第197回全経上級・解説【工業簿記】

第197回・全経上級・解答解説

全経上級の解説リクエストが多かったので記事にしました。

まずは、もっともリクエストの多かった工簿からです。以降、原計、商簿、会計学の順に解説していく予定です。不明点や質問がありましたらご遠慮無くどうぞ。

工業簿記の概要

第1問目は、工程別総合原価計算でした。

良問です。講義で使わせて頂きたいくらいです。問題そのものの質は良いと思います。

一方、検定試験という点では、実力測定に向かない問題でした。真っ当な採点なら(極端な傾斜を掛けない配点なら)受験生の平均点は、かなり低くなることでしょう。結果、半分以上は没問題になると思います。せっかくの良問なのにもったいない。

このように書くと、よほど難しい問題だったのかと思われそうですが、そうではありません。

読み取りがしにくい、資料がバラけている、細かいケアレスミスを誘われやすい、ボリュームの割に時間が足りない、といった理由で得点しにくいのです。本質的な難しさではありません。

結果、受験生の平均点は大きく下がることとなり、最初の数問(5問目くらいまで)に大きな傾斜配点が掛けられるものと予想されます。逆に言えば、そこだけ落とさなければ、後はさほど大きな影響はないことでしょう。

各社スクールの解答速報の採点で仮に40点を下回るような点数でも、蓋を開けてみれば高得点ということも十分ありえると思います。

第2問目は、原価計算基準からの出題でした。

基準からの抜粋部分は、本来は一字一句一致していないとバツにされそうなもんですが、そうするとこちらも出来が悪そうです。会計士受験生でもない限り、普段から原価計算基準なんて読み込んでいないでしょうから。その点であまり差がつかなそうな感じです。

第1問 工程別総合原価計算

問1 A工程の正常仕損費、月末仕掛品原価、完成品原価

基本中の基本ですが、何しろ問題文が読みにくく、細かい注意が必要なので意外と解きにくいのかもしれません。しかし、ここで失点すると致命傷になりそうです。

A工程生産データの作成

月初
(材)300
(加)210
完成
1,000

当月投入
(材)1,200(@486円)
(加)1,080(@645円)
正常仕損(50%発生)
(材)100
(加)50
月末
(材)400
(加)240

材料費単価:583,200円÷1,200=@486円
加工費単価:696,600円÷1,080=@645円

A工程の仕掛品勘定の計算

正常仕損が50%の地点で発生しており、月末仕掛品の加工進捗度が60%なので、正常仕損費は完成品と月末仕掛品の両者負担です。非度外視法、定点発生、両者負担、原価配分方法は先入先出法なので、正常仕損費は、当月投入からの完成品物量700と月末仕掛品の物量400で按分計算をします。

テキストの基本問題として載ってそうな問題ですが、意外とケアレスミスしやすい問題でもあります。

正常仕損費

仕損品原価:@486円×100+@645円×50=80,850円
仕損品評価額:@110円×100=11,000円
正常仕損費:80,850円−11,000円=69,850円

正常仕損費配賦前の月末仕掛品原価と完成品原価

月末仕掛品原価:@486円×400+@645円×240=349,200円
完成品原価(貸借差額より):135,000円+134,400円+583,200円+696,600円−349,200円−80,850円=1,119,150円

正常仕損費配賦額

月末仕掛品への配賦額:69,850円÷(完成1,000−月初300+月末400)×月末400=25,400円
完成品への配賦額:69,850円−25,400円=44,450円

正常仕損費配賦後の月末仕掛品原価と完成品原価

月末仕掛品原価:349,200円+25,400円=374,600円
完成品原価:1,119,150円+44,450円=1,163,600円

ここやってしまいそうなケアレスミスとしては、仕損品評価額の算定を忘れる、先入先出法であることを忘れて、正常仕損費の按分計算を1,000:400でやってしまうといったところでしょうか。まあ、その場合、数値が割り切れないのでおかしいと気付きそうな気もしますが、全経は端数だらけ問題もよく出ますので、そういうもんかなと突き進んでしまった方も少なくないように思えます。

問2 作業屑の仕訳

これも基本中の基本ですが、意外と盲点になるところで良問だと思います。原価計算基準28からの出題です。

原価計算基準28には「原則、副産物は主産物の総合原価(完成品原価)から控除する」と書かれています。しかし、例外的に「軽微な副産物は、前項の手続によらないで、これを売却して得た収入を、原価計算外の収益とすることができる」とも書かれています。

このパラグラフを知っている方は結構多いと思うのですが、では、具体的にどのように計算処理するのか、というと案外出来ないものなのです。その間隙をついた良問です。

これは、具体的には、その原価を算定することもしなくていいし、評価額を測定する必要もないですよってことです。ぶっちゃけて言えば何もしなくていい、つまり完全に度外視してねってことです。存在そのものを度外視します。しかし、現実に軽微とは言え目の前に作業屑があるわけです。これ、売れたらどうするの?と。そのときだけ、雑収入や雑益で処理すればいいよということです。

ちなみに「本問は、作業屑の処理であって副産物じゃないんだけど」という方もいるかもしれません。これについては、原価計算基準28の最後にかかれています。「作業くず、仕損品等の処理および評価は、副産物に準ずる」のです。要するに、副産物も作業屑も(評価額のある)仕損品も全部、計算処理は同じなんです。軽微かどうかが問題なのです。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現金 800 雑収入 800

 

問3 B工程の月末仕掛品原価、完成品原価

仕損がないので問1よりも簡単です。ここを落とすと致命傷になりそうです。ここ、かなり多めの配点になるはずです。

B工程生産データの作成

月初
(材)100
(加)60
完成
690

当月投入
(材)850(@648円)
(加)760(@710円)
月末
(材)260
(加)130

材料費単価:550,800円÷850=@648円
加工費単価:539,600円÷760=@710円

月末仕掛品原価

@648円×260+@710円×130=260,780円

完成品原価

65,580円+43,200円+550,800円+539,600円−260,780円=938,400円

問4 工程完成品の振替のための仕訳

これは、引っかかりそうです。問題をよく読めってことなんですけど。

またA工程およびB工程のC工程への振替原価は正常原価(A工程完了品単位当たり正常原価1,150円、B工程完了品単位当たり正常原価1,350円)を利用している。なお,半製品についても正常原価で振り替えている。

これを読み落とすとおしまいですね。要するに、問1で解いた完成品原価は関係ないってことです。@1,150円で1,000単位を振り替えろと、それだけです。よって、以下の仕訳です。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
仕掛品-C工程 1,150,000 仕掛品-A工程 1,150,000

@1,150×1,000=1,150,000円

正常原価で振り替えるっていうのを、いったんは読んだけど、問1から問3を解いているうちに、頭から抜けてしまって、問1で計算したA工程の実際の完成品原価を使ってしまったという人もいそうですよね。

問5 C工程の当月製造費用の算定

C工程の生産データを作成します。以下、前工程費の物量を(前)として表示します。これはB工程完了品の物量を表すとともに、これを2倍にした数量がA工程完了品の物量です。(C製品1単位にはA工程完了品が2単位必要なため)

C工程生産データの作成

月初
(前)100
(加)20
完成
480

当月投入
(前)500
(加)520
月末
(前)120
(加)60

 

こちらも極めて簡単な問題ですが、問4と同じく引っ掛かりやすいです。「正常原価で振り替える」この1点を覚えていたかどうかですね。問3でB工程完成品原価を計算しているため、これを使いたくなるのです。

正解は、①のB工程費が、@1,350×500=675,000円です。

また、②の加工費も予定配賦です。これ、ちょうどページをまたいでいて極めて読み取りにくいです。あと数行、下に送るとかもう少し配慮出来なかったもんですかね。

予定配賦率:(231,000円+220,000円)÷1,100時間=@410円
予定配賦額:@410円×1,040時間=426,400円

問6 A工程とB工程の振替差異

ここまできて「振替差異?はて、何のこと・・・あ!・・・ぎゃ!」となった人もいたことでしょう。そうか、実際原価ではなくて正常原価で振り替えるのかと。じゃあ、問4と問5は計算しなおしじゃないかと。

で、冷静に計算しなおせば、大したことはないんですけど、ただでさえ緊張する本試験で、致命的なミス(いや実際には全然、致命的ではないのですが)をしたと一瞬でも思うとパニックになるのですよね。いかに落ち着けたかですね。

A工程完了品の振替差異

(問4)振替額1,150,000−(問1)実際額1,163,600=△13,600円

B工程完了品の振替差異

振替額@1,350円×690−(問3)実際額938,400=△6,900円

ちなみにB工程完了品の振替差異は、C工程に投入する量だけに注目して、次のように計算した人もいたことでしょう。

振替額@1,350円×500−(問3)実際額938,400÷690×500=△5,000円

問題文には「半製品についても正常原価で振り替えている」と書かれています。ここまで落ち着いてきちんと読めていたかですよね。

なお「工程間の原価振替を正常原価によって振り替えるのはなぜか」が問われています。これは、実際原価で振り替えてしまうと、前工程の不能率が次工程に振り替えられてしまい、原価管理が適切に行えないからです。

もし、さっぱり分からなくても、まあ、だいたいこういうのは、原価管理が行えるとか、責任会計が果たせるとか、記帳の簡略化と迅速化を図れる、あたりを書いておけば部分点もらえるものです。そういう機転が利いたかどうかも大事でした。

問7 C工程の月末仕掛品原価、完成品原価

C工程生産データの作成

月初
(前)100
(加)20
完成
480

当月投入
(前)500(@3,650円)
(加)520(@820円)
月末
(前)120
(加)60

前工程費:(1,150,000+675,000)÷500=@3,650円
加工費:(問5)426,400÷520=@820円

月末仕掛品原価

@3,650円×120+@820円×60=487,200円

完成品原価

115,000円+135,000円+16,300円+1,150,000円+675,000円+426,400円−487,200円=2,030,500円

問8 C工程の加工費配賦差異

加工費配賦差異:@410円×1,040時間−242,600円−218,000円=△34,200円

変動費予定配賦率:231,000円÷1,100時間=@210円
固定費予定配賦率:220,000円÷1,100時間=@200円
変動費予算差異:@210円×1,040時間−242,600円=△24,200円
固定費予算差異:220,000円−218,000円=2,000円
操業度差異:@200円×(実際1,040時間−基準1,100時間)=△12,000円

問9 月末半製品原価および月末製品原価

半製品
月初 50 販売 130
当月 190 月末 110

月末半製品原価:@1,350円×110単位=148,500円
半製品売上原価:67,500+@1,350円×190単位−148,500円=175,500円

製品
月初 120 販売 520
当月 480 月末 80

月末製品原価:(問7)2,030,500円÷480×80=338,417円
製品売上原価:518,400円+(問7)2,030,500円−338,417円=2,210,483円

問10 営業利益

製品売上 @9,800円 520単位 5,096,000円
半製品売上 @2,100円 130単位 273,000円
製品売上原価     2,210,483円
半製品売上原価     175,500円
原価差異 A,B工程加工費配賦差異   12,300円
  C工程加工費配賦差異   △34,200円
  A工程振替差異   △13,600円
  B工程振替差異   △6,900円
売上総利益     2,940,617円
販管費     2,380,000円
営業利益     560,617円

第2問 原価計算基準

  • A 貨幣価値的
  • B 販売費及び一般管理費
  • C 非原価項目
  • D 経営目的
  • E 異常な状態
  • F 財務費用
  • G 異常な仕損

AとBは、原価計算基準第3項の原価の本質より。C以降は原価計算基準第5項の非原価項目より。

第197回全経上級・解説【工業簿記】” に対して2件のコメントがあります。

  1. fukku より:

    ご無沙汰しています。

    先生の解説が読めてとても嬉しく思います。
    試験会場で問題を見たときに、「工程が3つもあって、資料も多くてめんどくさそう」
    というのが直感でした。
    ただ蓋をあけてみると、序盤こそ連鎖する箇所もありますが
    後半は予定単価で考える問題も多く、仮に工程完成品の実際原価を途中で間違えてても
    カバーできる安心設計だなあと思って解いてました。
    (日商だったら全滅とか平気でありそうですから・・・)

    また、問8も一瞬時間がかかりそうな感じでしたが
    これまでの工程計算が全く関係なく
    シュラッター図も要らないほど拍子抜けな問題でした。
    最後の営業利益は、最小二乗法さんとの兼ね合いで
    時間が足りず解けなかったです。無念。

    次も楽しみにしています。

    1. pro-boki より:

      正しい解き方をされていますよね。

      私も同じ感想をいだきました。
      「あ、これ、最初でやらかすと終わるやつだ」と。

      しかし、問1で失敗しても、多くの問が独立しているんですよね。
      この連鎖しないような構造で作問されているというのは、良い配慮だったと思います。

      ただ、それは全体を見渡す余裕がある方が分かることであって、ただでさえ緊張する本試験で時間の無い中だと、多くの受験生はそこまで気付けなかったと思います。

      そのような中、きちんと全体を見渡して、特に問8でしっかり得点できていることは素晴らしいと思います。

      今回の工原は、最後の営業利益と最小二乗法には、あまり配点は来ないでしょう。
      傾斜配点が掛かると思われますので、上記2つの論点を出来た方はほとんどいないでしょうから、結果、埋没に近い扱いになると思います。

      fukkuさん、かなり良い結果が出るのではないでしょうか。

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