連結会計・手形の処理の決定版

連結における手形取引を得意論点にしよう
そういえば、これだけ1級の記事書いてきたのに、連結会計における手形の処理は書いてなかったなと思い、書いてみる。
連結会計の総合問題に取り組んでいると、手形取引がよく登場する。定番論点だし、仕訳もパターン化されているので、得意論点にしている人も多いと思う。
しかし、シンプルな問題ならパターンにはめるだけで解けても、少し複雑な出され方をされると混乱してしまうという人も少なくないだろう。
ここでは、これだけ押さえておけば、1級・会計士レベルでも大丈夫、という取引パターンとその解き方を紹介しよう。
1時間も勉強すれば、十分マスター出来るはずだし、それだけで得意論点に出来るのでお得だよ。
連結会計における手形の処理パターン
鉄則1
グループ間で振り出された手形が期末時点で未決済なら、支払手形と受取手形を相殺消去する(支払手形/受取手形)
鉄則2
グループ間で振り出された手形を割り引いたら、支払手形を短期借入金に振り替える。(支払手形/短期借入金)
鉄則3
裏書譲渡が絡んだら、仕訳なし
成果連結(手形の処理)・2級レベル基礎編
問題1
S社はP社に約束手形10,000円を振り出した。なお、期末時点において当該手形の満期日は到来していない。連結修正仕訳を示しなさい。
解答1
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 支払手形 | 10,000 | 受取手形 | 10,000 |
解説1
①S社がP社に振り出した時点の個別FS
S社:(借方)—(貸方)支払手形
P社:(借方)受取手形(貸方)—
②P社とS社の個別FSの単純合算
(借方)受取手形(貸方)支払手形
③あるべき連結FS
(借方)—(貸方)—
親子間での貸し借りであり、グループ全体で見れば、取引はなかったものとみなせる。よって、②の「(借方)受取手形(貸方)支払手形」を取り消すように連結修正仕訳を行う。
問題2
P社はS社から受け取った約束手形10,000円を銀行で割り引いた。なお、期末時点において当該手形の満期日は到来していない。連結修正仕訳を示しなさい。
解答2
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 支払手形 | 10,000 | 短期借入金 | 10,000 |
解説2
①S社が振り出した時点の個別FS
S社:(借方)—(貸方)支払手形
P社:(借方)受取手形(貸方)—
②P社が割り引いた時点の個別FS
S社:(借方)—(貸方)支払手形
P社:(借方)現金(貸方)—
③P社とS社の個別FSの単純合算
(借方)現金(貸方)支払手形
④あるべき連結FS
(借方)現金(貸方)短期借入金
グループ全体で見れば、銀行から借り入れている状態である。よって支払手形を短期借入金に振り替える。
問題3
P社はS社から受け取った約束手形10,000円を外部企業に裏書譲渡した。なお、期末時点において当該手形の満期日は到来していない。連結修正仕訳を示しなさい。
解答3
仕訳なし
解説3
①S社が振り出した時点の個別FS
S社:(借方)—(貸方)支払手形
P社:(借方)受取手形(貸方)—
②P社が裏書譲渡した時点の個別FS
S社:(借方)—(貸方)支払手形
P社:(借方)商品など(貸方)—
③P社とS社の個別FSの単純合算
(借方)商品など(貸方)支払手形
④あるべき連結FS
(借方)商品など(貸方)支払手形
個別FS上の支払手形の債権者はP社、連結FS上の支払手形の債権者はグループ外の他社である。このように個別上と連結上で債権者は変化するが、いずれにしても支払手形であることには変わりがない。よって連結修正仕訳の必要はない。
成果連結(手形の処理)・1級レベル編
問題1(S社振出、P社割引パターン)
P社は、S社振出の約束手形 20,000 円を割引いており、割引料600円が生じている。期末時点において当該手形の満期日は到来していない。なお、P社は割引手形について注記を行っている。連結修正仕訳を示し、注記の変更について答えなさい。
解答1
連結修正仕訳
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 支払手形 | 20,000 | 短期借入金 | 20,000 |
| 支払利息 | 600 | 手形売却損 | 600 |
注記
P社の割引手形20,000円の注記を取り消す。
解説1
①S社が振り出した時点の個別FS
S社:(借方)—(貸方)支払手形
P社:(借方)受取手形(貸方)—
②P社が割り引いた時点の個別FS(このときP社は注記している)
S社:(借方)—(貸方)支払手形
P社:(借方)現金(貸方)—
(借方)手形売却損(貸方)—
③P社とS社の個別FSの単純合算
(借方)現金(貸方)支払手形
(借方)手形売却損
④あるべき連結FS
(借方)現金(貸方)短期借入金
(借方)支払利息
割り引かれた手形の支払い義務はS社にあり、債権者は銀行である。よって当該支払手形を短期借入金に振り替える。このとき、手形売却損は、支払利息に振り替える。また、支払手形を借入金に振り替えたので、P社の手形割引20,000の注記を取り消す。
問題2(S社裏書、P社割引パターン)
P社は期中に52,000円の手形を割引いており、これを注記している。この割引手形には、S社から裏書譲渡された約束手形8,000円が含まれている。期末時点において当該手形の満期日は到来していない。なお、S社は裏書手形について注記を行っている。連結修正仕訳を示し、注記の変更について答えなさい。
解答2
連結修正仕訳
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仕訳なし |
注記
S社の裏書手形の注記8,000円を取り消す。
解説2
①外部会社が手形を振り出してS社が受け取った時点の個別FS
S社:(借方)受取手形(貸方)—
P社:(借方)—(貸方)—
②S社が裏書譲渡した時点の個別FS(このときS社は注記している)
S社:(借方)—(貸方)—
P社:(借方)受取手形(貸方)—
③P社が割り引いた時点の個別FS(このときP社は注記している)
S社:(借方)—(貸方)—
P社:(借方)現金(貸方)—
④P社とS社の個別FSの単純合算
(借方)現金(貸方)—
⑤あるべき連結FS
(借方)現金(貸方)—
上記④の個別FSと⑤の連結FSが同じなので、連結修正仕訳を行う必要がない。
割り引かれた手形の支払い義務は、S社に手形を振り出した外部企業にある。よって、S社の裏書手形の注記は取り消す(P社に対する遡及義務なのでグループとしてみると義務ではない)。ただし、P社が銀行に対して、割り引いたのは事実であり、銀行から遡及される可能性があるので、P社の注記はそのままにしておく。
問題3(S社振出、P社裏書パターン)
P社は期中に32,000円の手形の裏書譲渡を行っており、この中には、S社振り出しの約束手形を裏書したものが5,000円含まれている。期末時点において当該手形の満期日は到来していない。なお、P社は裏書手形について注記を行っている。連結修正仕訳を示し、注記の変更について答えなさい。
解答3
連結修正仕訳
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仕訳なし |
注記
P社の裏書手形の注記5,000円を取り消す。
解説3
①S社が振り出した時点の個別FS
S社:(借方)—(貸方)支払手形
P社:(借方)受取手形(貸方)—
②P社が裏書譲渡した時点の個別FS(このときP社は注記している)
S社:(借方)—(貸方)支払手形
P社:(借方)商品など(貸方)—
③P社とS社の個別FSの単純合算
(借方)商品など(貸方)支払手形
④あるべき連結FS
(借方)商品など(貸方)支払手形
上記③の個別FSと④の連結FSが同じなので、連結修正仕訳を行う必要がない。
なお、裏書譲渡された手形の支払い義務は、S社にある。よって、Pの裏書手形の注記を取り消す。
問題4(S社裏書、P社裏書パターン)
P社は期中に32,000円の手形の裏書譲渡を行っており、この中には、S社から裏書譲渡された約束手形7,000 円が含まれている。期末時点において当該手形の満期日は到来していない。なお、S社とP社は裏書手形について注記を行っている。連結修正仕訳を示し、注記の変更について答えなさい。
解答4
連結修正仕訳
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仕訳なし |
注記
S社の裏書手形の注記7,000円を取り消す。
解説4
①外部会社が手形を振り出してS社が受け取った時点の個別FS
S社:(借方)受取手形(貸方)—
P社:(借方)—(貸方)—
②S社が裏書譲渡した時点の個別FS(このときS社は注記している)
S社:(借方)—(貸方)—
P社:(借方)受取手形(貸方)—
③P社が裏書譲渡した時点の個別FS(このときP社は注記している)
S社:(借方)—(貸方)—
P社:(借方)商品など(貸方)—
④P社とS社の個別FSの単純合算
(借方)商品など(貸方)—
⑤あるべき連結FS
(借方)商品など(貸方)—
上記④の個別FSと⑤の連結FSが同じなので、連結修正仕訳を行う必要がない。
裏書きされた手形の支払い義務は、(S社に手形を振り出した)外部企業にある。よって、S社の裏書手形の注記を取り消す。なおP社の裏書手形の注記は消す必要がない。(P社が裏書譲渡したのは事実であり遡及される可能性があるので)
