第152回日商簿記1級・詳細解説【原価計算】

原価計算の問題全体をとおして
前回(150回)と同じようなコメントになってしまうのですが、本問も難易度そのものは易しいレベルでした。ただ、この作問者の特徴でもあるのですが、題意が読み取りにくい、指示があいまい、本筋以外の設問、解答条件を後出しにしてくるなど、検定試験としての作問には難点があると感じます。
試験委員に任命されるくらいの立派な先生ですから研究実績は素晴らしいのだと思います。ただ、作問というのは、また別なのでしょう。
問題自体は一部をのぞき易しいです。過去の予算編成を簡略化した感じです(過去の問題を再利用するのもこの先生の特徴といえます)。平均点は高めだと思います。
予算編成
問1と問5 9月の予算貢献利益と予算営業利益ほか
販売価格、販売数量、原価標準、変動販売費、固定費といった情報が与えられて、貢献利益と営業利益を答えなさいという問題です。簡易P/Lを作るだけです。5分もかかりません。
しかも、この簡易P/Lを作りさえすれば、問1の貢献利益と営業利益ばかりか、問5の①も②も⑦も答えられます。解答箇所13箇所のうち、5箇所の解答が作れてしまいます。本当にこれで実力を検定出来るのでしょうか。易しければいいというものでもないような気がします。
| 売上高 | @1,500×25,000個= | 37,500,000 |
| 変動製造原価 | @900×25,000個= | 問5⑦ 22,500,000 |
| 変動販売費 | @90×25,000個= | 2,250,000 |
| 貢献利益 | 問1 12,750,000 | |
| 固定費 | 200万円+625万円= | 8,250,000 |
| 営業利益 | 問1 4,500,000 |
- 問5 ①:貢献利益率12,750,000÷37,500,000=34%
- 問5 ②:営業利益率4,500,000÷37,500,000=12%
問2 (6)までの条件にもとづいて、9月の予算現金残高
過去問(122回,101回)に似た問題があります。解いた経験があれば容易だったと思います。なお、知らなくても問題文の通りに丁寧解いていけば解答可能だったと思います。
現金収入
| 月初売掛金 28,000,000 |
当月の現金収入 貸借差額より35,500,000 |
| 当月売上 37,500,000 |
期末売掛金 37,500,000×80%=30,000,000 |
原料費の現金支出
| 当月の現金支出 貸借差額より9,750,000 |
月初買掛金 3,500,000 |
| 月末買掛金 12,500,000×50%=6,250,000 |
当月原料購入 @500円×25,000個=12,500,000 |
それ以外の現金支出
| 原料以外の材料費 | 7,650,000円 |
| 労務費 | 8,800,000円 |
| 経費 | 2,800,000円 |
| 機械購入 | 7,000,000円 |
| 合計 | 26,250,000円 |
現金残高
月初現金10,000,000+収入35,500,000−原料支払い9,750,000−その他支出26,250,000=9,500,000
問3 (7)と(8)を踏まえ9月の月初にいくら借入れをすべきか
(7) 各月末に保有すべき最低の現金残高は10,000,000円である。銀行からの借入れは月初、元本の返済は年末にまとめて行う。
(8) 資金調達と返済 月末の現金残高が最低必要現金残高を下回ると予想される月においては、あらかじめ500,000円の倍数で月初に月利0.2%でその不足額を借り入れておく。その利息は月末に支払う。
問2によれば現金残高は950万円であり、最低現金残高1,000万円に50万円足りません。よって、これを月初に借りますが、この場合、この借入金の支払利息1,000円(=50万円×0.2%)を月末に支払うこととなり、結果、現金残高は9,999,000円で最低現金残高1,000万円に1,000円届きません。よって、100万円借り入れます。
問4 9月の予算経常利益
- 営業利益は、問1より4,500,000円
- 支払利息は、問3より借入金100万円×0.2%=2,000
- よって、経常利益は、4,500,000円−2,000円=4,498,000円
問5 CVP分析
9月の貢献利益率は( ① )%であり、売上高営業利益率は( ② )%と予想される。当社では、月問売上高営業利益率目標を( ③ )%と設定しているため、予算編成段階での営業利益未達額は750,000円となる。( ④ )は約2.83であり、売上高が5.9%増加すると営業利益は16.697%増加し、その増加額は( ⑤ )円となり、目標売上高営業利益率を達成できる。
しかし、市場の競争が激しく、売上高の増加は見込めない。そのため、製品Xの設計変更による原料消費量の削減と作業改善による加工時問の短縮を検討したところ、9月からこれらのコスト削減が実現可能であり、これにより売上高営業利益率がちょうど( ③ )%となることがわかった。そこで製品原価標準について、原料費も変動加工費も価格標準は変わらないが、原料費の物量標準を1個当たり( ⑥ )g、変動加工費の物量標準を1個作るのに0.19時問に改訂することにした。この結果、変動売上原価は標準改訂前の( ⑦ )円から( ⑧ )円となる。
①と②は、問1で計算したとおり、34%と12%です。貢献利益と営業利益を問1で答えさせておいて、単に売上高で割っただけのことを問5で聞いてくるというのもいかがなものかと思います。
③は予算営業利益4,500,000は目標にくらべて750,000足りないので、目標は5,250,000。売上が37,500,000であり割るだけです。14%。
④は、文章から経営レバレッジ係数を言っているのだろうと予想がつきますが、一応チェックしてみます。
経営レバレッジ係数:貢献利益1,275万円÷営業利益450万円=2.8333…
問題文と整合してますので、経営レバレッジ係数が正解です。
⑤は、書かれているとおりに計算します。営業利益が450万円、16.697%増加するといくらですか?という問題。いつから小学生の算数のテスト受けることになったんでしょうかね。私は。450万円×16.697%=751,365円
ちなみに、売上高が5.9%増加という点から、簡易P/Lを作って正確に計算すると、貢献利益1,275万円×1.059−固定費825万円=5,252,250円となり、752,250円の増加となります。
しかし解答は751,365円です。問題文は、経営レバレッジ係数2.8333…を丸めた約⒉83にもとづく解答を要求しているため、正確に計算すると×になります。ご注意ください。
最後は、おなじみのちょっとだけパズルチック問題です。もう飽きました、このパターン。簿記に必要なんですかね?こういうの。たまにはいいですけど毎回毎回はどうかと思います。
コスト削減したら、営業利益が14%(5,250,000円)になるとのこと。固定費が825万円、変動販売費が225万円ですから、逆算すると、変動売上原価は2,175万円ですね。これが⑧。ちなみに⑦は問1で計算済みの2,250万円です。
25,000個作って2,175万円ってことは、原価標準は2,175万円÷25,000個=@870円
直接材料費@5円×?+変動加工費@2,000円×0.19=@870円
ここから、?は98です。
数万人が受験する試験です。可能であれば、もう少し作問にお時間と労力をお使いいただけると幸いだと思うのです。
さいごに
こちらの記事にも書きましたが、本問は、(6)の資料に販管費の現金支出が含まれているのかどうかの判断が出来ず、私は間違えました。
私は、(6)の資料に「材・労・経」に販管費が含まれているのか否かで悩みました。通常、「材・労・経」といえば製造原価における形態別分類のことであり、たとえば、一般管理費である経営管理者の給料や、販売費である販売店員の給料を「労務費」とは言いません。人件費といいます。(まあ絶対、労務費と言わないかと言われればそうでもないのですが)
よって、販管費は含まれていないのではないかと考えたのです。
また、(6)の資料に製造原価と販管費のすべての現金支出を含むのであれば、(5)の条件を一切使わないことになります。それにも関わらず、わざわざ資料として与えるのだろうかと。
さらに、通常営業をしているのであれば(突発的なことがなければ)現金有高はそうそう大きく増減しないことが想定されます。今回は、機械購入700万円という突発的な出来事がありました。それにも関わらず、100万円だけの借り入れですむのだろうかと。
これらの観点から、私は、(6)の資料には販管費は含まれていないのであろうと判断しました。
しかし、いったん事務所に戻って、(6)の資料を無視してあらためて販管費と加工費を計算してみると
- 変動加工費:@400円×25,000個=1,000万円
- 変動販売費:225万円
- 固定加工費・固定販管費:825万円−減価償却費125万円=700万円
- 合計:1,925万円
このようになり、(6)の資料と整合していることが分かります。つまり、販管費は含まれていたのです。間違えました。ここを間違えても80点は超えているので合格という点では大丈夫なのですが、なんとも言えず残念な気持ちが残りました。
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初めてコメントします
過去問で152回の問題を解いていたのですが、
問2について(5)の資料に、〜〜〜は減価償却費であり、残りは現金支出費用である。という記載がいくつかありますが、こちらの現金支出費用は予算現金残高の計算にはカウントしないのでしょうか。お忙しいところすみませんが、教えていただけると嬉しいです。
記事の「さいごに」のところにも書きましたが、本問は、(6)の資料に製造原価と販管費のすべての現金支出額が書かれているため、(5)の条件を一切使いません。
つまり、この「さいごに」で言いたかったことは、「だったら(5)とか書くなよ!」という不満が生じてしまいましたってことです。
そういうことだったのですね。ありがとうございます。
しかし、試験中の緊張しているなかそこまで判断できるか…色んなパターンの問題を解いてみるしかないですね。ありがとうございました。
まもなく155回の試験の前に、この過去問を解いている中で、教えていただきたいことがあります。問5の⑦⑧で、「この結果、変動売上原価は標準改定前の(⑦)円から(⑧)円となる」とあるのですが、変動製造原価ではなく、変動売上原価とかかれているので、変動製造原価と変動販売費を合算したものではないのでしょうか?
変動売上原価であろうが、単なる売上原価であろうが、「売上原価」は、売上に個別的、直接的に貢献した原価をいいます。よって、製品原価だけが該当します。変動売上原価といえば、そのうちの変動費だけです。
販売費は、期間原価です。期間原価とは、売上に直接的に貢献したかどうかは不明だけど、収益計上と同じタイミングで発生した費用だから、期間的に対応していると考える原価です。よって、売上原価とは全く別モノです。
下記の解説箇所についてお伺いしたくお願いいたします。
>売上高が5.9%増加という点から、簡易P/Lを作って正確に計算すると、
>貢献利益1,275万円×1.059−固定費825>万円=5,252,250円となり、752,250円の増加となります。
売上高が5.9%増加なのに、なぜ貢献利益に5.9%増加した計算をしているのでしょうか?
(売上が5.9%増加するだけで、変動費の金額は変わらないのではと思っております。)
よろしくお願いいたします。
売上(や何かしらの操業度)が変わると、それに比例して変化する費用のことを変動費といいます。
>売上が5.9%増加するだけで、変動費の金額は変わらないのではと思っております。
売上が5.9%増加したのに、金額が変わらない費用なら、それは固定費です。大事なところですから、テキストを確認してください。
直接原価計算やCVP分析などは、売上の変動に比例して貢献利益も変動することを前提として問題が作られています。
工業簿記や原価計算は、こういった暗黙の了解とされている事項を読み取れないと厳しいです。計算方法も大事ですが、その論点と前提となる事項も意識的に学習してみてください。
原価計算の問5の⑤について質問があります。
経営レバレッジ係数は、経営レバレッジ係数=貢献利益÷営業利益と表せ、
また、貢献利益の増加額=営業利益の増加額となるはずと考えて、
経営レバレッジ係数を、(当初の貢献利益+営業利益の増加額)÷(当初の営業利益+営業利益の増加額)として計算すると問題文に記載の2.83となるか(あるいは近似するか)を確認しようとしました。
(12,750,000円+751,365円)÷(4,500,000円+751,365円)として計算してみますと2.57102…となります。
営業利益の増加額を752,250円として、(12,750,000円+752,250円)÷(4,500,000円+752,250円)と計算してみますと2.57075…となります。
いずれの計算においても経営レバレッジ係数は、問題文に記載の2.83とは程遠いものとなってしまいます。
これはどういうことでしょうか。
この考え方の間違いをご指摘いただき、ご教示いただけますと幸いです。
>(12,750,000円+751,365円)÷(4,500,000円+751,365円)として計算してみますと2.57102…となります。
書かれている計算式は、売上高が5.9%増加して営業利益が16.697%増加したあとの、経レバですね。現行の経レバと異なって当然です。
今問題文を読みなおしました。 たしかに「予算編成段階での……は約2.83であり」とありますので、経営レバレッジ係数2.83は予算編成段階のものでした。 問題文をちゃんと読んでいませんでしたね。以後気を付けます。
お忙しい中、お返事ありがとうございました。
コメント失礼いたします。いつも記事をありがたく拝見しております。
原価計算の問5の⑤についてお伺いしたいのですが、
売上高が5.9%増加し、営業利益が751,365円増加したとしても目標売上高営業利益率14%は達成できていないように感じられ、どうも腑に落ちません。
売上高が5.9%増加すると37,500,000円×1.059=39,712,500円
増加を織り込んだ営業利益額は4,500,000円+751,365円=5,251,365円
5,251,365円/39,712,500円≒13.2%<14%
となり、14%未満であるから目標売上高営業利益率に達していないと思うのです。
当初の予算売上高37,500,000円との比であれば、5,251,365円/37,500,000円≒14%とはなりますが…。
売上高営業利益率の目標が14%なのではなく、営業利益額が予算売上高の37,500,000円の14%=5,250,000円を超えることを目標としているということなのでしょうか。
上記の計算結果と解答が整合していることからも、後者の条件が問題の前提になっているのだろうとは思いますが、目標売上高営業利益率とは基本的に後者のような計算を指すのでしょうか。
お忙しいところ恐れ入りますが、ご回答いただけますと幸いです。
何卒、よろしくお願いいたします。
なるほど、問題文の誘導どおりに解けば解けちゃうので、全然気にしていませんでしたが、言われて見ればそのとおりですね。
問題の不備ですね。問題文の誘導どおりに解いても、目標営業利益は達成できませんね。何やってんだか。
工原の試験委員は、この手のミスが多すぎて、もはや言うべき言葉が見つかりません。なんとか対応してもらいたいものです。1回や2回じゃないのですから。
税理士試験や会計士試験のように試験委員の名前を公表すべきですよね。名前が出れば自覚も出るんじゃないかと思うのです。
「HIT製作所」などとわざわざ問題文に書くくらいご自分のアイデンティティを顕示されたいのですから、そこまでされるなら正々堂々と名前を明かして数々の作問ミスや齟齬について釈明してもらいたいものです。現在は、不備があっても講評などで言及されることがありません。残念です。
早速のご回答ありがとうございます。お礼が遅くなりました。
私もpro-bokiさんのおっしゃるように、問題文の誘導に従い計算を行って解答欄自体は埋められたのですが、見直す際に疑念を抱き、ご質問させていただいた次第でした。
(指示文章を素直に(?)読み進めれば解答を作成できるので、引っ掛かりを覚える私の方ががひねくれているのかもしれませんね…。)
売上高営業利益率という指標に対する私の理解が誤っていないようで良かったと思うのと同時に、
問題の不備が一定頻度で発生しているということで、たとえ指示内容に疑念を抱いたとしても、あくまでその場の問題指示に従って解答を作成するというスタンスで試験に挑まなければならないなと感じました…。
ともあれ、ご回答いただきありがとうございました。