ミニ講義・標準原価計算(そもそも標準って何?)

計算はできるけど本質が分からない論点
標準原価計算は「なんとなく計算は出来るけど、実は、自分が何の計算をしているのかよく分かっていない」そんな方が多いのではないでしょうか。特に2級を暗記で通り抜けて来た方にその傾向が強いように思います。
シュラッター図を書いて、差異分析の計算方法は分かるのだけれど、実は、それぞれの差異がどういった意味を持っているのかは分からない。そもそもなぜ差異分析をしているのか分からない。でも、典型的な問題は解ける。そんな傾向にあるようです。
この状態は危険です。2級で簿記を卒業するなら、それでいいかもしれません。しかし、1級挑戦を考えているなら早急に対策が必要です。標準原価計算の本質がわかっているかどうか、簡単なミニテストを用意しました。ちょっとチャレンジしてみてください。
標準原価計算の本質を理解しているかのミニテスト
問題
正常な状態で直接材料を100kgを消費すると80kgが完成する(20kg減損)
今月、直接材料を100kgを消費したところ、70kgが完成した(30kg減損)
月初月末の在庫は無いものとして、今月の異常減損は何kgか
- 解答と解説(クリックで開きます)
-
解答
12.5kg
解説
もし、10kgと答えてしまったのなら、是非、講義資料を見てください。
プロ簿記1級合格プログラム・標準原価計算本質理解講義
プロフェッショナル簿記1級合格プログラムでは、ライブ配信システムを用いた講義を行っています。そのときに使用した講義スライドの一部をブログ記事用に編集し公開します。
コンテンツ概要・・・そもそも標準とは
問題
製品Aは第1工程と第2工程を経て完成する。製品Aを1個作るのに材料が1個必要。当月の製品Aの製造計画は110個だったので第1工程に材料を110個投入し、110個の第1工程完了品を得た。しかし、第2工程でうっかり10個ミスをしてしまい、結果として製品Aは100個完成した。
- 工程全体での標準消費量は何個?
- 第1工程責任者にとっての標準消費量は何個?
- 第2工程責任者にとっての標準消費量は何個?
解答
- 100個
- 110個
- 100個
解説
標準原価計算では、単に「標準」といっても、それは状況によりさまざまであって、必ずしも一つではありません。まずは、この点を意識してください。
標準消費量は、工場長の立場なら100個、第1工程責任者の立場なら110個、第2工程責任者の立場なら100個です。つまり標準消費量とは、管理者の責任下にある アウトプットから換算した投入量のことなのです。
本問は、工程全体で見れば100個の製品が出来上がっています。ですから工程全体の管理者である工場長の立場からは、標準消費量は100個です。しかし、実際には110個の材料を投入しています。ですから、工場長が負うべき責任は、その差異である10個です。
これをさらに工程別に見ていくとどうなるでしょうか。第1工程では110個の第1工程完了品を得ています。ですから、第1工程責任者にとっての標準消費量は110個です。そして実際に110個の材料を投入しているのですから差異はありません。
では、第2工程はどうでしょうか。第2工程では100個の製品Aを得ています。ですから、第2工程責任者にとっての標準消費量は100個です。そして、実際には110個の第1工程完了品を投入しているのですから、差異は10個です。(不利差異)
以上、当たり前の話のようですが、大切なポイントです。立場が変われば標準も変わるのです。どの立場から見た標準なのか、標準原価計算の問題を解く上で、是非意識してください。特に工程別標準原価計算の問題で有効です。
コンテンツ概要…異常減損の基本
問題
100kgの小麦粉を消費したら70kgのケーキが出来た。
- 店長がきびしい人で「1グラムたりとも減損は許さない」という人なら異常減損量は何kg?
- 店長がやさしい人で「ある程度の減損は仕方ない。1kgの小麦粉の消費して700gのケーキが出来ればいい」という人なら異常減損量は何kg?
解答
- 30kg
- 0kg
解説
このように、標準原価計算における「標準」は、管理責任下における立場だけでなく、その管理者のやさしさ(?)によっても変化します。言い方を換えれば「許容できる仕損量や減損量」によっても標準は変わるということです。
1の店長は、1グラムの減損も許さないわけですから、70kgのケーキを作るには、70kgの小麦粉があれば良いという考え方です。それが、100kgも消費してしまったわけですから、30kgが異常減損です。
2の店長は、1kgの消費に対して700gのケーキが出来ればいいという考え方です。ですから、100kgを消費したときは、70kgのケーキが出来れば満足するわけです。ですから現状は正常であって、異常減損は無いという認識です。
コンテンツ概要…異常減損の応用
問題
100kgの小麦粉を消費したら70kgのケーキが出来た。店長が「ある程度の減損は仕方ない。正確に計測したところ、1kgの小麦粉の消費に対して800gのケーキが出来た。よって、これを標準する」と言った場合、異常減損量は何kgか
解答
12.5kg
解説
なぜ、この問題を10kgと答えてしまうのでしょうか。それは、投入量100kgを基準にすると、標準的には80kgできるはずなのに、70kgしか出来ていないから、異常減損は10kgだ!と答えてしまうのでしょう。式にすると次のとおりです。
- 標準的に出来るはずの量:100kg×0.8=80kg
- 実際に出来た量:70kg
- よって、異常減損:80kg−70kg=10kg
こういった勘違いをしている方は少なくありません。しかし、これは大いなる間違えです。正解は12.5kgです。これは、完成品量70kgを基準に、標準的には87.5kgの消費で済むはずが、実際は100kgを消費してしまったからと考えるのです。式にすると次のとおりです。
- 標準的に消費すべき量:70kg÷0.8=87.5kg
- 実際に消費した量:100kg
- よって、異常減損:100kg−87.5kg=12.5kg
これが、異常減損量の正しい考え方です。つまり、異常減損は実際消費量と標準消費量の差異であって、実際生産量と標準生産量の差異ではないのです。標準消費量とは、常に、アウトプットから逆算して求めます。この1点をしっかり押さえるだけでも、標準原価計算におけるモヤモヤが、かなり解消されるはずです。
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“ミニ講義・標準原価計算(そもそも標準って何?)” に対して9件のコメントがあります。
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「標準的に消費すべき量:70kg÷0.8=87.5kg」の部分で、0.8で割るのは何故でしょうか?
まだ本質がつかめていません。
私の考えでは、80%以内であれば許容範囲なので、20kgが異常減損になると考えてしまいました。
>私の考えでは、80%以内であれば許容範囲なので、20kgが異常減損になると考えてしまいました。
”80%以内であれば”と書かれていますが、この80%というのは、何に対しての割合でしょうか。投入量に対してですよね。100kg投入したんだから20kgまでは正常でそれを超えたら異常という考え方だと思います。
ここが間違いです。標準原価計算は実際の投入量に基づいて標準の産出量を求めているわけではないのです。逆です。実際の産出量にもとづいて標準の投入量を求めているのです。
100kg入れたから80kg出来るのが標準。
じゃなくて
80kg出来るためには100kg入れるのが標準、という考え方です。
くどいようですが、実際に70kg産出したのであれば、その情報にもとづき、①何キロ投入すべきだったのかという標準投入量(70kg÷0.8=82.5kg)を計算をします。②そして、実際の投入量(100kg)との差をとるのです。これが標準原価差異です。
よくやる間違いは、実際に100kg投入したという情報にもとづき、①何キロ産出されるべきか(100kg×0.8=80kg)という計算をし、②そして、実際の産出量(70)との差を取る計算です。これは(標準原価計算においては)間違いです。
なお、ごくまれにですが実際原価計算では、投入量に対して正常な仕損割合が示されることもあります。(過去に123回の1度しか出題されたことがないので、スルーしても大丈夫です。)
はじめまして。勉強させていただいてます。
他のスクールに在学中ですが、先生のところにすればよかったかなと・・思います。
大変基本的な質問で恐縮ですが
”異常減損”と”減損”の違いを教えていただけないでしょうか。
どうぞよろしくお願いいたします。
減損は、単に「投入量に対して産出量が減っちゃった」という意味です。異常減損とは「想定を超えて減っちゃった」量のことです。
具体的な数値で見てみましょう。たとえば100gのお湯を完成させるためには10gの水が蒸発はしてしまうのが通常の状態だとします。この場合、110gの水を沸かさないといけないわけですね。(完成品に対して10%の犠牲は仕方ないということ。)
さて、今日、実際に200gのお湯を沸かしました。でも、水は250g投入しました。
200gのお湯を沸かすには、通常の状態なら220g投入すればいいはずです。つまり20g減ってしまうのは仕方のないことです。しかし、実際には250g入れたので、50g減っちゃったということです。
ここで、50gを単なる減損、その内訳は、20gが正常減損で、30gが異常減損です。つまり、想定内どおりの減損を正常減損といって、それを超えた減損を異常減損といいます。
早速ご回答いただきましてありがとうございます。
ケーキの問題で、仕掛品のボックスを書くとしたら、貸方・借方はどうなるのでしょうか。
どうぞよろしくお願いいたします。
単位はkgです。
ご回答いただきありがとうございます。
素人の発想ですとケーキ1個作るあたり、どれくらいの減損が出たか・・・
みたいな考え方になってしまってます。
<質問1>
ケーキを個数でなく、800gとするのは、単位を投入材料ベース(材料の量や減損量を把握する単位)で考えるからなのでしょうか。
<質問2>
製品が1個が材料2個で出来る場合は、数量は製品の数、材料の数、どちらで考えるのでしょうか。
わかってなくて申し訳ありません。
よろしくお願い致します。
>ケーキを個数でなく、800gとするのは、単位を投入材料ベース(材料の量や減損量を把握する単位)で考えるからなのでしょうか。
いえ、個数とgの混在問題にしても何ら問題ありませんよ。本問は「アウトプットから逆算する」という点を強調すべく余計な要素(個数とgの混在など)を除外したのでgに統一しました。
>製品が1個が材料2個で出来る場合は、数量は製品の数、材料の数、どちらで考えるのでしょうか。
なるほど。このあたり、混乱の原因ですよね。これ、どちらも考えるんですよ。
仕掛品勘定を作るときは、原価標準(製品単価)が何個あるので、いくら、という計算をします。
一方で、差異分析をするときは、材料をこれだけいれるべきところを、実際にはこんなに入れてしまった、という計算をします。
つまり、前者は製品の数で考えて、後者は材料の数で考えるんですね。
あと可能でしたら、ご質問は、今、在学されているスクールの講師の方にされた方がいいと思います。いや、別に、答えるのが嫌というこは、全然ないんですが、何というか他校の受講生さんの質問にガッツリ対応しちゃうのって失礼な気がします。(逆の立場で、もし、うちの受講生さんが他校で質問してたら、私、ショックですし)
ぜひ、在学中の講師に聞いてみてください。講師は喜びますよ。多分ですけど一生懸命教えてくれると思います。講師は受講生さんからの質問を待っていますので。
ご回答いただきありがとうございます。
スクールは質問しやすい環境ですが、自分がわからないところが何かつかめなくて行き詰っておりました。
ですが、おっしゃるとおりですね。今後はそのように致します。