第209回全経上級レビュー

全体の感想
受験された方、お疲れ様でした。
なかなかの良問でした。
極端な偏りのないバランスの良い出題論点でした。また、基礎力を重視しつつ若干の応用論点も加える適度な難易度であり、実力の反映されやすい問題だったと思います。
日商簿記1級は工原に不具合が多々あるため仮に不合格だったとしても必ずしも実力が無いとは言えません。それに対して全経上級は良問ゆえ実力通りの結果が出る試験であり、検定試験の役割を十分に果たしていると思います。
なお、ボリュームが多かったです。
問題の量もさることながら、物理的に書く量が多くて、文字を書くのが遅い(早く書くと異常に字が汚くなって読めない)私にとってはそこで時間を取られてしまうのが苦痛でした。このあたりは、税理士試験に近いのかなとも思いました。
商業簿記
やさしめでした。応用論点はありませんでした。どれもテキストの設例レベルであり満点を狙える問題です。
しかし。物理的な量が多いです。満点を狙うなら60分は欲しいところです。その点で会計学でいかに時間を節約出来たかが鍵だったかもしれません。
問題1 総合問題(やさしい)
1.銀行勘定調整表
未渡小切手
売掛金の未通知
2.有価証券
売買目的有価証券
その他有価証券(部分純資産直入法)
3.貸倒引当金(破産更生債権等と一般債権)
4.外貨換算
5.商品売買
6.自己株式
7.建物(減価償却と減損会計)
8.備品(減価償却と資産除去債務、見積りの変更)
9.社債
10.ストック・オプション
11.見越し・繰延
未払給料
未払利息
未収収益
前払費用
12.法人税等
問題2 仕訳問題(やさしい)
約定日基準と修正受渡日基準
問題3 仕訳問題(やさしい)
三分法と売上原価対立法
会計学
出題形式は、いつものパターンどおりでした。
第1問と第2問が普通もしくはやややさしめで、第3問が難しかったと思います。ただし、これだけはっきり難しい問題であることが誰の目にも明らかだと、捨てるという判断がしやすくその点でも対処しやすかったと思います。
問題1(普通)
- 「企業会計原則注解」によれば,企業会計は,予測される将来の危険に備えて,慎重な判断に基づく会計処理を行うことができる。
- 「企業会計原則注解」によれば,内部利益とは,会計単位内部における原材料,半製品等の振替から生ずる未実現の利益を言う。
- 「金融商品に関する会計基準」によれば,債務者から契約上の利払日を相当期間経過しても利息の支払を受けていない債権及び破産更生債権等については,すでに計上されている未収利息を当期の損失として処理するとともに,それ以後の期間に係る利息を計上してはならない。
- 「金融商品に関する会計基準」によれば,その他有価証券は,「時価の算定に関する会計基準」に従い算定された時価をもって貸借対照表価額とするが,継続適用を条件として,期末前1ヵ月間の市場価格の平均にもとづいて算定された価額を用いることもできる。
- 「リース取引に関する会計基準」によれば,所有権移転ファイナンスリースでは,貸手はリース料と割安購入選択権の行使価額で回収するので,取引で生じる資産はリース投資資産に計上するが,所有権移転外ファイナンスリースでは,リース料と見積残存価額の価値により回収するので,取引で生じる資産はリース債権に計上する。
- 「連結財務諸表に関する会計基準」によれば,連結会社相互間の取引によって取得した棚卸資産,固定資産その他の資産に含まれる未実現損益は,その全額を消去するが,売手側の子会社に非支配株主が存在する場合には,親会社と非支配株主の持分比率に応じて,親会社の持分と非支配株主持分に配分する。
- 「ストック・オプション等に関する会計基準」によれば,ストック・オプションを付与し,これに応じて企業が従業員等から取得するサービスは,その取得に応じて費用として計上し,対応する金額を,ストック・オプションの権利の行使又は失効が確定するまでの間,貸借対照表の純資産の部に新株予約権として計上する。
- 「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準」によれば,自己株式を消却した場合には,消却手続が完了したときに,消却の対象となった自己株式の帳簿価額をその他資本剰余金から減額する。
- 「会計方針の開示,会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」によれば,有形固定資産等の減価償却方法は,会計方針に該当するが,その変更については会計上の見積りの変更と区別することが困難な場合に該当するので,遡及適用は行わず,期首の残高を適正に修正したうえで差額を当期の費用として計上する。
- 「外貨建取引等会計処理基準」によれば,外貨建有価証券の時価の著しい下落又は実質価額の著しい低下により,決算時の為替相場による換算を行ったことによって生じた換算差額は,当期の有価証券の評価損として処理する。
- 企業会計原則注解4(保守主義の原則) A
- 企業会計原則注解11(内部利益とその除去方法) B
- 金融商品に関する会計基準28 B
- 金融商品に関する会計基準・時価の算定に関する会計基準 B
- リース取引に関する会計基準 A
- 連結財務諸表に関する会計基準 A
- ストック・オプション等に関する会計基準 A
- 自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準 A
- 会計方針の開示,会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準 B
- 外貨建取引等会計処理基準 A
落としちゃいけないAランクが6個、出来不出来が分かれそうなBランクが4個、これは無理でしょというCランクはなしという感じでした。いつもよりは少しやさしめでした。
問題2 資産除去債務(やややさしい〜普通)
こちらも普通もしくは少しやさしめだったと思います。難易度を示しておきます。
問1
A(出来ないとまずい)
問2
A(出来ないとまずい)
問3
B(きっちり書けていなくても「除去に必要な金額をBSに表示したいから」みたいなことが書けていれば配点来ると思います)
問4
B(問1の14,000は5%で、増加部分の2,000は4%で割り引くことを分かっているかどうか)
問5
B(見積りの変更で増加したなら、その増加分が新たに発生したとみなしてそのときの割引率を使うことが言えていればOK)
問題3 収益認識基準・契約の変更(難しい)
国語力が試されていると思います。収益認識基準の当該項目を知らなくても書かれている意味を読み取ることが出来れば正答できるレベルの問題です。しかし、それを読み取ろうとすると時間が掛かりますし、また、正答したところで本問はあまり配点が来ないでしょう。
その点で、問1は○を付けるだけですから直感で解答し、あとはさっさと捨てるのが試験的には正解だと思います。
工業簿記
今回の試験、合否を握るのは工簿だと思います。出来た人と出来なかった人がはっきり分かれた問題だったと思います。高得点を稼ぐ人もいれば足切りになる人もいるような問題でした。ただ、あまりに足切りになる人が多い場合は、配点調整が入ると思います。
問題1 部門別計算(やや難しい)
部門別計算の基本問題です。計算自体はテキストの設例レベルです。しかし、資料がやや読み取りにくく何が問われているのかを掴むのが難しい問題でもありました。
たとえば第2次集計を行うにあたり部門費が変動費と固定費に分かれているため複数基準配賦法なのか?と思いきや配賦基準が用役提供量しかないため単一基準配賦法なんだと気付く必要があります。また階梯式配賦法が採用されていますがこのとき部門費の多寡で優先順位を付けてしまうと間違えてしまいます。階梯式の優先順位は、まず他の補助部門の用役提供件数で決めます。Xは1個、Yは0個ですからXが優先です。このあたりも引っかかりポイントでしょう。
本問は問われていることを掴めさえすれば計算量も少ないため満点が期待できます。一方で、問1の段階で読み取りが出来なかったりミスをすると連鎖的に問2以降も不正解となり大失点につながる可能性もあります。その点で合否を分ける問題といえそうです。
問題2 標準原価計算(やや難しい)
こちらもよくある標準原価差異の期末の会計処理の問題です。ぱっと見は基本問題に見えます。しかし、実際に解いてみると問題文の正確な読み取りと推定が必要で案外難しい問題ではないかと思います。
資料に材料受入価格差異があることから、まずこれを期末材料分と当期消費分に分けなければなりません。そして、この当期消費分が材料消費価格差異であることを理解しているかどうかが問われています。
また、問3も若干計算量が多く、そもそも材料消費価格差異と材料消費量差異の算定が出来ていないと全く解答することが出来ないため正答率は低いと思われます。
問題3 原価計算基準(普通)
原価計算基準そのままの問題です。理論対策している人にとっては比較的定番の問題ですからやさしく感じたと思います。一方で、理論を捨ててしまっている人や、基準を勉強していても用語暗記しかしていない方にとってもは難しかったかもしれません。
本問は原価計算基準の文言がそのまま書けていなくても配点は来ます。2つめの「原価は、経営において作り出された一定の給付に転嫁される価値である」は難しいと思いますが、3つめの「経営目的(販売と生産)に関連」と4つめの「正常なもの」は書けてほしいところです。
原価計算
こちらも工業簿記と同様に高得点を稼ぐ人もいれば足切りになる人もいるような問題でした。
問題1 CVP分析(普通〜やや難しい)
良問だと思います。変に引っ掛けてきたり、指示が不明瞭だったり、意図が分からないという箇所がありませんでした。難易度的には普通(もしくはやや難しい程度)で受験生の実力が反映されやすい問題だと思います。
きちんと基礎を鍛えて来られた方は、ここで満点を取ったことと思います。多少計算量がありますが、計算していくときれいな数値になるため自信を持って進められるのも親切設計でした。
一方で、複数製品売上割合一定パターンのCVP分析の対処をしてこなかった方は、問1と問4以外全滅となるため大失点する問題でした。
問題2 業務的意思決定会計(普通)
こちらも良問でした。
自製か購入かという業務的意思決定会計の定番論点の問題でした。材料単価が購入量によって変動するという若干のひねりも難易度的にちょうど良いレベルだったと思います。こちらも受験生の実力が反映されやすい問題だと思います。
問1ができていればOKです。
問2も実はさほど難しくないのですが、そもそも問1が出来ていないと解答出来ないことと、また「以上〜未満」というCVP分析で良く出される引掛けもあって正答率は低いのではないかと思います。
問題3 ABCの理論問題(やさしい)
基本的には易しい問題だったと思います。一方、若干悩ましい点もありました。
私は、ア:製造間接費、イ:資源、ウ:活動、エ:製品 としました。
しかしABCは必ずしも製造間接費だけに使われるものではなく販管費などに使われることもあります。事実、過去に全経上級で販管費をABCで配賦する問題も出題されたことがあります。
その点で、アは、製造間接費ではなく間接費の方が適当かなと思ったのですが、問題文に「生産量や操業度」とあったため出題者は製造を意図しているのだろうと判断して製造間接費としました。しかし、単に間接費と解答しても正解になるのではないかと思います。
イは、資源のほか経済的資源(全経上級公式テキストではこの表現が使われています)と解答しても正解だと思います。
エは、ABCが販管費などを対象とすることがある点を考慮すると「製品」だけではなく「原価計算対象」も正解とされると思います。全経上級公式テキストではこの原価計算対象という用語が使われています。
