予算実績差異分析を理解できているか3分でわかるミニテスト

予算実績差異分析

さて、予算実績差異分析。ここは得意な人と苦手意識のある人にはっきり分かれる論点だ。

苦手意識のある人は、きっと登場する差異の種類の多さに圧倒されているのだろう。販売価格差異と販売数量差異くらいまでは何とか大丈夫だけれど、セールス・ミックス差異だの市場占拠率差異とかまでいくと、もう何が何だか分からない。とにかく計算方法を暗記だ!みたいな方向に進んでいるのかもしれない。

実は見落とされがちなのだけど、予算実績差異分析の問題を解くにあたっては「差異分析そのものよりも、どういう方式でP/Lが作られているのか、それを正しく把握しているか?」の方がはるかに大事だ。

そりゃそうだ、と思った人は、きっとこの論点を得意とする人だろう。何言っているかピンと来ない人は、是非、本記事で学習してほしい。

3分で解いて欲しいミニテスト(1)

では、簡単なミニテストをやってみよう。これ以上は無理というほどシンプルにしてみた。ちょっと意地悪な言い方をするなら、これで手間取るようだと、それこそ市場占拠率差異がどうとかやってる場合じゃないということだ。基礎からやりなおした方がいい。まずは自分の実力チェックに使ってほしい。

問題

  1. 当社は直接標準原価計算を採用している。資料にもとづき実績損益計算書を作成しなさい。
  2. 予算実績差異分析により以下の差異を計算しなさい。
    ①販売価格差異、②販売数量差異(貢献利益ベース)、③標準原価差異
  予算 実績
売上 50,000円 52,250円
売上原価 30,000円 34,000円
(実際発生額)
販売数量 500個 550個
  • 売上原価の内訳(材・労・経)や販売費は無視する。
  • 売上原価は全て変動費とする。固定費は考慮しない。
  • 期首、期末に製品、仕掛品ともに在庫はない。
  • 解答にあたり不利差異には△を付与すること。

答案用紙

問1

売上高 (    )円
標準変動売上原価 (    )円
標準貢献利益 (    )円
標準変動費差異 (    )円
実際貢献利益 (    )円

問2

販売価格差異 (    )円
販売数量差異 (    )円
標準原価差異 (    )円

解答

問1

売上高 52,250円
標準変動売上原価 33,000円
標準貢献利益 19,250円
標準変動費差異 △1,000円
実際貢献利益 18,250円

問2

販売価格差異 △2,750円
販売数量差異 2,000円
標準原価差異 △1,000円

解説

問1

最大のポイントは、標準変動売上原価の算定だ。本問は、標準原価計算を採用している。ということは、実際発生額がどうであれ、売上原価は、原価標準×実際販売量で計算される。

原価標準は、予算の売上原価30,000円÷販売数量500個=@60円と求められる。よって、実績損益計算書における売上原価は、原価標準@60円×実際販売量550個=33,000円だ。

間違えた人は、このあたりがあやふやなのではないだろうか。これ、簿記2級レベルの話でもある。差異分析以前の問題として、標準原価計算を採用している損益計算書がどのようなものかを確認してほしい。

問2

本問における販売価格差異は、販売価格を下げたことで、どれほど不利になったのかを意味している。そして価格系の差異(率の差異)は、常に、標準単価×実際量と実際額の差額で計算する。これは予算実績差異分析に限らずどのシーンでも使える式なので覚えておいてほしい。よって、販売価格差異は次の式で計算できる。

販売価格差異:52,250円−@100×550個=△2,750円

本問における販売数量差異は、販売数量が増加したことで、どれほど有利になったのかを意味している。そして数量系の差異は、常に、標準単価×(予定量−実際量)で計算できる。これも予算実績差異分析に限らずどのシーンでも使える式なので覚えておいてほしい。よって、販売数量差異は次の式で計算できる。

販売数量差異:@40円×(550個−500個)=2,000円

ここで、注意が必要なのは、販売数量差異には、売上高に基づく差異と貢献利益に基づく差異があるという点だ。本問は、貢献利益ベースであると問題文に明記されているので単位あたり貢献利益である@40円にもとづいて計算している。売上高と貢献利益のどちらに基づく差異も販売数量差異と呼ばれるので、問題文がどちらを指しているのかを必ず確認しないといけない。

なお、もし販売数量差異が売上高に基づく差異を指しているのなら、同時に売上原価の数量差異も算定すべきだ。そうしないと辻褄が合わなくなる。つまり、本問の場合だと、次のようになる。

販売数量差異:@100円×(550個−500個)=5,000円
売上原価数量差異:△@60円×(550個−500個)=△3,000円

これは、販売数量が増加したことで、売上高が5,000円伸びたけれど、当然、その分、原価も多く掛かるわけで、それが3,000円余計に掛かった、ということを示している。よって、販売数量の増加に伴う正味の利益の増分は2,000円だ。

最後の標準原価差異は、上記2つの差異とはそもそも次元の異なるものであることを意識してほしい。上記2つの差異(販売数量差異と販売価格差異)は、損益計算書における差異だ。一方で、最後の標準原価差異は、標準原価計算における原価差異だ。この点を、しっかり理解してほしい。

本問における標準原価は、原価標準@60円のものを550個製造したわけだから、33,000円だ。しかし、実際には34,000円もコストが掛かっているのだから、標準原価差異は△1,000円だ。

なお、この標準原価差異は、実績損益計算書を作成するうえで(本問は直接標準原価計算なので)標準変動費差異として計上され、これによって標準貢献利益から実際貢献利益を導いている。

3分で解いて欲しいミニテスト(2)

さて、先程の問題は、出来ただろうか。出来なかったり、出来たとしても、ん?としばらく悩んでしまったなら、基礎から勉強しなおしてほしい。この論点は、上っ面のテクニックを覚えるより、基礎からやり直した方が結果的に早く修得できる。テキストのボックス図(なんかコの字みたいなやつ)に翻弄さている場合ではない。

では、もう少しだけ難しい問題を考えてみてほしい。先程の問題の続きだ。

問題

さきの問題は、期首、期末の製品、仕掛品ともに在庫が無いという前提であったが、もし、期末の製品在庫が20個であるとしたら、どこに影響が及ぶだろうか。実績損益計算書?販売数量差異?販売価格差異?標準原価差異?それとも、どこにも影響は及ばない?

なお、その他の条件は一切変更が無いものとする。

解答

標準原価差異が、△1,000円から+200円になる。そのほかには一切の影響がない。

解説

販売単価も販売数量が変わらないのだから、損益計算書には一切の影響は及ぼない。となれば、販売価格差異にも販売数量差異にも影響は及ばない。まず、この点を確認してほしい。

一方で、550個販売したにも関わらずまだ20個の製品が余っているということは、570個製造したということが判明する。@60円のものを570個製造したなら、本来、@60円×570個=34,200円掛かってもいいはずだ。(これが標準原価)しかし、実際原価は34,000円だった。なので、標準原価差異は200円の有利差異である。

最後に

繰り返しになるが、ここで紹介した問題は、これ以上ないほどシンプルな問題だ。しかし、だからと言って舐めてはいけない。本問には予算実績差異分析における大事な要素がしっかり詰まっている。

まず、予算管理に標準原価計算を用いるメリットを理解してほしい。標準原価計算を採用すれば、実際にどれだけ製造して、どれだけのコストが掛かったのかを集計しなくても実績損益計算書を作ることが出来る。そして、それによって販売数量差異と販売価格差異を把握することができるのだ。

これは、原価計算基準40「標準原価算定の目的(四)」の「標準原価は、これを勘定組織の中に組み入れることによって、記帳を簡略化し、じん速化する」という記述とも整合する。このように理論とセットで学習すると効果的だ。

そして、もう1点大事な要素として、標準原価計算を用いることで販売活動と製造活動の良否を明確に区分して把握出来るという点があげられる。

つまり、標準原価計算にもとづく損益計算書で把握した販売数量差異と販売価格差異は、すべて販売活動の良否を表しており、標準原価差異は、すべて製造活動の良否を表しているのだ。

本問は、問題文に与えられている情報が原価の実際発生額しかないため、これ以上詳細な分析はできないが、もし、原価標準である@60の内訳(標準的にはいくらの材料を何kg使い、賃率いくらで何時間働くかなど)が示され、実際材料消費量や実際作業時間が示されれば、より詳細に標準原価差異を分析できるわけだ。本試験で出題されるなら、そこまで問われるはずだ。

いずれにしても、日商簿記1級でもっともよく出題される標準原価計算の予算実績差異分析はこのパターンがベースとなっている。実際の試験はもっと複雑だが、やっていることは、本問に対して要素を増やしているだけだ。このパターンが腹落ちすれば、どのような予算実績差異分析の問題も容易に解けるはずだ。


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予算実績差異分析を理解できているか3分でわかるミニテスト” に対して12件のコメントがあります。

  1. 高校生 より:

    いつも、お世話になっております。このサイトに出逢ってから簿記の勉強がさらに楽しくなりました。本当に感謝しています。
    一つ質問なのですが、この問題の問1の解説で販売数量差異、販売価格差異は損益計算書における差異で、原価差異は損益計算書に関係ない差異と書いてあるのですが、標準原価計算のP/Lで標準原価売上総利益を計算してから、原価差異を足し引きして実際の売上総利益を出しますよね?これは予算損益計算書や実績損益計算書でも同じだと思います。ならば損益計算書には関係ある差異なのでは?と思いました。また、販売数量差異と販売価格差異は営業利益差異分析表などに使用されたのは見た事あるのですが、あくまで差異分析であり損益計算書には関係ないのでは?と思ったのですが、ここでの解説の損益計算書とは一体なにを指しているのでしょうか?この質問自体、物凄く的外れなことを書いているのかもしれませんが、教えて頂ければ幸いです。

    1. pro-boki より:

      >原価差異は損益計算書に関係ない差異と書いてあるのですが、<中略>損益計算書には関係ある差異なのでは?と思いました。

      標準原価差異は、当月の製造が完了した時点で差異は確定していますよね。つまり、PLとは関係なく算定できます。
      一方で、販売数量差異と販売価格差異は、実際に販売してその上で、損益計算書を作成して初めて算定可能な差異です。

      この点で原価差異と販売数量差異・販売価格差異は、本質的に意味合いの異なる差異ですよ、という論旨です。

      「標準原価差異は、最終的にPLに計上されるじゃないか、だから損益計算書とは関係あるじゃないか」と言うことですね。うーん、まあそれはそのとおりなのですが・・・。本記事の主旨はそこには無いことをご理解ください。

      >販売数量差異と販売価格差異は営業利益差異分析表などに使用されたのは見た事あるのですが、あくまで差異分析であり損益計算書には関係ないのでは?

      うーん、うまく説明出来ないです。ごめんなさい。
      予算実績差異分析って、予算損益計算書と実績損益計算書を比較しているってことは分かっていますか?よって「損益計算書に関係ない」ということはないと思いますよ。

    2. 高校生 より:

      返答ありがとうございます。このメールを送信したあとに、やってしまった…としか思ってなかったのですが、親切にありがとうございます。いわば、予算実績差異分析は昨年に予算をつくり、なおかつ標準原価計算を用いる事により、予算管理もできて標準単価を用いて実績損益計算書を作ることを可能にして、それにより販売価格差異や数量差異が把握できるに対して、標準原価差異はそんなものは関係なく標準原価計算を設定すれば自然と出てくる差異であり、差異の認識の仕方が全く違うということであり、それとまた、販売数量差異から派生して企業を取り巻く環境による影響と企業の努力による成果を明確に分けるものがマーケットシェア分析であり、その製品というなかに同種製品がある場合にセールスミックス分析を行う。みたいなのが予算実績差異分析の一連の問題(やり方)みたいなものなのでしょうか?

  2. 社会人 より:

    ミニテスト解説を読めば中身は理解はできますが、「ミニ講義・標準原価計算(時短テクニック)」で説明されている通りに考えますと、

    予 @100円 × 500個 = 50,000円  …(1)
    (       ↘     ↗= 55,000円) …(2)
    実 @95円  × 550個 = 52,250円  …(3)

    数量差異は貢献利益ベースとあるので、すんなりいかないとしても、価格差異は(2)ー(3)=2,750円(有利差異)になるのではないでしょうか?

    1. pro-boki より:

      時短テクを原価の分析に使うなら、(2)−(3)の符号のままでOKです。つまり、55,000−52,250=2,750で符号はプラスだから有利差異ということですね。

      しかし、本問は売上という収益の分析に使っているので、符号を逆転させる必要があります。つまり、本問の場合は、不利差異です。

      これ、予算よりも実績の方が少ないわけですよね。分析対象が費用なら節約出来ているってことですから有利差異ですけど、収益なら売上がかんばしくなかったわけですから、不利差異ですよね。

      式にあてはめるだけではなくて、差異が有利か不利かは、得をしているか、損をしているか、で判断する必要があります。

    2. 社会人 より:

      回答ありがとうございました。
      そうか、数字をどっち側(お金を使う/お金を受け取る)から見るか、ということですね。これも言われれば当たり前ですが、合点がいきました。こういう問われ方の違いに本番で気づくのは、機械的にこなしているだけでは難しいですね。

  3. pro-boki より:

    原価差異は売上原価に賦課すべし(原価計算基準47)ということですか?、それは財務諸表作成目的の(全部原価計算が前提の)規定です。本問は直接原価計算ですから該当しません。

    原価計算基準は、基準2で「この基準において原価計算とは、制度としての原価計算をいう。原価計算制度は財務諸表の作成…<中略>」と表明しています。ざっくり言えば外部公表用の財務諸表を作るための規定ってことです。(そのほか原価管理や予算目的もありますが)

    つまり、内部の経営管理用に作成する直接原価計算のPLについては規定がなく、フォーマットは自由です。(なお、基準が直接原価計算について全く触れていないわけではありません。基準30には、直接原価計算を使ってもいいけど、期末にFS作るときは、ちゃんと全部原価計算にしてねと書かれています。)

    ちなみに、日商簿記1級の過去問によれば、直接標準原価計算のPLは、以下のフォーマットが示されています。

    売上高
    標準変動費(標準変動売上原価)
    標準貢献利益
    標準変動費差異
    実際貢献利益
    固定費
    営業利益

    いったん標準貢献利益を算定し、これに原価差異を加減して、実際貢献利益とするフォーマットです。売上原価に差異を賦課しません。本問は、この日商簿記の過去問のフォーマットに従っています。(このフォーマットの1行目から3行目までを問にしています)

  4. CHOMEI より:

    唐突な質問で申し訳ありません。
    問2 の解説の第2段落の第2文にある、
    「数量系の差異は、常に、標準単価×(予定量−実際量)で計算できる。」
    の数式は、
    標準単価×(実際量-予定量)が、より正確な気がしますが、いかがでしょうか。

    1. pro-boki より:

      収益系の差異分析ですから、厳密には、そうですね。

      ただ、数量差異は、原則「標準単価×(予定量−実際量)」で覚えることを強くおすすめします。棚卸減耗損とか標準原価計算の数量差異(材料消費量差異とか作業時間差異とか能率差異など)など、基本、会計の差異分析は費用を分析しているからです。

      ただし、予算実績差異分析に限っては、収益とか利益系の差異が出ますよね。そのときだけは符号が逆になる、と覚えると良いです。

      というか、そこ、機械的にやると間違えやすいです。「これって得?いや、損か?どっちだ?」って感じで毎回、気持ち込めるとケアレスミス防げるのでお勧めです。

  5. CHOMEI より:

    ありがとうございます。
    確かに棚卸減耗損などの方がよく問われますね。
    納得しました。

    また、ケアレスミス防止に、毎回気持ちを込めるというのは是非実践したいと思います。

    ありがとうございました。

  6. pro-boki より:

    実績表って実績損益計算書のことですか?だとするとそうとは限りません。例えば実際原価計算だとしても予定価格を使っていれば材料消費価格差異が生じますし、製造間接費を予定配賦していれば製造間接費配賦差異が売上原価に賦課されます。

    ちょっと心配なんですが、前提知識が弱いまま予実のチャプターに入っちゃって、もうわけわからんからパターンで暗記するしかねぇって感じになってません?違ってたら申し訳ないのですが。ここ暗記に走ると結構辛い論点ですから、基礎から積み重ねたほうが結果的に早いですよ。

  7. 簿記1級勉強中 より:

    プロ簿記様:
    うーん、勉強になりました。
    このような記事を公開していただいて、
    ほんとうに感謝いたします。
    他の記事も見て勉強させていただきます。

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