第158回日商簿記1級・詳細解説【原価計算】

第1問 CVP分析
2級レベルの易しい問題であるが、これまた、問題の不備があり解けない。近年、工業簿記、原価計算ともに不備が続いている。受験生が不憫すぎる。
問1 CVP分析
細かい費目がごちゃごちゃ書かれた資料が与えられているが、要するに、販売価格@12,500円、変動費@6,900円、固定費19,992千円で、損益分岐点売上高と、安全余裕率、損益分岐点比率を求める問題である。2級レベルだ。
単位あたり貢献利益額:@12,500円−@6,900=@5,600円
貢献利益率:@5,600円÷@12,500円=0.448
損益分岐点売上高:固定費19,992,000円÷0.448=44,625千円
貢献利益:@12,500円×7,000個×0.448=39,200千円
営業利益:39,200千円−固定費19,992千円=19,208千円(問2①)
安全余裕率:19,208千円÷39,200千円=49%
損益分岐点比率:1−49%=51%
ここまで5分。
問2 修正予算
修正予算がテーマなのに、修正後の販売数量の指示がないという問題。単なる不備というレベルではない。問題の意義そのものに疑問を抱かせるような悪問。校正してないのだろうか。
問題自体は極めて簡単。指示通り、変動費と固定費を修正するだけ。
修正後単位あたり変動費:原料費@1,000+買入部品費@2,200+直接労務費@950円+変動製造間接費@1,900円+変動販売費@400円=@6,450円
修正後単位あたり貢献利益額:@12,500円−@6,450円=@6,050円
修正後固定費予算:コンサル費450千円+製造間接費4,500千円+販売費400千円+研究開発費4,845千円+その他8,842千円=19,037千円
【貢献利益】
第1四半期実績:修正前貢献利益@5,600円×900個=5,040千円
第2四半期予想:修正前貢献利益@5,600円×?
第3四半期予想:修正後貢献利益@6,050円×?
第4四半期予想:修正後貢献利益@6,050円×?
問題文から判明するのは、第2四半期から第4四半期までの合計販売数量が5,100個というだけであり、その内訳は不明である。
問題文には「第1四半期後半からの景気悪化に伴う販売量の減少により、このままでは202X年度の予算営業利益を達成するのが難しいことがわかった」とあり、なんとか策を練って利益確保につとめようという意図が見られる。
そのための販売促進策を実施し、原価低減を立案し、第3四半期以降、原価低減が実現されることになった。では、そういった施策によって、それぞれの四半期にどれほどの販売数量が見込めるのか、そこが本問における最大のテーマであろう。
しかし、その情報がない。あきれるよりほかない。
各予備校とも(私もだが)、解答を作成するために仕方なく第2四半期から第4四半期まで5,100個を均等に按分した数量(1,700個)で販売するという(実務的には不自然な)仮定をおいて解いた。
第1四半期実績:修正前貢献利益@5,600円×900個=5,040千円
第2四半期予想:修正前貢献利益@5,600円×1,700個=9,520千円
第3四半期予想:修正後貢献利益@6,050円×1,700個=10,285千円
第4四半期予想:修正後貢献利益@6,050円×1,700個=10,285千円
貢献利益合計:35,130千円
営業利益:35,130千円−19,037千円=16,093千円
当初の予算営業利益と修正予算の営業利益の差:19,208千円−16,093千円=3,115千円(不利)
貢献利益の減少額:39,200千円−35,130千円=4,070千円
固定費の減少額:19,992千円−19,037千円=955千円
しかし、これは正答ではない。そもそも本問は、問題として成立していないので正答は存在しない。
第2問 理論問題
問1 異常仕損と異常仕損費に関する理論
① 仕損が通常の程度をこえて発生することがあるが、その原因には、短期的に経営者にとって管理可能な原因も含まれ、材料の不良や整備不良による機械の故障が挙げられる。→そのとおり
② 異常仕損の原因は、経営者にとって管理不能な地震や台風などの天災に限られる。→上記①のとおり管理可能でありながら異常仕損とすることもあるので×
③ 異常仕損費は、良品の原価に含めてはならず、良品の原価と区別して計算しなければならない。→そのとおり
④ 異常仕損費は、その発生原因にかかわらず特別損失の部に計上すべきである。→管理可能な異常仕損は営業外費用に計上することが多い。また、臨時で多額なら特別損失だが、経常的に発生、もしくは少額なら営業外費用に計上するため×
問2 原価標準に関する理論
① 回避し得るムダを完全に示すことで原価責任を明らかにできるため、理想標準原価が現実的標準原価よりも優れているとする考え方は、絶えざる改善を志向する近年の経営管理の傾向と調和する。
→ 多分、問2では、これが一番難しい。なまじ原価計算基準を読んでいると「理想標準は使ってはいけない」と覚えているため×にしたくなるが、近年の実務レベルの傾向として、これは正解である。ただし、かなり細かい論点であり会計士レベルである。1級受験生にどのレベルを求めているのか疑問。(第1問目で2級レベルの問題を出しておいて、理論はこれか?という感じ)
② 原価標準は、財貨の消費量を科学的、統計的調査に基づいて能率の尺度となるように予定するものであるから、生産の基本条件が変わっても改訂する必要はない。
→これは、素直に×が付けられるはず。基準にも改訂せよと書かれている。
③ 現場の従業員に与えるモチベーションを考えて、良好な能率のもとにおいて、その達成が期待されうる標準原価を現実的標準原価といい、これには、通常生ずると認められる程度の仕損や遊休時間等の余裕率は含まれない。
→これは基準などを知らなくても解答できるはず。国語の問題。従業員に与えるモチベーションを考えているにも関わらず、通常生ずると認められる程度の余裕すらも与えないというのはおかしい。よって×。
④ 経営における異常な状態を排除し、経営活動に関する比較的長期にわたる過去の実際数値を統計的に平準化し、これに将来の趨勢を加味した正常能率、正常操業度および正常価格に基づいて決定される標準原価を正常原価という。これは、経済状態の安定している場合、期間損益計算目的にもっとも適しており、また原価管理のための標準として用いられる。
→原価計算基準にほぼそのままのことが書かれている。○である。講義では「基準で、正常という用語が出てきたら、異常ではないという意味と、長期データを平均化したという2つの意味がある」と解説している。基準を読んでいなくても、それを覚えていれば取れたか。
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こんにちは、原価低減案は第2四半期以降に実施するとありますが、第1、第2四半期の固定費はまだ低減されていないような気がするのですが、第1~第4四半期までの固定費が低減されているように思えてしまいます。どうなっているのでしょうか?
>第1、第2四半期の固定費はまだ低減されていないような気がするのですが、
すみません、ちょっとご質問の意味がつかめてなくて的を外した回答になるかもしれません。
できれば、具体的な式や金額を書いていただけるとありがたいです。(例えば、修正予算の固定費は、○○円ではないのか?とか)
>第1~第4四半期までの固定費が低減されているように思えてしまいます。
資料に示された固定費は年間通しての金額ですから、それを低減するとなれば、当然、その額を低減することになります。
仮に、問題文に「固定費は四半期ごとに発生しており、そのうち、○○の項目はその都度見直すことが可能である」みたいな指示があれば、話は別ですが、本問は何も指示がないので検討のしようがありません。
なお、余談ですが、固定費のうち経営環境の変化などで見直せるもの(宣伝費など)をマネジドコストといい、見直せない固定費(過去に投資した設備の減価償却費など)をコミッテッドコストといいます。事業部制の問題などでは、そこが論点になることもありますが、本問はそこまで触れられておらず、考えようとしても情報がなさすぎて考えることが出来ません。
本問は
「来期の予算を作っているところだが景気悪化の懸念で想定より利益が取れなさそうだ。そこで修正予算を作ることにした。それによれば、コンサルに頼んだり買入部品を自製したり工程改善などを行うことで販売数量を増やしたり変動費を減らしたりすることが出来るようだ。ただしその効果が発揮されるのは第2四半期以降だ。なお、コンサルに頼んだり、役員の賞与を削減することで固定費が動くのでその分も考慮すること」という問題と捉えればよいと思います。
メールアドレスを忘れてしまい、別のメールアドレスからの返信させていただきます。すいません。説明不足でした。第2四半期以降から、原価低減するということは、第1、2四半期の固定費は19,992千円で、第3、4四半期は19,037千円を使うと思いました。
しかし分けることはできないので、問題を解くときは固定費は修正した19,037千円を使いました。
>第1、2四半期の固定費は19,992千円で、第3、4四半期は19,037千円を使うと思いました。
19,992千円、19,037千円ともに、年間を通しての固定費の額です。四半期ごとに変化するものではありません。
もし、本問が「現在は、第1四半期が終わったところである。ここで予算を編成しなおすことにした。第1四半期では○○円の固定費が発生した。第2四半期より新たに○○円の固定費を設定する」という内容でしたら、年度の途中で予算が変化することはありえますが、本問はそうではなく「現時点は2021年度で、2022年度の1年分の予算を編成している」という前提なので、途中で固定費が変化する前提の問題ではありません。
計算というより、シチュエーションの捉え方で勘違いがあるのかもしれません。
ありがとうございます。