第168回日商簿記1級本試験・レビュー

本試験を受験された方、お疲れさまでした。私も受験してきました。
全体的に良問だったと思います。商簿と工簿が難しめ、会計学と原価計算が易しめと、難易度のバランスも適切でしたし、ボリュームも多からず少なからずといった感じでした。普段の実力が出やすい問題だったのではないかと思います。
配点調整は、商簿に入る可能性があると思います。足切りになってしまう方がかなり多そうだからです。その他の科目は、もしかすると、工簿に配点調整あるかもしれませんが、それ以外の科目での配点調整は期待できないと思います。
全体では70点超えているけど、商簿が足切りかも、という方は救われる可能性が高いと思います。
話はそれますが…
私は、プロ簿記を始めてからかれこれ10回以上受験していますが、今回受けた試験会場は、はじめての会場でした。いつも受けている会場は、大学の教室とか商工会議所の会議室ですが、今回は◯◯ホールという名のいわゆる展示会などを行うホールだったのです。
ぱっと見は体育館です。天井が高いのが印象的でした。そしてその天井に高輝度の照明器具がたくさん付いているのです。イメージ分かりますかね?スポーツ施設なんかに付いているスポットライトみたいなやつです。これらが真下を照らすのですが、その光が電卓の表示板に映り込んでしまい、電卓の文字が見にくいったらありゃしないのです。
そのせいか、何度も電卓を叩くはめになり、特に電卓の活躍する工業簿記は苦労しました。
今後は、いわゆるホールと名のつくところで受けるのは止めようと決意したところでした。
それでは、各科目の講評です。
商簿
全体の印象
- 難易度:難しめ
- ボリューム:少し多め。計算量自体はそれほど多くないが、問題の読み取りに時間が掛かる。
- 目標点数:15点取れれば良し。最低限足切りは避けたい。
商簿
基本論点を中心としながらも、少しづつひねりが入っている問題構成でした。一見すると易しそうですが、案外点数が取りにくい問題だったと思います。
冒頭の商品売買の問題は、初見では難しいと思います。解説を聞いてから解き直しをすると簡単に感じられますが、それは問題内容を知っているからです。初見では問題の読み取りがしづらく、何が処理済みで、何が未処理なのかが不明瞭で、解きにくいです。
商品売買に関連する勘定は、売上、売上原価、見本費、商品、売掛金、返金負債の6つですが、このうち見本費、売掛金、返金負債が取れれば十分だと思います。
そのほかは、貸倒引当金、有価証券、固定資産、社債、退職給付、税効果と、定番の論点ばかりですが、いずれも少しづつひねりが入っていて案外得点しにくいです。
目標点数は6割(点数にして15点)です。商品売買は部分点狙い、税効果関連は捨て問として、それ意外を確実に取りに行く解答戦略が有効だったと思います。多分ですが、配点調整が入ると思います。自己採点でギリギリ10点を切っている方は、救われる可能性が高いと思います。
本問のポイントは、本試験の緊張そして気持ちも舞い上がっている中、いかに平常心でケアレスミスをすることなく、ひねりに対応できたかです。問題文を丁寧に読んで、前TBとの整合性のチェックや答案用紙をしっかり読み取る練習が有効です。
会計学
全体の印象
- 難易度:やや易しめ
- 分量:少なめ。スムーズに解けば理論5分、計算20分くらい。
- 目標点数:20点は取りたい。商簿が難しかっただけにここで稼ぎたい。
第1問目 理論
比較的易しい問題でした。特別な理論対策は必要なく、普段の勉強の中で計算と表示について押さえておけば取れる問題でした。4問中3問は取りたいところです。
第2問目 連結会計
成果連結がなく資本連結だけの易しい問題でした。持分法、段階取得、一部売却などの論点が入っていますが、それぞれ基礎問題でした。近年出題された連結会計の中ではもっとも易しかったと思います。
ただ出題のされ方に戸惑ってしまい、例えば「諸資産」など、冷静に考えれば簡単に取れる箇所を落としてしまった方もいたと思われます。ケアレスミス勝負の問題でした。
配点は多分、第1問目の理論が各2点(計8点)、第2問目の連結会計が17点だと思います。配点調整は特にないでしょう。
工簿
全体の印象
- 難易度:普通もしくはやや難しめ
- 分量:少し多め。問題の読み取りは容易なのでそこで時間を取られることはないけれど、計算量と集計量が多いので全体的には時間が掛かる問題。
- 目標点数:16点
費目別計算
近年、条件不足で解答が割れるような問題が頻発していましたが、この工業簿記ではそれが無くて良かったです。細かいことを言えば、労務費会計は指示不足の気もしますが、目くじらを立てるほどではないです。
基本的に、良問だと思います。個々の論点は簿記2級レベルのものもありますが、全体としてみれば、それらがバランス良く配置され、難易度、ボリュームともに適切であり良問だと思います。
なお、論点的に難しい箇所は、ほとんどありませんが、計算量が多く、数値も細かいため、丁寧に下書きを作らないと、計算ミスや集計ミスをしてしまって意外と点数が伸びない問題だったと思います。
また、仕訳問題は2級レベルですが、意外と不得意にされている方もいたかもしれません。T勘定の流れと貸借が逆になりますから、慣れないと間違えやすいです。
そういったことを勘案すると意外と点数が伸びにくい問題で、平均点が低すぎると判断されれば、もしかすると配点調整が入るかもしれません。
多分、出来の悪い箇所は、問1の仕訳問題、問3の予算差異であり、このあたりの配点が低めに設定されて、出来の良い箇所である問2、問4あたりの配点が厚めに振られるかもしれません。
原計
全体の印象
- 難易度:理論問題は普通、計算問題は易しい。
- 分量:少なめ
- 目標点数:21点
第1問目の①〜④ 理論
正直、これはどうなんだろうという気がします。①と②はまあ良いとして(出来て欲しいところです)③と④はスクールによって解答が割れています。私も悩みました。問われている内容も管理会計として重要事項とも思えず、国語の問題のような感じでした。残念な出題でした。
第1問目の⑤〜⑩ CVP分析の計算
かなり易しい問題でした。簿記2級レベルです。満点続出だと思います。こういったところを落としてしまうと致命傷を喰らいます。
第2問目 業務的意思決定会計
こちらも易しい問題でした。テキストの例題レベルです。ここが出来ないということは、テキストレベルの基礎が出来ていないということです。ここも満点続出だと思います。ここの出来不出来は、合否に直結します。

富久田先生はじめまして。
いつも先生のブログ記事を拝見しています。
私は独学で1年半ほど日商簿記1級の学習をしており、今回初めて168回の試験を受験しました。過去に2級の学習時に先生の工業簿記の差異分析についての記事を拝見し、そのおかげで差異分析が得意になり、2級に合格することができました。これを機に1級の勉強に挑戦しましたが、今回の初めての受験で自分の力不足を痛感しました。
試験中、『社債の利息の計算』や『支払手数料』などの基本的な部分で混乱し、冷静に対処できませんでした。また、問題文の意図を正確に汲み取ることができず、基礎的な理解が不足していることを実感しました。
これまで114回から167回までの過去問を解き、『なぜこの解答になるのか?』と疑問に思った問題や理解が浅いと感じた論点については、テキストやネットで調べたり、2級や3級の内容を復習したりしてきました。
ここで先生に質問です。先生が過去にブログで仰っていた『基本の考え方の理解が大事』という点について、私なりにファイナンス・リース取引を例に考えてみました。
ファイナンスリースの例:
所有権移転の契約:最終的に自分の物になる可能性がある契約
有形固定資産の売買取引と共通
減価償却:定額法で残存価値を考慮
所有権移転外の契約:最終的にリース会社に返却
減価償却:定額法で残存価値を考慮しない
リース債務:リース資産を取得するための借入金
これらを分解して考えると、簿記3級や2級の固定資産や借入金の論点と共通していると感じました。これが先生の仰る『基本的な考え方の理解』に当たるのでしょうか?
また、現在の私の学習方法(過去問を解き、疑問点を調べる)は適切でしょうか?ご指導いただけると幸いです。
どうもはじめまして。
感謝の気持ちでコメントしています。
第168回の簿記1級試験にチャレンジして、
自己採点で、商業:13点・会計:20点・工業:23点・原価:23点 合計:79点位
でした。おっしゃるように商簿が足切りされなければ安心かなという感じです。
独学で簿記1級を勉強してきましたが、実は第167回でも挑戦して、その時は会計学が18点取った位で他の科目は12点前後で不合格でした。
その後、このプロ簿記のブログを見つけて最初の記事から全部よく読んで学ばせて頂きました。
分かりやすい文章で書かれているので、とてもためになりました。
特に工業簿記と原価計算は過去問は解けるけど、問題を捻られると間違えることを繰り返していました。
第168回の問題もそうでしたが、何のために、どうしてそうなるのかを理解していれば簡単に解くことができるのだなと感じました。
簿記という分野に限らず、『学び方』を教えて頂いたと思って感謝しています。
ありがとうございました。
はじめまして。先生の記事をいつも読ませて頂いてます。
今回、第167回で落ちたので2回目の受験をしてまいりました。
自己採点ではこんな感じでした。
商簿:14
(正答箇所:BSは現金及び預金、建物、ソフトウェア、投資有価証券、返金負債、流動負債の社債、固定負債の社債、未払費用、退職給付引当金、自己株式、その他有価証券評価差額金。PLは社債利息、支払手数料、見本費、ソフトウェア償却額、退職給付費用)
会計学:20
工簿:14くらい
(問1は満点
問2は確実に正答しているのは前月未払・当月未払
諸口・仕掛品・製造間接費あたりは終盤で慌てていて何て書いたか記憶にないので不明
賃率差異はバツ
問3は操業度差異が正答、予算差異はバツ
問4はバツ、直接労務費部分の計算で単価を支払賃率の1,400円としてしまいました…なので問2の未払以外の部分もあまり期待できないです)
原計:24(理論問題はプロ簿記の見解を正答としています)
合計:72くらい
今回は工簿で戦略を誤ったなあ…とも思いましたが労務費まわりの本質的な理解が甘かったと気付かされたので
結局は自分の実力どおりの点数に落ち着いたのかなと思いました。
原計で荒稼ぎしていなかったら今の時点でもうダメだったと思います。あとは商簿・工簿の配点がどうなるか次第かなと思います。
私は某資格学校でお世話になりつつ、理解がはかどらない部分をプロ簿記の記事を読んで解決させていただいていました。
特に税効果会計、その他有価証券(今回この記事のテクニックがだいぶ役に立ちました)、
(今回は出題されませんでしたが)設備投資意思決定の記事は本当に目からウロコでした。
この記事がなかったら間違いなく「今までさんざん貢献利益使ってたのにいきなりキャッシュフロー?え?何で??」ってなっていたと思います(笑)
本当にありがたいサイトです。無料なのが信じられないレベルです。
長々とすみません。本当にプロ簿記の記事に助けられてストレスフリーに学ぶことができたので
お礼もかねて投稿させて頂きました。ありがとうございました。