第162回日商簿記1級・詳細解説【原価計算】

全体をとおしての感想
例年に比較してボリュームが少なかったです。工簿と同様、こちらも30分程度で終わってしまいます。試験終了までかなりの時間を残してやることがなくなったのか、中途退出者の続出が印象的でした。
また、全般的に頭を使うような問題ではなく、知っているか知らないかを問う問題ばかりでした。実力を検定する問題としては改善の余地があると思います。
印象的なのは理論問題の(4)です。同じ論点が過去に繰り返し出されており、記憶の限りでは今回で4回目です。よほど思い入れがあるのですかね。
第1問目 理論問題
(1)進捗度
もっとも答えにくいと思います。
「完成品換算量とは、完成品と仕掛品の価値の違いを( ア )の違いに置き換えて…」という問題でした。私は「置き換えて」にこだわってしまい「はて?何か置き換えるものあったっけ?」と日本語としての意味を深追いしてはまってしまいました。解答速報の「加工進捗度」を見て、ああ、なるほどとは思いましたが、しかし、いまだに日本語としてフィット感がありません。
「価値の違いを進捗度の違いに置き換える」…どういう意味?そもそもここで言う価値って何?
(2)配賦基準
前半の「製造間接費は( イ )とよばれる代理変数によって…」の箇所は「はぁ?何言っているの」くらいの感じだとは思いますが、後半の「( イ )の代表的な例に直接作業時間がある」で、配賦基準が思い浮かんだ方も多いと思います。
(3)原価企画
「原価企画」を書かせるだけって、ちょっと手を抜いてるなと思いました。
(4)独立投資案と従属投資案
独立投資案と相互排他的投資案における評価方法の理論問題は繰り返し出されていますから、知っていれば出来たでしょうし、知らないと何のこと?という感じでしょうか。同じ趣旨の問題は、134回問5、140回問3、144回第1問目問6の3回出ています。今回4回目です。
なお、これまでの過去問では従属投資案ではなく相互排他的投資案という用語で出題されてきました。従属投資案とは、他の投資案に影響を受ける投資案という意味で、そのうちの1つに相互排他的投資案(それを採用すると他の投資案が採用出来なくなる投資案=どちらかしか投資できない)があります。それ以外にも補完投資案、前提投資案があります。
独立投資案は、他の投資案に影響を受けない投資案です。つまり、単独でその投資案が得か損かを判定すればいいわけです。この場合、内部利益率で判定しても(WACCを上回っていれば良い)、正味現在価値で判定しても(正の値なら良い)、収益性指数で判定しても(1を超えていれば良い)構いません。内部利益率がWACCを上回っていれば、必然的に正味現在価値も正の値となり、収益性指数も1を超えます。
よって、解答は、正味現在価値と収益性指数のどちらでも構わないことになります。別解が生じる点で作りが少々甘いです。
(5)安全余裕率
安全余裕率という用語を答えさせる問題です。2級の問題です。これもつい最近158回に同様の趣旨の問題が出ました。また135回にも同様の趣旨の問題が出ています。
(6)損益分岐点の変化
貢献利益率が変化すると、損益分岐点売上高はどうなるか?という問題。よくわからなければ適当な数値を仮置して試してみるのが簡単です。
ケース1(40%)売上100、貢献利益40、固定費10、営業利益30
ケース2(50%)売上100、貢献利益50、固定費10、営業利益40
ケース1の損益分岐点売上高は、固定費10÷貢献利益率40%=25
ケース2の損益分岐点売上高は、固定費10÷貢献利益率50%=20
25から20に5だけ損益分岐点売上高が低くなっていますので、20%低くなることが分かります。
第2問目 業務的意思決定会計
135回とそっくりな問題です。解いた経験があるかどうかでかなり差が出そうです。
そもそも、この手の業務的意思決定会計は、なぞなぞと同じです。どれほど簡単ななぞなぞでも、初めて出されてそのネタを知らなければ考え込んでしまうものです。一方で知っていれば即答です。
仮に全10問中1問くらいこういった問題があってもいいとは思いますが、全体の半分程度(もしくはそれ以上)をなぞなぞが占めるのって簿記1級としてどうなんだろうとは思います。
問1と問2 生産量の算定
材料xを使用すると製品Xを10個作るのに10分掛かる(1分/個)。材料yを使用すると10個作るのに5分掛かる(0.5分/個)。1日の機械稼働時間は450分である。材料xだけで作ると何個作れるか?材料yだけで作ると何個作れるか?
- 材料x使用時:450分÷1分/個=450個
- 材料y使用時:450分÷0.5分/個=900個
あまりに簡単すぎて、考えすぎて間違えた人(歩留率を考慮してしまった人)もいることでしょう。日本語をよく読みましょう。まあ、読み間違えた人が悪いといえばそのとおりなのですが、しかし、その1つの読み間違いで、この第2問目は全問不正解となり足切りになる可能性があります。このミスはそこまでの重罪なのかという疑問が生じます。問題量が少なすぎるとこうなるのです。
問3 差額原価収益分析
製品単位あたり材料消費額
- 材料x使用時:材料x@100円÷歩留率50%=@200円
- 材料y使用時:材料y@200円÷歩留率80%=@250円
製品単位あたり貢献利益
- 材料x使用時:販売価格@700円-材料x@200円=@500円
- 材料y使用時:販売価格@700円-材料y@250円=@450円
貢献利益額の差
- 材料x使用時:@500円×450個=225,000円
- 材料y使用時:@450円×900個=405,000円
以上より、材料y使用時の方が180,000円有利
問4 機会原価
言葉が足りませんよね。ネタ(135回)を知っていれば「ああ、あのことか」と思うのでしょうけど、いきなり機会原価と言われても何を基準としてどこまでを計算範囲にするか悩んでしまうと思います。
135回はそういった指示が丁寧だったので良問でしたが(なのでその問題を知っていれば本問は簡単です)知らないと引っかかりそうな問題です。
ここでは、材料xを使用して製品Xを100個作ることで失う次の2つの利益を機会原価ととらえます。
- 材料yの使用によって製品Xを作っていたら得られたはずの貢献利益(@450円×200個=90,000円)
- 材料xを外部に販売していたら得られたはずの売却収入(@30円×200個=6,000円)
合計96,000円が解答
問5 機会原価を考慮した上での差額原価収益分析
これも、ネタ(135回)を知っていれば瞬殺、知らなければ悩むと思います。
「材料xを使用して製品Xを100個作ること」の差額原価は問4で96,000円と判明しているので、差額収益を求めればよいわけです。
一見すると、材料x使用時の単位あたり貢献利益が@500円なので、@500円×100個=50,000円と計算してしまいそうになりますがこれは引っ掛けです。材料xは手持ちであり、これを消費するため変動費はかかりません。よって、差額収益は、販売価格@700円×100個=70,000円となり、差額利益は26,000円です。
解答は、材料x使用時の方が26,000円不利
