第197回全経上級・解説【原価計算】

原価計算の問題全体をとおして

工簿に続き、原価計算も良問でした。

第1問目は、CVP分析、最適セールス・ミックス的要素、業務的意思決定が無理のないストーリーで融合されており作り慣れている感じが伝わって来ます。また、難易度も基本から応用までバランス良く問われており、学習教材としても検定試験問題としても優れていると感じました。

第2問目は、高低点法と最小自乗法による固変分解の問題です。こちらは普通でした。最小自乗法はノーマークだった受験生が多かったと思いますが、ご親切にも連立方程式の立式方法まで示されており、難易度も適度なものだったと思われます。ただ、実践的には(実際はたいして難しくないのですが)最小自乗法は出来ない受験生が多いので埋没する可能性が高いというところまで読みを入れて、あえてパスして、工簿に時間を割くような戦略が有効だったのではないかと思います。

第1問 CVP分析・業務的意思決定

問1 製造間接費予定配賦率の算定

資料1

  1. 製品X1個は,部品A2個と部品B3個から構成される。
  2. 部品A1個当たりの直接材料費は8,500円であり,部品B1個当たりの直接材料費は4,000円である。
  3. 部品A担当の直接工の賃金は1時間当たり2,800円であり,部品B担当の直接工の賃金は1時間当たり1,800円である。また,部品A担当の直接工の月間最大直接作業時間は1,400時間であり,部品B担当の直接工の月間最大直接作業時間は900時間である。
  4. 製品X1個当たりに必要な直接作業時間は,部品A2個に関連して4時間であり,部品B3個に関連して3時間である。なお,製品Xへの各部品の組立は自動で行われるため,直接作業時間が追加的に生じないものとする。
  5. 製造間接費については,直接作業時間を配賦基準とし,公式法変動予算を採用している。部品A担当と部品B担当の直接工は,共通する工具や設備を使用している。そのため,年間基準操業度は,部品A担当と部品B担当の直接工の年間最大直接作業時間の合計を利用し,変動費率は,1時間当たり3, 200円 を工場全体で利用している。年間固定製造間接費は60,720,000円である。
  6. 製品X1個当たりの予定販売価格は90,000円である。当製品の需要は十分に見込まれる。

最初は、サービス問題です。とにかく得点をあげますよという問題。ここで落としたらおしまいです。

 変動費率:@3,200円
 固定費率:60,720,000円÷基準操業度(1,400時間+900時間)=@2,200円
 製造間接費予定配賦率:@3,200円+@2,200円=@5,400円

問2 部品Aと部品Bの単位あたり製造原価

問題文を正確に読み取れているかどうかのチェック問題です。

  部品A 部品B
直接材料費 @8,500円 @4,000円
直接労務費 @2,800円×2=@5,600円 @1,800円×1=@1,800円
製造間接費 @5,400円×2=@10,800円 @5,400円×1=@5,400円
合計 @24,900円 @11,200円

 

問3 損益分岐点販売量と余剰時間

問2で部品1個あたりの製造原価を全部原価計算で答えさせておきつつの、問3では直接原価計算によるCVP分析を求めてくるあたり適度なひねりで良いと思います。CVP分析を行うために、部品Aと部品Bの変動製造原価を算定し、そのうえで製品Xの変動製造原価を求めます。

部品A変動製造原価

@8,500円+@5,600円+@3,200円×2=@20,500円

部品B変動製造原価

@4,000円+@1,800円+@3,200円=@9,000円

製品X変動製造原価

部品A@20,500円×2個+部品B@9,000円×3個=@68,000円

損益分岐点

月間固定費額:60,720,000円÷12ヶ月=5,060,000円
製品X1個あたり貢献利益額:@90,000円−@68,000円=@22,000円
損益分岐点生産販売量:5,060,000円÷@22,000円=230個

損益分岐点における直接工の余剰時間

A担当直接工:1,400時間−2時間×2個×230個=480時間
B担当直接工:900時間−1時間×3個×230個=210時間

問4 製品Xを最大限生産したときの月次利益・その1

問3ではCVP分析をメインとしつつも、余剰生産能力を問うあたり最適セールス・ミックス的思考(限られた資源の有効活用)を意識した作りとなっています。問4ではさらに踏み込んで、製品Xを最大限生産したときの月次利益が問われています。

製品Xの最大生産量

部品Aの最大生産量:1,400時間÷2時間=700個
部品Aの最大生産量による製品Xの生産上限:700個÷2個=350個
部品Bの最大生産量:900時間÷3時間=300個
部品Bの最大生産量による製品Xの生産上限:300個÷1個=300個
以上より、製品Xの最大生産量は300個である。

製品Xを300個生産したときの月次利益

貢献利益:@22,000×300個=6,600,000円
営業利益:6,600,000円−固定費5,060,000円=1,540,000円

問5 製品Xを最大限生産したときの月次利益・その2

資料2

  1. 部品Cは,外部から購入することができ,部品Bとまったく同じ機能を有している。
  2. 部品C1個当たりの当初の購入原価は15,000円である。ただし,部品C1個当たりの購入原価は,300 個を超えた分に対して14,500円,600個を超えた分に対して14,000円,900個を超えた分に対して13,500円というように,当初の購入原価の90%まで,500円ずつ段階的に減額されるように契約している。

問5では、条件を追加することで業務的意思決定としての思考を求めています。問4では、部品Aの制約からは製品Xを350個まで生産可能であるにもかかわらず、部品Bの制約によって製品Xは300個までしか生産できませんでした。

そこで、上記の部品Bとまったく同じ機能を有する部品Cを外部から購入して製品Xの製造販売を検討するわけです。まずもって、こういった意図であることの読み取りが出来ているかどうかが問われています。

それに加えて、本問のように「製品X1個は、部品Aを何個と部品Bを何個消費して、それぞれの部品は、1個製造にするのにそれぞれ何時間の加工時間を要して・・・」といった多重構造の問題は、ケアレスミスを引き起こしやすいものです。いかに整理してミスなく計算したかが問われています。

苦手な人は、徹底的に苦手なようですが、この手の問題に慣れている(好きな人)にとっては、容易だったことでしょう。

思考の順序としては、部品Cを外部から購入した場合の製品X単位あたり貢献利益を算定し、続いてどれくらいの製品Xを追加製造できるのかを検討します。

製品Xの単位あたり貢献利益

製品X単位あたり売上高:@90,000円
部品A:@20,500円×2個=41,000円
部品C:@15,000円×3個=45,000円
貢献利益:@90,000円−41,000円−45,000円=@4,000円

製品Xの追加生産量

部品Aの最大生産量は1,400時間÷2時間=700個であり、製品Xの生産上限は700個÷2個=350個である。すでに製品Xを300個生産しているため、あと50個追加生産可能である。

製品Xの追加によって増加する利益額とそのときの月次利益

利益増加額:@4,000円×50個=200,000円
そのときの月次利益:(問4)1,540,000円+200,000円=1,740,000円

問6 製品Xと製品Yを最大限生産したときの月次利益

資料3

  1. 製品Y1個当たりの直接材料費は20,000円である。
  2. 製品Yの生産は部品B担当の直接エによって行われる。また,製品Y1個当たりの直接作業時間は4時間である。
  3. 製品Y1個当たりの予定販売価格は60,000円である。当製品の需要は十分に見込まれる。

問5までは、部品A、部品Bともに自製し、部品Bについて足りない部分のみ外部購入して製品Xを生産する計画でした。これに対して、問6では、最初から部品Bは自製せず、すべて部品Cの外部購入によってまかなう計画です。そして余剰した部品B担当の作業時間によって、製品Yの製造販売をします。

ここまで来るとかなり計算が面倒です。捨てた人も多いと思います。正解でしょう。ここに時間を費やすのなら、工業簿記に時間と労力を費やすべきです。難しくは無いのですが、いわゆる面倒でミスしやすい感触を直感的に感じる問題です。そういった問題は、仮に手を出せば出来たとしたもスルーが正解です。特に全経上級で、このレベルの問題になると、埋没することがほぼ確定的だからです。本問は「できても、あえてやらない」が合格のための最適解です。

製品Yの単位あたり貢献利益

製品Y単位あたり売上高:@60,000円
直接材料費:@20,000円
直接労務費:@1,800円×4時間=7,200円
変動製造間接費:@3,200円×4時間=12,800円
貢献利益:@60,000円−@20,000円−7,200円−12,800円=@20,000円

製品Yの追加生産量と製品Yの製造による増額利益

製品Yの追加生産量:900時間÷4時間=225個
製品Yの製造による増額利益:@20,000円×225個=4,500,000円

製品Xの製造から得られる利益

製品X売上高:@90,000円×350個=31,500,000円
部品A:@20,500円×2個×350個=14,350,000円
部品C:
  @15,000円×300個=4,500,000円
  @14,500円×300個=4,350,000円
  @14,000円×300個=4,200,000円
  @13,500円×150個=2,025,000円
貢献利益:2,075,000円

製品Xと製品Yから得られる利益と問4との差額

製品Xと製品Yから得られる利益:
 4,500,000円+2,075,000円−固定費5,060,000円=1,515,000円
問4との差額:1,540,000円−1,515,000円=25,000円(問4の方が大きい)

問7 意思決定における理論問題

意思決定のための原価計算における(ア 埋没)原価とは,代替案の選択に影響されない原価であり,当該意思決定に(イ 無関連)な原価をいう。たとえば,既存設備の減価償却費など,すでに支出してしまった原価がこれに当たる。さらに,(ウ 未来)の原価であっても,代替案間で(エ 共通)して発生し,金額が同じであれば,(ア) 原価である。

まあ、あまり良い問題ではない気がします。これを出すくらいなら「埋没原価を説明せよ」として「過去原価、もしくは未来原価でも代替案において同額が発生する原価」を答えさせるべきでは?と思います。

こんな用語を答えさせるの?という点で違和感を覚えました。

第2問 固変分解

問1 売上高

製品1個当たりの販売価格は4.5千円,予定販売量は20,000個である。売上高はいくらですか?という問題。急に小学生向けの問題が来ました。

 4.5千円×20,000個=90,000千円

問2 高低点法

2級の基礎問題ですね。問1に続き、ここを落とすと終わりでしょう。

第1期から第5期までのデータ

  販売量(X) 原価(Y)
第1期 16,000個 62,800千円
第2期 18,000個 64,400千円
第3期 17,000個 63,000千円
第4期 20,000個 66,800千円
第5期 19,000個 66,000千円

 

変動費率:(66,800千円−62,800千円)÷(20,000個−16,000個)=@1千円
固定費額:62,800千円−@1千円×16,000個=46,800千円

問3 最小自乗法

公式が書かれているのでそれに従うだけです。公式の意味が分からないなら迷わずスルーです。というか公式の意味が分かっても、計算量が多く手間と時間が掛かることと、それに対して埋没問題となってしまうであろう可能性を考えたらスルー推奨です。

  X Y X2 XY
1 16,000 62,800 256,000,000 1,004,800,000
2 18,000 64,400 324,000,000 1,159,200,000
3 17,000 63,000 289,000,000 1,071,000,000
4 20,000 66,800 400,000,000 1,336,000,000
5 19,000 66,000 361,000,000 1,254,000,000
合計 90,000 323,000 1,630,000,000 5,825,000,000

以上より連立方程式を立式します。

Σy=aΣx+bΣ より
323,000=90,000a+5b・・・①
(単なるΣはデータ個数である5)

Σxy=aΣx2+bΣx より
5,825,000,000=1,630,000,000a+90,000b・・・②

①と②の方程式を解いて、a=1.1、b=44,800

問4 CVP分析

高低点法の場合

 固定費46,800÷貢献利益(@4.5−@1)=13,371.42…≒13,372(切り上げ)

最小自乗法法の場合

 固定費44,800÷貢献利益(@4.5−@1.1)=13,176.47…≒13,177(切り上げ)

問4 高低点法の問題点

私は「2つのデータのみで計算するため、正確性に難点がある。」と書いたのですが、こういう当たり前すぎるというか自明のことをそれっぽく2行に渡って書くのって難しいですよね。

他社スクールの解答速報を見たところ「最高点と最低点は異常値の場合がある」といった内容に触れていました。確かにそのとおりなのですが、それが高低点法の問題点なのかというとちょっと違和感を覚えます。

異常値は、正常操業圏内を決めて排除すればいいだけの話です。高低点法に限らず最小自乗法でもスキャッターチャート法でも異常値の排除は、固変分解の前提です。

よって「最高点と最低点は異常値の場合がある」を「高低点法の問題点」としては挙げるのは、適切ではないと考えました。あえて触れるなら「もし異常値が混入したとき、最小自乗法よりも高低点法の方がより大きく影響を受ける」といった感じでしょうか。

いずれにしても、正確性について何か書いておけば、部分点をもらえると思います。

第197回全経上級・解説【原価計算】” に対して2件のコメントがあります。

  1. Smile より:

    誤字のご連絡です。

    197回全経上級の工業簿記
    解答の問題1、問1の「完成品原価」が「月末仕掛品原価」と記載されています。

    1. pro-boki より:

      smileさん、ご指摘ありがとうございます。

      ご指摘の内容は、こちらのブログの記事(197回全経上級工業簿記)のことをおっしゃっているのかなと勘違いしていました。記事を今一度読み直してみたのですが、特に間違いは発見されず、何か行き違いかな、と思っていました。

      ご指摘の内容は、プロ簿記受講生用の内部資料の話ですね。いま、気付きました。確かに誤植です。修正しました。

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