第158回日商簿記1級・詳細解説【工業簿記】

第1問 部門別計算

問題そのものは、テキストの設例レベルの簡単な問題ではあるけど、指示不足や読み取りのしにくさといった本質的ではない部分で不備があり、解きにくい問題であった。

問1 第1製造部の正常配賦額

「製造部門別の予定配賦率を用いて製品に正常配賦している」と書かれており、第1製造部門の正常配賦率@700円、第1製造部の当月の直接作業時間が997時間と書かれているのだから、掛けるだけである。

第1製造部:正常配賦率@700円×直接作業時間997時間=697,900円
第2製造部:正常配賦率@550円×直接作業時間804時間=442,200円

問2 第1製造部の補助部門費配賦後の実際発生額

階梯式配賦なので補助部門の優先順位を決定する。事務部と動力部における他の補助部への用役提供件数より、事務部が優先順位が高い。

固定費と変動費を区別して配賦する旨の指示があり、変動費は予定配賦の指示がある。(固定費については言及がなく、ここでは空気を読んで実際配賦としているが、厳密には問題の不備である。

よって、まず動力部の変動費の予定配賦率を算定し、予定配賦額を算定する。

(資料1)動力部変動費予算額74,088円÷(3,780kwh+5,040kwh)=8.4円/kwh
 第1製造部:8.4円/kwh×280kwh=2,352
 第2製造部:8.4円/kwh×420kwh=3,528

続いて、固定費を階梯式配賦法により実際配賦する。

(資料5)事務部固定費14,700の配賦
 第1製造部:14,700÷(110+90+10)×110=7,700
 第2製造部:14,700÷(110+90+10)×90=6,300
 動力部:14,700÷(110+90+10)×10=700

(資料5)動力部固定費17,640+事務部からの配賦額700=18,340の配賦
 第1製造部:18,340÷(3,780+5,040)×3,780=7,860
 第2製造部:18,340÷(3,780+5,040)×5,040=10,480

以上を集計する。

 第1製造部:自部門費(484,486+197,523)+2,352+7,700+7,860=699,921
 第2製造部:自部門費(303,000+119,505)+3,528+6,300+10,480=442,813

問3・問4 第1製造部の予算差異と操業度差異

本問は予算差異を問うているが、予算設定方法の指示がない。公式法変動予算、固定予算のどちらも可能性としてはありえる。これも問題の不備である。

【公式法変動予算の場合】

第1製造部
 総差異:@700円×実際997時間−実際発生額699,921円=△2,021円
 予算許容額:@200円×実際997時間+@500円×基準1,000時間=699,400円
 予算差異:699,400円−実際発生額699,921円=△521円
 操業度差異:@500円×(実際997時間−基準1,000時間)=△1,500円

第2製造部
 総差異:@550円×実際804時間−実際発生額442,813円=△613円
 予算許容額:@150円×実際804時間+@400円×基準800時間=440,600円
 予算差異:440,600円−実際発生額442,813円=△2,213円
 操業度差異:@400円×(実際804時間−基準800時間)=+1,600円

【固定予算の場合】

第1製造部
 予算許容額:@700円×基準1,000時間=700,000円
 予算差異:700,000円−実際発生額699,921円=+79円
 操業度差異:@700円×(実際997時間−基準1,000時間)=△2,100円

第2製造部
 予算許容額:@550円×基準800時間=440,000円
 予算差異:440,000円−実際発生額442,813円=△2,813円
 操業度差異:@550円×(実際804時間−基準800時間)=+2,200円

問5 動力部の予算差異

動力部は、変動費のみ予定配賦を行っている。

 予定配賦額8.4円/kwh×(280kwh+420kwh)=5,880円
 実際発生額6,038円
 予算差異:5,880円−6,038円=△158円

問6 製造間接費勘定

予定配賦額:第1製造部697,900円+第2製造部442,200円=1,140,100円
操業度差異:上記公式法変動予算を前提とすると
 第1製造部△1,500円+第2製造部1,600円=+100円
予算差異:上記公式法変動予算を前提とすると
 第1製造部△521円+第2製造部△2,213円+動力部△158円=△2,892円

問7 正誤判定

① 用役を実際に消費した割合でもって補助部門費をすべて製造部門に配賦しても、製造間接費配賦差額は変わらない。→第1製造部と第2製造部の配賦額は変化するが、合計配賦額は変わらないので、製造間接費配賦差額も変わらない。よって○

② 補助部門費の配賦において階梯式配賦法ではなく相互配賦法を用いても、第1製造部と第2製造部おのおのへの当月の配賦額は結果として同じになる。→階梯式配賦法と相互配賦法で変化が生じるのは、補助部門同士の用役授受がある場合である。本問は、事務部から動力部への一方向だけの用役提供なので変化しない。よって○

③ 補助部門費の配賦において階梯式配賦法ではなく直接配賦法を用いても、動力部費のうち変動費部分の第1製造部と第2製造部おのおのへの当月の配賦額は同じである。→そもそも変動費は動力部でしか発生しておらず、階梯式配賦法であろうが直接配賦法であろうが、補助部門へは配賦しないので関係ない。よって○

第2問 材料費会計

ひどい問題であった。ただ、今回に限らず、156回の材料費会計と労務費会計もひどかった。多分同じ作問者。2021/6/20現在、TAC社とNS社と東京CPAは、3社ともすべてバラバラの解答である。ある意味仕方ないことであろう。問題として成立していないのだから。

第1問に続き、不適切な問題である。校正をしていないことが伺われる。

不備のある問題を漫然と出題し続けるのは、不備がある事自体に気付いていないか、もしくは気付いていても匿名であるため責任追及されないからであろう。昔はOK工業という岡本先生が作問されていた時代があった。今は、HIT製作所になった。こういったところで自己顕示されたいのであれば、不備にも責任を持っていただきたい。以前より不備が繰り返されているが、出題の意図と講評で一切言及がない。

以下の解答は、あくまでも私なりの解釈である。ただし、これも正解とはいえない。そもそも問題に不備があるので、正当は存在しない。

【借方】
 買掛金:予定受入価格@1,000円×購入量1,600kg=1,600,000円
 受入価格差異:(実際受入価格@1,004円−予定受入価格@1,000円)×月末棚卸高250kg=1,000円

【貸方】
 仕掛品:予定消費価格@1,000円×払出量1,300kg=1,300,000円
 製造間接費:予定消費価格@1,000円×払出量250kg=250,000円
 棚卸減耗引当金:実際受入価格@1,004円×(帳簿250kg−実際248kg)=2,008円
 次月繰越:実際受入価格@1,004円×実際248kg=248,992円

この解答を導くための考え方は、こちら

第158回日商簿記1級・詳細解説【工業簿記】” に対して2件のコメントがあります。

  1. Tes より:

    >>固定費と変動費を区別して配賦する旨の指示があり、変動費は予定配賦の指示がある。(固定費については言及がなく、ここでは空気を読んで実際配賦としているが、厳密には問題の不備である。)

    私もこの点を迷いました。
    ただ、複数基準配賦法をとった時点で実際であれ予定であれ固定費は消費能力で按分するため、固定費の実際発生額と年間予算額に変化はないことを前提とすると、実際配賦か予定配賦かの選択は固定費配賦率に影響しないということを理解してほしかったのではないかと。
    各製造部門での消費能力が変わらないにもかかわらず、追加で固定費が発生したのであれば、別途指示がありそうですし。

    1. pro-boki より:

      本問は、実際配賦で計算しても予定配賦配賦で計算しても動力部部門からの固定費の配賦額は同じ額となります。ですから、どちらで解いても大丈夫です。しかし、それは、動力部門の固定費の実際発生額がたまたま年間予算額の12分の1だからです。

      個人的な見解ですが「どちらで計算しても同じ答えになるのだから実際配賦か予定配賦かの指示を入れる必要などない」とは思えません。ましてや「実際配賦か予定配賦かの選択は固定費配賦率に影響しないということを理解してほしかった」といった高尚な理念を持った作問だとも到底思えません。単に手を抜いた作問にしか見えません。

      これは、私が作問者の立場で見てしまうからかもしれません。どちらにせよ、解ければいいじゃん、という立場ならまた違った見解もありましょう。

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