,000千円+777,600千円=2,665,600千円
商品期首棚卸高:97,500千円+18,750千円=116,250千円
当期商品仕入高:1,350,000千円+11,250千円+790,250千円-134,000千円=2,017,500千円
商品期末棚卸高:101,250千円+11,250千円+27,000千円=139,500千円
貸倒損失:12,465千円+7,921千円=20,386千円

2 貸倒懸念債権(CF見積法)

貸倒懸念債権は、20X3年4月1日に約定利子率年2%(毎期3月末払い)、20X8年3月31日に一括返済の契約で得意先に貸し付け、前期末の利払後に得意先より条件緩和の申出があり、返済期日までの利払いを年1%に減免することとしたため貸倒懸念債権に区分したものである。前期末において、債権の帳簿価額から当期以降の利息受取額と元本回収額との総額を当初の約定利子率で割り引いた金額を差引いた額を、貸倒引当金として設定してある。なお、本日、当座預金口座へ利息が振り込まれたため、受取利息を計上する。また、時間の経過にともなう貸倒見積額の減少分については受取利息として処理する。

前期末時点(20X5年3月31日)における将来CFの現在価値:
 500千円÷1.02+500千円÷1.022+50,500千円÷1.023=48,558千円

当期の受取利息:48,558千円×2%=971千円

前TBの貸倒引当金のうち、貸倒懸念債権に係る分は、50,000千円-48,558千円=1,442千円

現金預金 500 受取利息 971
貸倒引当金 471    

3 貸倒懸念債権(一般債権)

利息未決算控除後の期末割賦売掛金については4%で、その他の売上債権については2%で、貸倒引当金を差額補充法で設定する。

電子記録債権:56,000千円
売掛金:72,000千円
割賦売掛金:565,800千円-24,150千円-13,800千円-利息未決算33,950千円=493,900千円
 * 利息未決算残高:37,414千円-2,310千円-1,154千円=33,950千円

一般債権に係る貸倒引当金設定額:(56,000千円+72,000千円)×2%+493,900千円×4%=22,316千円
一般債権に係る貸倒引当金残高:前TB 6,242千円-取崩分2,850千円-1,442千円=1,950千円
 * 貸倒懸念債権分:50,000千円-48,558千円=1,442千円
貸倒引当金繰入額:22,316千円-1,950千円=20,366千円
貸倒懸念債権に係る貸倒引当金残高:1,442千円-471千円=971千円

【解答欄】

貸倒引当金繰入額:20,366千円
貸倒引当金(総額)
:一般債権22,316千円+貸倒懸念債権971千円=23,287千円

4 商品保証引当金

当期中に、前期に品質保証を付して販売した商品に対して顧客から修理の申し出があり、その修理を外部の業者に依頼して修理代金1,600千円を支払っていたが、仮払金として処理したままである。なお、この商品保証は品質保証型の保証であり、追加的なサービスを顧客に提供するものではない。また、当期の売上に対しても保証実行が見積もられるため、当期の総売上高(便宜上、未着品売買と貸倒分を含む)に対して1%の商品保証引当金を洗替法によって設定することとし、損益計算書上へは商品保証引当金戻入勘定と商品保証引当金繰入勘定との差額を計上する。

当期中の修理代金1,600千円の処理は、前期に計上した商品保証引当金を取り崩します。当期の売上に対する商品保証引当金の設定を行うためには総売上高が判明している必要があるため、さきに商品売買の処理をしておく必要があります。

商品保証引当金 1,600 仮払金 1,600
商品保証引当金繰入 26,056 商品保証引当金 26,056

* 商品保証引当金残高:前TB 2,200千円-取崩分1,600千円=600千円
* 商品保証引当金繰入:売上高2,665,600千円×1%-600千円=26,056千円

【解答欄】

商品保証引当金繰入26,056千円

5 有価証券

本問は、その他有価証券から得られる配当金がその他資本剰余金を財源として支払われた場合、受取配当金(収益)とはせずに、その他有価証券を取り崩す処理を行うことを知っているかどうかを問われています。市販されている簿記1級の書籍には掲載されていない論点のため、1級受験生にとっては少し厳しい問題だったかもしれません。

甲社株式

現金預金 1,920 受取配当金 1,920
売買目的有価証券 3,000 有価証券評価益 3,000

* 有価証券評価益:51,000千円-48,000千円=3,000千円

乙社株式

現金預金 780 受取配当金 1,920
その他有価証券評価差額金 2,000 有価証券評価益 3,000

* その他有価証券評価差額金:24,000千円-22,000千円=2,000千円

丙社株式

現金預金 2,200 その他有価証券 2,200
その他有価証券 5,200 その他有価証券評価差額金 5,200

* その他有価証券評価差額金:37,000千円-(34,000千円-2,200千円)=5,200千円

【解答欄】

有価証券評価益:3,000千円
受取配当金:前TB 979千円+1,920千円+780千円=3,679千円
その他有価証券評価差額金:5,200千円-2,000千円=3,200千円

6 為替予約と未収利息

為替予約(振当処理)
前払費用 5,625*1 短期貸付金 6,000
為替差損 375*2    

直々差額:1,500千ドル×(@161円-@160円)=1,500千円
直先差額のうち当期帰属分:1,500千ドル×(@156円-@161円)×1ヶ月÷4ヶ月=△1,875千円

*1 直先差額のうち翌期帰属分:1,500千ドル×(@156円-@161円)×3ヶ月÷4ヶ月=△5,625千円
*2 為替差損:1,500千円-1,875千円=△375千円

未収利息
未収利息 3,864 受取利息 3,864

* 60千ドル×2ヶ月÷5ヶ月×CR@161円=3,864千円

【解答欄】

為替差損:375千円
受取利息:前TB 67,908千円+貸倒懸念債権971千円+長期貸付金3,864千円=72,743千円

7 固定資産

(1)建物

減価償却費 50,000 建物減価償却累計額 50,000
圧縮積立金 10,000 繰越利益剰余金 10,000

* 前TB圧縮積立金:10,000千円×16年=160,000千円

(2)備品

減価償却費 3,932 備品減価償却累計額 3,932

*(前TB備品60,000千円-累計額40,339千円)×償却率0.2=3,932千円
  保証額:前TB備品60,000千円×保証率0.06552=3,931.2千円(<3,932千円を確認)

(3)機械装置

減価償却費 60,000 機械装置減価償却累計額 60,000

* 前TB機械装置:850,000千円+72,415千円×0.69047=900,000千円
  減価償却費:900,000千円÷15年=60,000千円

資産除去債務利息費用 1,345 資産除去債務 1,345

* (0.76214-0.74356)×72,415千円=1,345千円

別解について

前TB資産除去債務53,845千円×2.5%=1,346千円

問題文に現価係数が6年分記載されているため、この現価係数にもとづいて期末の資産除去債務を算定し、前期末の資産除去債務との差額を資産除去債務利息費用とする方法が作問者の意図であると考えられます。一方で、適用指針の設例では、期首資産除去債務に割引率を掛けて資産除去債務利息費用を算定しているため、この方法も別解としました。

【解答欄】

圧縮積立金:前TB圧縮積立金160,000千円-10,000千円=150,000千円
減価償却費:50,000千円+3,932千円+60,000千円=113,932千円
資産除去債務利息費用:1,345千円(別解1,346千円)

8 新株予約権付社債

社債利息 777 社債 777

* 社債簿価の推移

20X3年4月1日:100,000千円×96.12%=96,120千円
20X4年3月31日:96,120千円×1.01-クーポン200千円=96,881千円
20X5年3月31日(前TB):96,881千円×1.01-クーポン200千円=97,650千円
20X6年3月31日(当期末):97,650千円×1.01-クーポン200千円=98,427千円

* 社債利息:98,427千円-97,650千円=777千円

新株予約権 2,910*1 資本金 38,955*2
仮受金 75,000 資本準備金 38,955*2

*1 100,000千円×(1-96.12%)×75%=2,910千円
*2 (2,910千円+75,000千円)÷2=38,955千円

【解答欄】

社債:98,427千円
社債利息
:97,650千円×1%=977千円
資本準備金
:前TB122,000+38,955千円=160,955千円

9 法人税等

【解答欄】

法人税、住民税及び事業税:181,680千円×30%=54,504千円