第159回日商簿記1級・詳細解説【商業簿記】

第159回商業簿記の感想
商業簿記は「在外支店の本支店会計」というほとんどの受験生にとって苦手意識のある問題でした。とはいえ、前回の出題は147回で、そろそろ出るんじゃないかと噂されており、対策してきた方も少なくなかったのではないかと思います。
さて、本支店会計に対する取り組みについて1つ言いたいことがあります。
それは、本支店会計が難しいのは本店と支店の帳簿の締切りの処理であり、単に合併財務諸表を作るだけであれば別に難しくも何ともないということです。せいぜい、繰延内部利益に注意するくらいで、それ以外は単に本店と支店の金額を合計するだけの問題にすぎないのです。
このあたりの見極めをせずに、単に「在外支店の本支店会計」という名目にビビってしまって手が止まってしまうのが一番良くないのです。
なんなら、本支店会計の論点を完全に無視して、ただ単に本店と支店についての決算整理事項をやるだけでも十分に合格点が取れるわけです。ですから、まずは何を問われているのかの見極めをしなければなりません。
本問は、帳簿の締め切りについては一切聞かれていませんでした。前TBの推定が5箇所、合併PL、合併BSが問われただけです。
まず、問題文を読む前に答案用紙を見て「おお、合併PLメインだな」ということを理解し、次に設問を見て、問1と問3は前TBの推定と合併BSだということを把握し「結構楽かも」という感触を得た人は結構出来たことでしょう。
一方で、そんな余裕はなく、もう最初からビビってしまって何を問われているのかもよく確認せずに問題文を頭から読んだ人にとっては厳しい問題だったかもしれません。
それでは、商簿の解説です。
おことわり
以下の解説は、私が、実際に本試験中に解いた様子を再現しているものです。そのため市販の過去問題集に見られる仕訳を全部並べ立てるようなお行儀の良い解き方はしていません。よりスピーディで効率的な解き方を追求した解き方をしています。そのため仕訳せずとも単発で解答が得られる箇所はダイレクトに求めています。(結果、ほとんど仕訳は切っていません)
また、戦略的に捨てている箇所があります。本問では、為替差損益とBSの繰越利益剰余金を捨てました。そこを捨てることで時間的余裕が生まれ、他の箇所をより確実に取れるのようになるとの判断です。(実際にそれ以外の箇所は全て取りました)
このような前提があることをあらかじめご承知おきください。
問1 前TBの推定
①満期保有目的債券
資料5のB社社債です。取得原価475千ドル、額面500千ドル、償却原価は定額法で発行から満期まで5年、当期首まで2年です。落ち着いて解けば楽勝でしょう。これが出来なかったすると、余程精神的に追い込まれていたのだと思います。
期首簿価(ドル建て):475千ドル+5千ドル×2年=485千ドル
期末簿価(ドル建て):475千ドル+5千ドル×3年=490千ドル
期首簿価(円建て):485千ドル×@115=55,775(問1の①)
期末簿価(円建て):490千ドル×CR@110=53,900(問3の満期保有目的債券の答え)
ついでに、有価証券利息も求めてしまいましょう。償却原価分とクーポン分があります。クーポンは期中仕訳なので前TBにあるはずです。確認しましょう。ありますね330です。では、償却原価分を求めます。
有価証券利息(償却原価分):償却原価分5千ドル×AR114=570
有価証券利息:償却原価分570+クーポン330=900(問2の有価証券利息)
ここまで3分もあれば解けると思います。これだけで3箇所(少なくとも3点)はゲットです。本支店会計とか全然関係なく点数を獲得できることがわかると思います。
なお、為替差損益は、53,900−55,775−570=△2,445(借方残)と算定することが出来ますが、はなから捨てていますので計算すらしません。(コメント欄でご指摘いただき、53,900−55,775−900=△2,775から修正しました。ご指摘ありがとうございます。)
②その他有価証券
上記と同じく資料5です。A社株式とC社株式です。
全部純資産直入法ですから、前期末の時価など一切気にすることなく、円建ての取得原価を計算するだけです。
230千ドル×@116+180千ドル×@111=46,660
③繰延内部利益
唯一といってよい本支店会計の論点です。とはいえ、前TBの繰延内部利益は、支店の期首棚卸資産に含まれる内部利益の額を計算するだけです。資料に支店の期首在庫の本店仕入分は440千ドル×@115とあり、15%の売上利益率とのことですから、単純に掛けるだけです。440千ドル×@115×15%=7,590
あえてミスしそうな点をあげるのなら、15%を利益率ではなく付加率と読み取ってしまうことでしょうか。その場合は1.15で割ってから0.15を掛ける必要がありますが、そもそも1.15で割り切れないので、そこでおや?と気付きそうなものです。
④退職給付引当金
ワークシートで一発です。数理計算上の差異について若干煩雑な指示がありますが年度の数え間違えだけ注意すればほかに注意する箇所はないでしょう。
| 前期末 | 費用 | 拠出 | |
| 債務 | △1,300,000 | 勤務 △84,000 | 基金から支払い 85,000 |
| 利息 △26,000 | |||
| 資産 | 1,100,000 | 運用収益 27,500 | 拠出 86,000 |
| 基金から支払い △85,000 | |||
| 差異 | △160,000*1 | 20,000*2 | |
| 110,000*3 | △11,000*4 | ||
| 合計 | △250,000 | △73,500 |
- 20X3年度に200,000発生しており、翌年から10回償却する。当期首時点までに2回償却をしているため、200,000×0.8=160,000
- 200,000÷10年=20,000
- 20X5年度に110,000発生しており、翌年から償却するので、当年度がはじめての償却である。
- 110,000÷10年=11,000
ワークシートから数値を拾って答案用紙に記入する。
④前TBの退職給付引当金:250,000
問2の退職給付費用:73,500
⑤備品減価償却累計額
資料6より、取得原価800,000、200%定率法で償却率0.25です。ちなみに改定償却率に引っかかるかどうかを簡易に推定する方法があります。まず、この備品は2÷0.25=8より耐用年数は8年です。この備品はまだ3年しか使っておらず、当年度を入れてあと5年耐用年数が残っています。一方、改定償却率が0.334であり、1÷0.334≒3なので改定償却率を使うのはラスト3年です。よって、この備品は改定償却率を使いません(保証率に引っかかりません)。
このような思考をしたうえで、取得より3年経過しているため、期首簿価を次の式で求めます。
期首簿価:800,000×0.753=337,500
よって、減価償却累計額は、800,000−337,500=462,500
問3 合併BS
本試験中、問2の合併PLをすっ飛ばして先に問3の合併BSを解きました。特に深い意味はないのですが、(本支店会計の論点とは関係なく解けるので)なんとなく簡単そうと感じがしたからです。
①売掛金(貸倒引当金控除前)
前TBを確認すると、本店の売掛金は522,600です。このうち、67,200千円がドル建て(600千ドル)です。この600千ドルは、うち400千ドルが為替予約で@111円で固定され、残り200千ドルは期末レートCR110で換算されます。
つまり、400千ドル×@111+200千ドル×@110=66,400になるのです。もともと67,200でしたから、為替予約と換算替えによって800減ったことになります。
よって、売掛金:本店(522,600−800)+支店4,950千ドル×CR110=1,066,300
②満期保有目的債券
上記問1の①を解く際についでに解いてしまっています。53,900
③その他有価証券
資料5を参照します。外貨建のその他有価証券は、いつでも例外なく時価×CRです。よって
(255千ドル+87千ドル)×CR@110=37,620
なお、C社株式は取得原価180千ドルが期末には87千ドルですから、減損が発生しています。
180千ドル×@111−87千ドル×@110=10,410(問2の投資有価証券評価損)
④建物減価償却累計額
本店 :2,400,000×13年÷40年=780,000
支店1:5,000千ドル×7年÷40年×@120=105,000
支店2:3,000千ドル×5年÷40年×@110=41,250
合計:926,250
⑤繰越利益剰余金
BSの繰越利益剰余金なので、当然ながら決算振替仕訳後であり、当期のPLを完璧に作れるかどうかに掛かっています。なので、とりあえずは捨てです。仮に時間が余って、為替差損益もきちっと取れて、当期純利益が完全に出せたら、ついでに取りにいきますが、まあ、基本的には捨てでしょう。1秒も考えませんでした。
問2 合併PL
売上高
本店9,283,600+支店51,250×AR@114=15,126,100
なお、資料2で売掛金の一部を為替予約しており、もしも、この為替予約が売上と同時なら「営業取引かつ取引と同時に為替予約」となるため売上にも影響を与えることになります。その場合、別解となります。しかし基本的に書かれていないことについて勝手に可能性を考慮して解くのは無駄だと考えているのでこの点についてあえてスルーしました。よって、上記が私の(そして試験委員の意図したと思われる)解答です。
売上原価
- 期首:本店266,000+支店本店仕入440千ドル×@115×0.85+支店現地仕入510千ドル×@116=368,170
- 当期仕入:本店7,426,710+支店現地仕入34,100千ドル×@114=11,314,110
- 期末:本店253,600+支店本店仕入340千ドル×@110×0.85+未達7,700×0.85+支店現地仕入550千ドル×@111=352,985
- 棚卸減耗費:(80,000−79,800)×3.17=634
- 商品評価損:(3.17−3.12)×79,800=3,990
販管費
- 営業費:本店1,239,150+支店11,230千ドル×@114+未達36,480−前払650=2,555,200
- 貸倒引当金繰入:1,066,300(問3の売掛金)×2%−前TB640−30千ドル×@110=17,386
- 退職給付費用:上記問1の④を解く際についでに解いてしまっています。73,500
減価償却費
- 本店建物:2,400,000÷40年=60,000
- 本店備品:問1より期首簿価337,500×0.25=84,375
- 支店建物1:5,000千ドル÷40年×@120=15,000
- 支店建物2:3,000千ドル÷40年×@110=8,250
- 支店備品:4,000ドル×0.82×0.2×@105=53,760
- 合計:221,385
営業外収益・営業外費用
- 受取利息:資料8より12千ドル×@110=1,320
- 受取家賃:資料8より240千ドル÷12ヶ月×3ヶ月×@112=6,720
(前受××、前払××は、すべてHRを使う) - 貸倒引当金繰入(貸付金の分):500千ドル×@113×3%=1,695
- 為替差損益:捨て(在外支店の換算からも生じるし、為替予約からも生じるし、満期保有目的債券からも生じ、それらをパーフェクトに合わせなければならず、埋没する可能性大)
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かつてのプロ簿記生のまさゆきです。
ご無沙汰しております。
為替差損と繰越利益剰余金、本番でも計算して間違えました。
先生の解説で、満期保有目的債権から生じる為替差損益ですが、
53,990-55,775-570(900ではなく)=▲2,355と計算しました。
クーポン330分は、満期保有目的債権ではなく、現金預金に対応するものと思い、為替差損益の計算で、900
ではなく、償却原価分570だけを引きました。
ご指摘ありがとうございます。修正しました。(ちなみに、「53,990−…」ではなく「53,900−…」ですよね)
こちらこそ、失礼しました。53,990→53,900です。
ただ、それでもまだ為替差損益が合わないです。
売掛金400ドルの為替予約(振当処理)をいつ行ったとかが確か書かれていなかったと思います。
売掛金の金額は出せても、為替差損益は出せるのか?と試験中悩んでいました。
一応、売掛金の変動額をすべて為替差損益としましたが…
本サイトでいつも勉強させていただいております、考え方が明確に示されており初学者には大変参考になります。
ところで、
減価償却費 支店備品:4,000ドル×0.82×0.2×@105=53,760
の計算なのですが、問題には残存価額275千ドルとあります。
この分は計算は不要なのでしょうか?
御教示願えると幸いです。
定率法の償却率は、残存価額を織り込んだものです(償却率を掛けていけば、自然と残存価額が残るように設定されています)。定率法の計算方法を今一度確認してみてください。
御教示どうもありがとうございました。
③繰延内部利益 資料1に支店の期首在庫の本店仕入分は400千ドルではなく、440千ドルでしょうか?
ご指摘ありがとうございます。おっしゃるとおり、誤植でした。修正いたしました。助かります!
初めまして。いつも参考にさせていただいておりす。ネットスクール時代のテキストも購入させていただきました。
細かいことで恐縮ですが、
> ④前TBの貸倒引当金
→ 退職給付引当金
読めばわかることではありますが、念のためお伝えいたしました。
ありがとうございます。誤植です。修正しました。助かります!