1級ミニテスト・連結会計の成果連結2(償却固定資産)

連結会計のミニテスト(償却固定資産・未実現利益)
前回のミニテストにつづいて連結会計・成果連結の問題だ。前回は商品売買をテーマに棚卸資産の未実現利益の消去仕訳を解説した。今回は、償却固定資産の未実現利益の償却仕訳を解説しよう。
一般のテキストでは、これら2つを異なる論点として解説している。しかし、前回のミニテストをマスターしていれば、本質的には同じことをしている、ということに気付くだろう。
本問も機械的に10分以内に出来てほしい問題だ。
問題
P社はS社の発行済株式の80%を取得し支配を獲得している。次の取引にもとづいて、当期の連結F/Sを作成するための連結修正仕訳を示しなさい。なお、法人税等税率を40%として税効果を考慮すること。
【取引】
当期首においてS社は保有する簿価94万円の備品を98万円でP社に売却した。P社はこの備品を期末時において保有している。この備品は残存価額10%、耐用年数4年の定額法によって減価償却を行っている。
解答
償却固定資産の未実現利益の消去仕訳
| (PL科目) | 40,000 | (備品) | 40,000 |
| (減累) | 9,000 | (減費) | 9,000 |
| (税資) | 12,400 | (法調) | 12,400 |
| (非当) | 3,720 | (非PL) | 3,720 |
PL科目:固定資産売却益
税資:繰延税金資産
法調:法人税等調整額
減累:減価償却累計額
減費:減価償却費
非当:非支配株主持分当期変動額
非PL:非支配株主に帰属する当期純損益
解説
前回の棚卸資産の成果連結とはだいぶ異なる問題に見えるが、実は本質的には同じだ。消去する項目の片方がPL科目でもう片方がBS科目のパターンはみんな一緒なのだ。前回と同様に機械的に解けるので、是非マスターしてもらいたい。
償却固定資産の未実現利益の消去仕訳
Step.1 相殺消去
まず、グループ内で備品を4万円も高く売りつけているのでこれを消去しなければいけないのは分かるだろう。棚卸資産のパターンで言えば、期末在庫が4万円の未実現利益を含んでいるのと同じだ。消去仕訳は次のようになる。
| 棚卸資産の場合 | |||
| (売上原価) | 40,000 | (商品) | 40,000 |
| 固定資産の場合 | |||
| (PL科目) | 40,000 | (固定資産) | 40,000 |
商品が固定資産に、売上原価が何かしらのPL科目(固定資産を売却して儲けたときは、固定資産売却益)に変わるだけだ。同じパターンであることを確認してほしい。
もし、固定資産が土地のように償却しないなら、これでおしまいだ。しかし備品のように償却資産ならば減価償却を考慮しないといけない。
4万円も高く売ってしまっているということは、その分、多くの減価償却をしているはずだ。その額は、9,000円(=4万円×0.9/4年)だ。よって、それを取り消さないといけない。
| (減価償却累計額) | 9,000 | (減価償却費) | 9,000 |
以上より、まとめると次のようになる。
| (固定資産売却益) | 40,000 | (備品) | 40,000 |
| (減価償却累計額) | 9,000 | (減価償却費) | 9,000 |
もしもダウンストリームで税効果もなければ、ここでおしまいだ。
Step.2 税効果に対応
税効果への対応も、さきに解説した棚卸資産のときと同様だ。借方もしくは貸方に損益が残るような仕訳は、税効果の対象となる。以下の仕訳で言えば、①の固定資産売却益と②の減価償却費だ。合算すると借方に31,000円(=40,000円−9,000円)の残がある。税効果はその40%、インパクトを弱める方向に働くのだから、12,400円(=31,000円×40%)が貸方残として法人税等調整額(PL科目)がくる。・・・③
そして、相手勘定は繰延税金資産だ。・・・④
| ①(固定資産売却益) | 40,000 | (備品) | 40,000 |
| (減価償却累計額) | 9,000 | ②(減価償却費) | 9,000 |
| ④(繰延税金資産) | 12,400 | ③(法人税等調整額) | 12,400 |
もしもアップストリームでなければ、ここでおしまいだ。
Step.3 アップストリームに対応
最後にアップストリームの対応だ。これも棚卸資産のときと全く同じだ。借方もしくは貸方に残っている損益のインパクトを弱めるように仕訳を切ればいい。具体的には、次の額だ。
①固定資産売却益40,000円−②減価償却費9,000円−③法人税等調整額12,400円=18,600円
この18,600円のうち、20%分が非支配株主によってインパクトを弱められるのだ。つまり3,720円(=18,600円×非支配株主持分20%)が貸方にくる。勘定科目は当期なので非支配株主に帰属する当期純損益 (PL科目)だ・・・⑤
そして、相手勘定は、非支配株主の当期の持分がそれだけ変動するので非支配株主持分当期変動額だ。・・・⑥
| ①(固定資産売却益) | 40,000 | (備品) | 40,000 |
| (減価償却累計額) | 9,000 | ②(減価償却費) | 9,000 |
| ④(繰延税金資産) | 12,400 | ③(法人税等調整額) | 12,400 |
| ⑥(非支配株主持分当期変動額) | 3,720 | ⑤(非支配株主に帰属する当期純損益) | 3,720 |
最後に
以上、棚卸資産も、償却固定資産も、ほとんど同じ手順で解けることを理解して頂けただろうか。もう1問、貸倒引当金の問題も用意したからチャレンジしてほしい。
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“1級ミニテスト・連結会計の成果連結2(償却固定資産)” に対して10件のコメントがあります。
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富久田先生
こん○○は。
熱男です。
昨日のミニテスト成果連結1同様、”税効果もアップストリームもPL科目のインパクトを弱めるように調整”
本問も解けました。
基本的な考え方は理解できましたので、
時間があるときにこのミニテスト2題を繰り返しとき、
知識と解放を定着させていきたいと思います。
ありがとうございました。
こんにちは。
役に立てたかな?うれしい。
ちなみに、貸引と貸繰の消去も全く同じパターンで、出来ます。
勘定科目が多少変わるだけで、考え方は全く一緒。
テキストに載っていると思うので是非チャレンジしてみて。
こんにちは。
質問があります。
①固定資産の売却が当期で取得が数年前だった場合、どのように考えたらいいですか?
②未達にはこのルールを適用することはできますか?
>①固定資産の売却が当期で取得が数年前だった場合、どのように考えたらいいですか?
本問は、S社が過年度(数年前)に取得した償却性資産を当期にP社に売却したというケースです。まさに、ご質問のケースだと思います。もし、ご質問の趣旨が違う場合、追記頂ければと思います。よろしくお願いします。
>②未達にはこのルールを適用することはできますか?
未達になるのはどの部分でしょうか?S社がP社に売却したという事実が未達という意味でしょうか?つまりS社は期首に売却したつもりになっているけど、P社は受け取ったことを認識していないっていう状態?
はじめまして
日々ここに助けていただいてる独学者です
質問です。
償却固定資産のアップストリームについて
上記step3の上2行
固定資産売却益(子) 備品(親)
減価償却累計額(①) 減価償却費(②)
1行目の子会社に発生した売却益を消去した時、連結会計上、子会社の利益が変動するので、それに伴い、非支配株主持分が変動するのは理解できるのですが…
2行目の減価償却は備品売却後、発生した費用と累計額の消去なので、①②は親会社の費用と累計額の消去になるのでしょうか?
でもそうすると、親会社の減価償却費が子会社株式の持分変動に関わるのはおかしい気がしまして…
セールアンドリースバックの長期前受収益を期間配分して取り崩す様に、売却益を期間配分する為に減価償却費を当て嵌めている、いわば売却益の減価償却だから子会社損益、という認識の方が正しいのでしょうか?
すみません、遅くなりました。
結論から言いますと、減価償却累計額9,000/減価償却費9,000 は、子会社が取り消しすぎてしまった固定資産売却益40,000を修正する仕訳です。つまり、売却時点では、40,000円の利益を取り消すべきだったけど、減価償却をした時点では、31,000円の利益を取り消すべきだということです。
セール・アンド・リースバックについて触れていますが、いい視点ですよね。シチュエーションは異なりますが、考え方は同じです。
よく考えていますよね。いいと思います。独学者の強いところですよね。
情報が少ない(特に連結に関して市販のテキストは仕訳ばかりで仕組みがあまり書かれていないですよね)ゆえに自分の頭で考えるしかないわけで、でも、それが実力養成につながっている感じです。今のスタンスを維持されて、学習を続けて頂ければと思います。
お忙しい中、とてもわかりやすい返答、ありがとうございます。
実際の親会社の当期末簿価75.95万
売却しなかった場合の当期末簿価72.85万
当期末に簿価72.85万の備品を75.95万で売却した。
で、この売却益を未実現利益として取り消した。
という取引と同じ結果になるんですね。
1級になってからは、特に現物現金が動かない、イメージしにくい論点が多く、いまいち自分の理解で合ってるのか不安→理解が必要な応用問題に苦手意識、になるもので。
この辺は独学者の弱みですね…。
あと3カ月、頑張ります!
わかりやすい記事ありがとうございます。
step1の税効果会計についてなのですが、固定資産売却益の税効果と減価償却費の税効果を別々に考えて、
繰延税金資産16,000 法人税等調整額16,000
法人税等調整額3,600 繰延税金負債3,600
というように仕分けをすることはできるのでしょうか?
お忙しいとは思いますがご返信お待ちしております。
あえて、分けて仕訳するなら、次のとおりです。
繰延税金資産16,000 法人税等調整額16,000…①
法人税等調整額3,600 繰延税金資産3,600…②
②の仕訳は独立して生じているわけではなくて、①の仕訳の取り消しです。よって、②では、①で設定した繰延税金資産を取り崩します。