第168回日商簿記1級・詳細解説【会計学】

問題1 理論問題
1.収益認識基準(普通)
- ア.「費用を回収することが見込まれない場合…<中略>…原価回収基準により処理」
原価回収基準は、費用を回収することが見込まれる場合なので、× - イ.「一個の契約についてそれぞれ一個の履行義務を識別」
顧客との契約について、一個の契約に複数の履行義務を識別することがあるため、× - ウ.「履行義務の充足に係る進捗度は、各決算日に見直し、当該進捗度の見積りを変更する場合には、会計上の見積りの変更として処理する」
正しい - エ.「契約資産については…<中略>…貸倒引当金は設定されない」
契約資産についても貸倒引当金は設定されるため、×
2.固定資産の減損、繰延資産(易しい)
- ア.「回収可能価額とは、使用価値と正味売却価額のいずれか低い方」
いずれか高い方なので、× - イ.「固定資産の市場価格が著しく下落…<中略>…市場価格まで帳簿価額を減額」
固定資産の減損会計は、市場価格が下落しただけで行われるものでもなく、また市場価格まで減額するものでもないので、× - ウ.「開発費は、すべて繰延資産として貸借対照表に計上することが認められない」
開発費は、繰延資産に計上することが認められるので、× - エ.「自己株式の処分に伴う費用は、株式交付費として貸借対照表に計上することが認められている」
正しい
3.金融商品、純資産(易しめ)
- ア.「ヘッジ損失は損益計算書における営業外費用または特別損失として表示」
ヘッジ損失は、純資産の評価・換算差額等の一項目としてマイナスとして処理するため、× - イ.「その他有価証券評価差額金は、税効果を考慮のうえ、個別貸借対照表において評価・換算差額等の区分に表示するが、連結貸借対照表においてはその他の包括利益累計額の区分に表示する」
正しい - ウ.「圧縮積立金は貸借対照表において資本剰余金として表示」
圧縮積立金は、利益剰余金として表示するので、× - エ.「資本準備金の額が資本金の額を超えることは会社法上認められない」
会社法上、資本準備金の額が資本金の額を超えることも認められるため、×
このエ.が唯一判断が難しい設問であったと思われますが、「イ」が正しいと容易に判断できるため、迷うことはなかったと思われます。
4.企業結合会計(普通)
- ア.「親会社が子会社に対して事業分離を行い、子会社から対価として現金を受け取った場合には、個別財務諸表において移転損益が計上されるが、連結財務諸表において当該移転損益は消去される」
正しい - イ.「吸収合併のうち、持分の結合に該当するものについては、持分プーリング法が適用される」
持分プーリング法は廃止されているため、× - ウ.「企業結合によって被結合企業から取得した仕掛研究開発は、企業結合日の属する期間において費用として処理される」
仕掛研究開発費は、識別可能資産として資産計上されるので、× - エ.「企業結合において生じた取得関連費用は、連結財務諸表において企業結合の取得原価に含められる」
取得関連費用は、連結上、取得原価に含めず費用処理するため、×
難易度
全体的に普通から易しめであり、最低3問は取りたいところです。
第2問 連結会計
1 S社のタイムテーブル
| 1 | 2 | 3 | |
| 資本金 | 50,000 | 50,000 | 50,000 |
| 利剰 | 80,000 | 90,000 | 110,000 |
| 評差 | 10,000 | 10,000 | 10,000 |
| 140,000 | 150,000 | 170,000 | |
| 非株 | (20%)28,000 | (20%)30,000 | (40%)68,000 |
| 取得 | 120,000 | ||
| のれん | 8,000 | 7,200 | 6,400 |
2 T社のタイムテーブル
| 1 | 2 | 3 | |
| 資本金 | 30,000 | 30,000 | 30,000 |
| 利剰 | 10,000 | 15,000 | 18,000 |
| 評差 | 8,000 | 7,000 | 7,000 |
| 48,000 | 52,000 | 55,000 | |
| 非株 | (20%)10,400 | (20%)11,000 | |
| 取得 | 56,000* | ||
| のれん | 14,400 | 12,960 |
* 42,000÷60%×80%=56,000
3 解答
Aランク〜Cランクは難易度で、Aランクは取らなければならない問題です。Bランクの出来不出来が合否に直接影響を及ぼすと思われます。
諸資産(Bランク)
- 20X1年度:P社318,000+S社190,000+S社評価差額10,000=518,000
T社は持分法適用会社であり、連結財務諸表上、諸資産に含まれないことに注意。 - 20X2年度:P社306,000+S社210,000+S社評価差額10,000+T社85,000+T社評価差額7,000=618,000
- 20X3年度:P社366,000+S社245,000+S社評価差額10,000+T社88,000+T社評価差額7,000=716,000
関連会社株式(Aランク)
- 20X1年度:T社株式取得原価12,000
T社は持分法適用会社であり、連結財務諸表上、関連会社株式として計上される。 - 20X2年度、20X3年度:0
20X2年度以降は、関連会社がないので0。
のれん(Aランク)
タイムテーブルより
- 20X1年度:8,000
- 20X2年度:7,200+14,400=21,600
- 20X3年度:6,400+12,960=19,360
諸負債(Aランク)
個別BSを合計するだけ
- 20X1年度:100,000+60,000=160,000
- 20X2年度:120,000+70,000+40,000=230,000
- 20X3年度:120,000+85,000+40,000=245,000
資本金(Aランク)
P社の個別BSの資本金
- 20X1年度、20X2年度、20X3年度:いずれも200,000
資本剰余金(A〜Bランク)
- 20X1年度、20X2年度:50,000
- 20X3年度:50,000+2,000*=52,000
*S社株式の連結上の売却原価170,000×20%=34,000
S社株式の売却額36,000
資本剰余金の変動額:36,000-34,000=2,000
利益剰余金(Bランク)
連結貸借対照表の貸借差額
- 20X1年度:100,000
- 20X2年度:119,200
- 20X3年度:159,360
非支配株主持分(Aランク)
タイムテーブルより
- 20X1年度:S社28,000
- 20X2年度:S社30,000+T社10,400=40,400
- 20X3年度:S社68,000+T社11,000=79,000
難易度
引っ掛かりやすいのが、諸資産です。それぞれの年度の簿価に、支配獲得時の評価差額を足せばよいのですが、それぞれの年度の時価を足すようなケアレスミスをしそうです。要注意。
また、T社のタイムテーブルを作成するにあたり、段階取得をしているため取得原価の算定に注意が必要です。簿価の合計ではなく(つまり、12,000+42,000=54,000ではなく)、支配獲得時の時価(つまり、42,000÷60%×80%=56,000)で計算します。
さらに、20X3年度は、S社株式の一部売却を行っているため、資本剰余金が変動する点にも注意してください。
ポイントとなるのは上記くらいで、ほかに難しい箇所はありません。満点を狙いたい問題です。
