162回工業簿記の極めて不可解な採点

2023年1月10日あたりから、第162回日商簿記1級の合格発表が始まりました。
プロ簿記でも受講生からの多数の合格のご連絡をいただき嬉しいかぎりです。今現在(1月14日13:00現在)で33名の方から合格のご報告を頂いております。合格率は30%弱です。
ツイッターでも合否報告が相次いでおり盛り上がっているようです。昨日の夕方現在でざっと100名近くの方が点数を公開されていました。
さて、今回も日本商工会議所のホームページを拝見するに合格率は10.4%と例年通りのようです。
そう、ここまではいつもどおりの光景なのです。
しかしです。今回、あまりにも不可解な現象が散見されます。またご報告も頂いております。そしてそれは工業簿記に集中しているのです。
プロ簿記の受講生でも、実力十分で合格間違いないだろうという実力者が工業簿記で大きな失点をし、不合格にされている方が複数名います。1点、2点というレベルではないのです。10点以上の大幅減点です。
それも、どう考えても不正解にされる理由のないしっかりとした解答をしているのに不正解とされ、大幅減点の不合格です。理不尽すぎます。
1名だけなら受講生の勘違いということも考えられますが、プロ簿記内だけで4〜5人(自主的な報告のみなのでこの程度ですが、報告を促せばもっと増えると思われます)、ツイッターでも何人も見かけます。
そこで、統計データをとってみることにしました。
ツイッターで観測された点数を公開している方およそ105名と、プロ簿記で点数報告のあった115名の合計220名のデータです。
きわめて単純です。点数の分布をヒストグラムにしてみただけです。恣意的なデータ操作は一切していません。200名を超える受験生のデータですから、よほどおかしな配点でなければ正規分布に近い分布となるはずです。どうでしょうか。
まずは商業簿記からです。

きれいな分布です。東京商工会議所の平均点は10.1ですが、当該220名のデータは13点です。これは、ツイッターで報告される方においては合格者の比率が多いこと、また、プロ簿記受講生の合格率も30%近くあり一般受験生よりも得点率が高いためです。
では、工業簿記はどうでしょうか。

いびつな形をした分布です。これほど正規分布からはずれた分布もめずらしいです。なぜ、これほどいびつな分布になってしまったのかはっきりした原因は分かりませんが、一般には恣意的な点数操作、不適切な難易度、極端な配点などが考えられます。
ただ、私は、本試験当日の時点で本問は不適切な問題でありこのような異常事態が生じるのではないかと懸念していました。その点についてはこちらの記事に記録を残しています。懸念どおりになってしまったとも言えます。
この統計データについてと分布から推察されることは以下のとおりです。
- 対象人数220人(プロ簿記受講生+ツイッター)
- 最頻値が24点、次点が25点と極めていびつな分布であり41.4%を占めている
- 平均点は17.6点である(東商の平均は11.7点)
- 満点近い点数の受験生は、時間基準で配賦したと答えている。
- 12点もしくは14点と回答している方の多くが金額基準で配賦したと答えている。すなわち、配賦基準の選択を誤るとそれだけで10点以上失う配点となっている
統計データからの推察は以上です。この推察が正しければ配賦基準を金額基準としたか時間基準としたかだけで10点以上差がつくことになります。本問は、配賦基準として金額基準によるべきか時間基準によるべきかの指示がありません。問題の不備です。それにも関わらず、この1つの選択のみで25点満点の試験で10点以上を失うのは大変なことです。
繰り返しますが、金額基準で配賦した回答をなぜ不正解としたのでしょうか。根拠が全くありません。むしろ、当初試験委員は金額基準を正解にしようと考えられていた形跡があります。根拠はこちらの記事をご参照ください。(状況証拠から蓋然性が認められます)
それでは、なぜ、金額基準を不正解とし時間基準のみを正解としたのでしょうか。
本試験当日から翌々日あたりにかけて解答速報として主要スクールが解答を発表します。それらによれば多くのスクールが時間基準にもとづく解答を正解としていました。これは、問題が金額基準で配賦すべきか時間基準で配賦すべきかの指示がない不備問題であったため、より理論的に正しいであろう配賦基準を選択したためです。
もし、試験委員が、このスクールの解答をあとからみて、当初予定していた解答を差し替えたのであれば極めて不誠実ですし問題です。人の答えを見て後出して答えが変わってしまう試験問題などありえません。
そもそもが問題の不備(配賦基準における指示不足)なのですから、時間基準、金額基準ともに正解とするべきでしょう。そうしたところで褒められたことではありませんが、最低限の対処です。
万が一にもないとは思いますが、平均点の調整の関係などで本来正解となるはずの解答を不正解としたのであれば全くもって不当です。
