総合原価計算を超基礎から学びなおそう1

総合原価計算の超基礎講座1

総合原価計算の基礎を学びなおすための連載記事スタートです。基礎といっても1級の基礎ではありません。2級の基礎です。いやもっと手前のはじめの一歩です。

1級だけではなく、2級を勉強中の方もぜひご覧になってください。

なぜ、この記事を書こうと思ったのか

工簿は合格者でもちゃんと理解できていない

なぜ、この記事を書こうと思ったのか。

それは、最近プロ簿記に入会された方とメッセージのやりとりをしていて、工業簿記の理解力に不安を覚えたからです。プロ簿記は2級合格を入会条件としています。ですから、少なくとも2級の本試験レベルの問題はクリアされているはずです。

しかし。

質問のレベルや確認テストの点数を見るに「これは、そもそも2級の基礎が出来ていないのではないか」と思わざるを得ない方が少なくありません。

特に総合原価計算を苦手にしている方が多い印象です。通り一遍の計算は出来るけど、実は何をしているのか分かっていない、そういう感じがします。

これはまずいと思いました。1級の工簿を勉強するうえで、2級の理解は必須です。基礎が出来ていない状態で1級の講義を受講し続けていても、いずれ破綻してしまいます。それではいけません。

日商簿記2級の工業簿記

あらためて、2級の工簿のテキストを引っ張り出してカリキュラムを見てみました。

最初は費目別計算です。次に製造間接費会計、続いて個別原価計算、総合原価計算と続きます。そのあと、標準原価計算、直接原価計算、CVPで終了です。

いやいや。ちょっと待って。

いきなり、費目別計算ですよ。買入部品は直接材料で、消耗工具器具備品は間接材料とかいうやつです。まあ、分類するのはいいとして、そもそも何のために分類しているの?という根本的な説明が載っていません。となると、意味も分からず覚えざるを得ないですよね。

続いて、製造間接費会計です。シュラッター図が登場しました。操業度差異と予算差異の算定をしています。そもそも操業度差異って何でしょうか。その意味は詳しくは書かれていません。訳わからん図を使って計算方法だけは覚えましょうという感じです。うーん、厳しい。

さらに製品原価の算定方法は、個別原価計算と総合原価計算の2つがあると学びます。そもそもなぜ2つもあるのだろう。どっちを使うかは企業の自由なの?それとも何かルールがあるの?それすら分かりません。

こんな感じで、分からないことが分からない。前提が分からないから質問も出来ない。ああ、これじゃあ独学してきた人は厳しいよなと思ったわけです。

2級の工簿は相対的に軽く見られている

日商簿記2級の工簿の問題は出題パターンが決まっています。意味は分からなくても、解き方を覚えればなんとかなってしまうのです。個別原価計算なら仕訳、総合原価計算ならボックス図による解法を覚えてしまえば問題は解けます。その点で、受かっているからと言って、理解できているとは限らないのです。

また、最近の2級は商簿がかなり難しくなっています。連結会計、リース会計、外貨換算、税効果会計など、従来の1級論点がてんこ盛りです。

直近の試験(2021年2月28日開催157回試験)では、合格率が1桁だそうです。そこまで難易度ブレブレって、さすがに検定試験としてどうなのよというレベルです。

ちょっと話が逸れました。

要するに今の2級のトレンドは、商簿の負担が過大すぎて、相対的に工簿が手薄になっていると思われるのです。スクールによっては、工簿なんて暗記すれば高得点取れるし、さっさと終わらせようとアドバイスしているところすらあります。

それは、さすがに本末転倒だよねと思うわけです。2級合格という点だけにフォーカスするなら最適戦略かもしれません。でも、合格後、企業に就職して「あのひと、2級合格って話で工場経理任せたけど使い物にならんよね」なんていう印象になるんじゃないかと余計な心配をしてしまうのです。

ということで、前置きが長くなりましたが、最近、2級合格後にプロ簿記に入会された方の工簿の力にちょっと不安を覚えたことが、この記事を執筆しようと思った理由です。

今回は特に総合原価計算にフォーカスして基礎の基礎からの記事を書くことにします。

そもそも製品原価計算って必要なのか

製品が1個なら製品原価計算は必要ない

そもそもですよ。

2級の工業簿記を勉強すると、いきなり個別原価計算だの総合原価計算だのが登場しますけど、それって複数の製品を作っているから必要だってこと分かってます?

だって、1個しか製品を作らないなら、掛かった費用をぜーんぶ足せばいいんですよ。それが製品原価です。

2級の工業簿記では、最初に費目別計算を学びます。費用を材料費・労務費・経費に分けて、それを直接費と間接費に分けて、さらに製造間接費は予定配賦して、差異をどうちゃらこうちゃららららのら、みたいな計算を学びます。

でもですね。1つしか製品作らない会社はそんな処理、一切必要ないんですね。全部足せばいい。製品原価計算なんていらないんですよ。

まず、ここまでが前提。

製品が2個つ以上なら?

では、もし2つ作っていたらどうなるか。ん?そんなもん、掛かった費用を2で割ればいいんですよ。ただし、条件があります。それは同じ製品を2つ作った場合に限るということです。

もし、種類の異なる製品を作ってたら、単純に2で割ればいいってわけにいかないですよね。それぞれに掛かった費用を集計しないといけません。

また、同じ製品を2個作っているとしても、片方は完成していて、もう片方は作りかけだったら、掛かった費用を2で割ればいいってわけにいきません。

とうことで、そういう場合は、ちょっと計算を工夫しようってことになるわけです。これが製品原価計算の根底にある考え方です。

在庫が無いなら製品原価計算は必要ない

さらにです。

複数の異なる種類の製品を作っているとしてもです。毎年、その年に作ったものは全部売り切る、在庫は残さない、というのならこれまた別に製品原価計算とかいらないんですよ。

1年間に掛かったお金(製造費用)を全部足せばそれが売上原価です。売上から引けば、売上総利益が出ます。これで財務諸表作れました。良かったねと。

ということは、ですよ。

製品原価計算が必要な会社っていうのは、まず在庫があることが前提です。その上で複数種類の製品を作っているとか、単一種類の製品を作っている場合でも作りかけがあるとか、そういった様々な状況にあわせて、計算方法を分けようよという話をしているのです。

こういった前提をすっ飛ばして、いきなり費目別計算は〜とか製造間接費の差異分析でシュラッター図は〜とかやるから、訳わからなくなるんです。

製品原価計算の種類

個別原価計算と総合原価計算

ということで、製品原価計算を行うにあたっては、種類の異なる製品を作っているのか、同じ種類の製品を作っているのかが大事です。それぞれに適した計算方法があります。

種類の異なる製品なら、それぞれの製品に掛かった費用を集計する必要があるよねってことです。同じ製品なら掛かった費用を製品の個数で割ればいいわけです。

で、前者を個別原価計算、後者を総合原価計算っていうのです。

個別原価計算の考え方

たとえば、お団子やさんで、みたらし団子とあんこの団子を作っているとします。

みたらし団子を100本、あんこの団子を200本作りました。みたらし団子は全部売れたのですが、あんこの団子は20本売れ残りました。
費用は、材料費やら水道光熱費やら労務費など色々全部で1.5万円掛かりました。売上原価と在庫(あんこの団子20本)金額はいくらでしょうか?

ここで、個別原価計算なら、みたらし団子にはどの材料をどれくらい使って、あんこの団子にはどの材料をどれくらい使ったのかを記録しておく必要があります。また労務費を計算するために、どちらの団子のために誰が何時間作業したのかとか、経費はどうかなどを測定しておく必要があります。つまり費用をお団子に紐付ける作業が必要なのです。

もちろん、電気代みたいに現実的に紐付けるのが難しい費用もあります。そういったものは、いったん製造間接費というところに入れておいて、何かの基準(作った本数とか、作業した時間とか)で按分するんです。そうして、みたらし団子100本とあんこの団子200本、それぞれの原価を求めるんです。

これが個別原価計算です。超めんどくさいですよね。でも、正確に計算できます。

総合原価計算の考え方

一方で、総合原価計算は、細かいことはおいておいて、みたらし団子とあんこの団子ってほとんど原価同じなんでしょ。じゃあ、もう同じものとして考えて、掛かった費用を作った合計本数で割ればいいじゃないという計算です。

つまり300本作って1.5万円掛かったなら、1.5万円÷300本=50円ってことで1本50円でいいんじゃないの?ということです。280本売れたのだから、売上原価は@50円×280本=14,000円、在庫は@50円×20本=1,000円だね、という計算です。超簡単。これが総合原価計算ですね。

まあ、みたらし団子とあんこの団子の原価が極めて近いなら、それでもいい感じしますよね。

組別総合原価計算と等級別総合原価計算

でも、実際は、みたらし団子よりあんこの団子の方がちょっとだけ高いとします。じゃあ、総合原価計算をベースにちょっと工夫して計算しようってことになるんです。

それが、組別総合原価計算だったり等級別だったりするわけですよ。費用の按分比率をちょっと変えたりするんですね。

企業はどの計算方法を採用してもいい

で、ですね。別にこのお団子屋さんは、どの計算方法を採用しても構わないんです。

計算に手間が掛かってもいいから厳密に計算したいなら、個別原価計算を採用すればいいし、多少の誤差があってもまあ楽な方がいいやっていうなら、単純総合原価計算を採用すればいいんです。

そこそこ正確にかつそこそこ楽にっていうなら、組別総合原価計算が向いていますね。

ということで、ここまでが、2級工業簿記を学び始める前に知っておいて欲しい超基礎です。
総合原価計算の具体的計算方法がどうのこうのって学ぶのは、この前提を知ってからにしましょう。

総合原価計算の問題演習

ここからは、具体的な問題を解きながら総合原価計算の基礎を学んでいきましょう。

問題1

当社は家具屋で、当月、椅子を300脚作りました。1ヶ月で掛かった費用は、材料費や労務費や経費などもろもろで、180万円です。椅子の製品原価(単位あたり原価)はいくらでしょうか。なお、月初、月末ともに作りかけの椅子はありません。

解答

180万円÷300脚=6,000円/脚

これだって、立派は総合原価計算です。では、作りかけがあるケースはどうなるのでしょう。

問題2

当社では、当月、椅子を200脚完成させました。1ヶ月で掛かった費用は、材料費や労務費や経費などもろもろで、150万円です。椅子の製品原価(単位あたり原価)はいくらでしょうか。なお、月初に作りかけの椅子はなかったのですが、月末には完成品とは別に100脚の作りかけの椅子があります。

解答

150万円÷(200脚+100脚)=5,000円/脚 でいいのでしょうか?

まあ、いいような気もしますが、でも、この計算結果によれば、完成した200脚と作りかけの100脚の原価がともに5,000円ってことになりますよね。

それはおかしいですよね。完成品の方が作りかけよりコストが掛かっているはずです。

ちなみに、簿記の世界では作りかけの製品を仕掛品といいますので、これからは仕掛品と書きます。

じゃあ、仕掛品は、ちょうど半分くらいまで作られていたとしましょう。さて、この場合、完成した椅子の単位原価はいくらでしょうか。

完成品:150万円÷(200脚+100脚×0.5)=6,000円/脚
仕掛品:6,000円/脚÷2=3,000円/脚

これでどうでしょう?正しいのでしょうか。

なんとなく変な感じがしますよね。仕掛品は、ちょうど半分くらいまで作られていたから、原価も半分ということにして計算したのですが、ちょっとおかしい感じです。

椅子は木材を加工して作ります。計算を簡易化するため、費用はこの木材の代金とそれを作るための加工費(人件費やその他もろもろの費用)のみとします。

完成品も仕掛品も、1脚あたりの木材の代金って同じだけ掛かっていますよね。一方で、加工費はどれくらい作ったかによります。仕掛品が半分くらいまでしか作ってないなら、完成品に比べて半分しか加工費は掛かってないのです。

ということはですよ。次のように按分すればいいんです。

  完成品 仕掛品
材料費 200脚 100脚
加工費 200脚 100脚×50%=50脚

 

ここで、150万円の内訳として、材料費が90万円、加工費が60万円だとします。次のように按分されます。

  完成品 仕掛品
材料費
90万円
200脚
60万円
100脚
30万円
加工費
60万円
200脚
48万円
100脚×50%=50脚
12万円
合計 108万円 42万円

 

完成品は、材料費60万円+加工費48万円=108万円、1脚あたり108万円÷200脚=5,400円/脚です。
仕掛品は、材料費30万円+加工費12万円=42万円、1脚あたり42万円÷100脚=4,200円/脚です。

まとめ

今回は、ここまでにしておきます。

あえてボックス図などは使わずに、ストーリー仕立てで解説してみました。計算方法とかやり方を暗記するのではなく、そもそも製品原価計算が、いったい何をしようとしているのかをご理解頂きたいからです。

ここまでのレベルでは2級の問題すら解けませんが、でも、ここまでの超基礎が大事です。ぜひ、腹落ちさせてください。

次回からは、もう少し難易度をあげていきます。月初仕掛品があるケースを見ていきます。続きはこちら。

総合原価計算を超基礎から学びなおそう2

 

総合原価計算を超基礎から学びなおそう1” に対して2件のコメントがあります。

  1. Takahashi より:

    2級を勉強中です。総合原価計算では、原価を原料費(直接材料費)と加工費に分類されますが、製造間接費は出てこないのでしょうか。
    単純総合は1種類を製造、等級別総合は同種類製造(サイズが違うだけで1種類)、しかし組別総合は異種製品の大量生産なので組間接費が製造間接費であり加工費でもあるということでしょうか。
    質問内容が基礎的なことで申し訳ございませんがよろしくお願いいたします。

    1. pro-boki より:

      1.直接材料費
      2.間接材料費
      3.直接労務費
      4.間接労務費
      5.直接経費
      6.間接経費

      って、あるでしょ?

      2と4と6をあわせて「製造間接費」って言うんです。これはいいですよね。
      2と3と4と5と6をあわせて「加工費」って言うんです。覚えておきましょう。

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