非累加法を基礎から学ぼう(その1)

意表を突かれました。

第152回の日商簿記1級の工業簿記、まさかの非累加法。第65回以来の約30年ぶりの出題でした。

「ひるいかほう」

この文字を見ただけで戦意喪失。捨てた人も少なくなかったことでしょう。

いや、案外、間違いではないんですよ、捨てるのも。152回の試験に限れば合否への影響は小さかったと思われます。

しかし。

次回からは捨てることは許されません。出題実績が出来てしまうと、スクールが対応するため出来る受験生が登場して来るからです。

決して難しい論点ではありません。ここでしっかりマスターしておきましょう。

工程別総合原価計算(累加法)の復習

非累加法は、工程別総合原価計算の処理方法です。

ここでは、まず、工程別総合原価計算の累加法の復習から見ていきましょう。2級でやってますよね。

問題

以下の資料にもとづき完成品単位原価を求めなさい。第1工程完了品は全量第2工程の始点に振り替えている。また、原価配分方法は先入先出法を採用し、累加法によって計算する。

生産データ

 第1工程:月初200(50%)、当月1,300、月末400(50%)、完成1,100
 第2工程:月初200(50%)、当月1,100、月末300(50%)、完成1,000

原価データ
  第1工程 第2工程
月初仕掛品 直接材料費
(前工程費)
1,000,000 1,200,000
加工費 100,000 200,000
当月投入 直接材料費
(前工程費)
6,857,500
加工費 1,332,000 1,995,000
合計 9,289,500

解答

第1工程仕掛品
月初仕掛品
材 200
加 100

第1工程完成品
材・加 1,100

 

当月投入
材 1,300
加 1,200
月末仕掛品
材 400
加 200

材料費単価:6,857,500÷1,300=@5,275
加工費単価:1,332,000÷1,200=@1,110

第2工程仕掛品
月初仕掛品
前 200
加 100

第2工程完成品
前・加 1,000

 

当月投入
前 1,100
加 1,050
月末仕掛品
前 300
加 150

前工程費単価:6,957,500÷1,100=@6,325
加工費単価:1,995,000÷1,050=@1,900

月末仕掛品原価(前工程費):@6,325×300=1,897,500
月末仕掛品原価(加工費):@1,900×150=285,000
 合計:2,182,500
第2工程完成品原価(前工程費):1,200,000+6,957,500−1,897,500=6,260,000
第2工程完成品原価(加工費):200,000+1,995,000−285,000=1,910,000
 合計:8,170,000
完成品単位原価:8,170,000÷1,000=@8,170

累加法の解説

やさしい問題だったと思います。ちょうど2級の本試験レベルくらいの難易度です。生産データのボックスを作れば、ちゃちゃっと計算できます。

さて、工場長(A)と第2工程責任者(B)が製品原価についての会話をしています。見てみましょう。

A 「当月の完成品数量はいくつ?」
B 「1,000個です。予定通りです。」
A 「OK。いい感じだね。完成品単位原価はいくらだった?」
B 「@8,170円でした。前月より少し高いです。」
A 「あらら。原因は何?材料費?」
B 「えーと、完成品原価のうちの前工程費は626万円でした。1個あたり6,260円です。確かに前月より高いです。」
A 「ということは、材料費が高かったのかな?」
B 「さあ。それは分かりません。第1工程に聞かないと。うち(第2工程)は、前工程費しか管理していません。」

さて、累加法によれば、1個あたりの製品原価は8,170円であることが判明しました。これさえ分かれば、損益計算書の売上原価も計算できますし、貸借対照表の製品勘定も作れます。

ですから、財務諸表作成目的だけを考えれば、累加法で十分です。

しかし。

上記の会話文にもあるとおり、製品原価が想定よりも高かったり安かったりしたとき、その原因分析をしたくなるわけです。じゃあ、この@8,170円のうち、材料費はいくらかってことです。

これ、第2工程責任者は分からないんですよ。累加法だと。

だって、第1工程からは、すでに加工済み材料である第1工程完了品が振り替えられてくるわけで、これを前工程費として処理しちゃうからです。前工程費がいつもより高かったとかは分かりますが、前工程費のうちの材料費が高いのか安いのかは、第1工程責任者に聞かないと分かりません。

つまり、原価管理がやりにくいんです。累加法は。

じゃあ、前工程費として、処理するのではなくて、材料費と第1工程加工費を別々に処理すればいいじゃないか、という発想になるわけです。つまり、材料費と第1工程加工費を足しちゃう(これを累加と呼んでいる)んじゃなくて、足さないで(つまり非累加)処理しようってことです。

これが非累加法です。みていきましょう。

工程別総合原価計算(非累加法)・累加法と一致する方法

非累加法には複数の処理方法があります。ここでは、そのうちの「累加法と計算結果が一致する方法」を見ていきましょう。152回の本試験で出題された処理方法でもあります。数値設定は先程の累加法の問題と一緒です。

問題

第1工程完了品は全量第2工程の始点に振り替えている。また、原価配分方法は先入先出法を採用し、累加法(累加法と計算結果が一致する方法)によって計算する。(資料は上記の累加法の問題と同じです)

生産データ

 第1工程:月初200(50%)、当月1,300、月末400(50%)、完成1,100
 第2工程:月初200(50%)、当月1,100、月末300(50%)、完成1,000

原価データ
  第1工程 第2工程
月初仕掛品 直接材料費
(前工程費)
1,000,000 1,200,000
内訳
直接材料費 1,000,000
第1工程加工費 200,000
加工費 100,000 200,000
当月投入 直接材料費
(前工程費)
6,857,500
加工費 1,332,000 1,995,000
合計 9,289,500

解答

第1工程仕掛品
月初仕掛品
材 200
加 100

第1工程完成品
材・加 1,100

 

当月投入
材 1,300
加 1,200
月末仕掛品
材 400
加 200

材料費単価:6,857,500÷1,300=@5,275
加工費単価:1,332,000÷1,200=@1,110

月末仕掛品原価(材料費):@5,275×400=2,110,000
月末仕掛品原価(加工費):@1,110×200=222,000
 合計:2,332,000
第1工程完成品原価(材料費):1,000,000+6,857,500−2,110,000=5,747,500
第1工程完成品原価(加工費):100,000+1,332,000−222,000=1,210,000
 合計:6,957,500

第2工程仕掛品
月初仕掛品
材 200
第1加工 200
第2加工 100

第2工程完成品
材・第1加・第2加 1,000

 

当月投入
材 1,100
第1加工 1,100
第2加工 1,050
月末仕掛品
材 300
第1加工 300
第2加工 150

材料費単価:5,747,500÷1,100=@5,225
第1工程加工費単価:1,210,000÷1,100=@1,100
第2工程加工費単価:1,995,000÷1,050=@1,900

月末仕掛品原価(材料費):@5,225×300=1,567,500
月末仕掛品原価(第1加工費):@1,100×300=330,000
月末仕掛品原価(第2加工費):@1,900×150=285,000
 合計:2,182,500
第2工程完成品原価(材料費):1,000,000+5,747,500−1,567,500=5,180,000
第2工程完成品原価(第1加工費):200,000+1,210,000−330,000=1,080,000
第2工程完成品原価(第2加工費):200,000+1,995,000−285,000=1,910,000
 合計:8,170,000
完成品単位原価:8,170,000÷1,000=@8,170

非累加法の解説

さきほどとほとんど同じ解き方をします。どこが異なるかといえば、第2工程です。累加法では前工程費として処理していたものを、非累加法では材料費と第1工程加工費として処理しています。それだけです。

ね、全然難しくないでしょ?2級レベルの延長ですよ。

非累加法で計算すれば、製品単位原価は@8,170ということだけではなく、その内訳も明確になるわけです。材料費は@5,180(=5,180,000÷1,000)、第1工程の加工費は@1,080、第2工程の加工費は@1,910ですね。

ここまで分かれば、原価管理にも有用だということです。

なぜ第2工程生産データの第1工程加工費には加工進捗度を掛けないのか

さて、多分ですが、1点だけ引っかかる部分があるんじゃないかと思うんですよ。それは、第2工程生産データの「第1工程加工費」の完成品換算量です。例えば月初仕掛品だと、「これ、加工費だから、加工進捗度の0.5を掛けて100になるんじゃないですか」という質問が来るんです。もうね、何度も受けている。

違います。これ、加工進捗度は掛けません。なぜでしょうか。これ、製造工程を具体的に考えてみると分かりやすいんです。

ここでは、グリコのポッキー(登録商標)を作る工程を考えていきます。

第1工程は、練り練りした小麦粉をスティック状に焼き上げる工程です。要するにプリッツを作るのです。そして、第2工程は、第1工程のプリッツを投入して、これにチョコを掛けていきます。これでポッキーの完成です。

第1工程
 材料:練り練りした小麦粉
 加工:スティック状に焼き上げてプリッツを作る
第2工程
 前工程品:プリッツ
 加工:チョコを掛けてポッキーを作る

ここで、第2工程の生産データを再掲します。

第2工程仕掛品
月初仕掛品
材 200
第1加工 200
第2加工 100

第2工程完成品
材・第1加・第2加 1,000

 

当月投入
材 1,100
第1加工 1,100
第2加工 1,050
月末仕掛品
材 300
第1加工 300
第2加工 150

 

さて、月初仕掛品を見てください。材料が200というのは何を意味しているのでしょうか。これは、プリッツが200本あるということでしょうか。

違います。プリッツを200本作るのに必要な小麦粉を投入したことを意味しています。

では、次の第1工程加工費が200というのは何を意味しているのでしょうか。第1工程の加工というのは、小麦粉を焼き上げることです。つまり、200本分の小麦をちゃんとすべて焼き上げましたよということを意味しています。

最後に、第2工程加工費が100になっています。この意味はなんでしょうか。これは、プリッツ200本に対して、50%(本数に換算すると100本分)だけチョコが掛かっていますよ、ということを意味しています。

意味が分かれば間違えませんよね。

では、もし、月初仕掛品の第1工程加工費を100にしてしまうと、どういう意味になるのでしょうか。これは、小麦粉はプリッツ200本分が投入されているけど、まだ50%しか焼き上がっていないという意味になります。つまり、カリッとしたプリッツではなくて、半生のふにゃっとしたプリッツです。これに、50%チョコが掛かっていることになります。食えたもんじゃねーよ。

つづきます

非累加法の基本はこれでおしまいです。

とりあえず、ここまで理解できれば、日商簿記1級の本試験対策としては、まずまずです。少なくとも前回出題された152回の非累加法は解けます。

ただ、非累加法はこの他にも計算方法があります。また、その場合、仕損減損が生じると少し面倒な計算が必要になります。

このあたり、全経上級での出題もありますから、見ていきましょう。

後編を御覧ください。

非累加法を基礎から学ぼう(その2)

あと、質問などありましたらお気軽にどうぞ。コメント欄に書いてください。

非累加法を基礎から学ぼう(その1)” に対して4件のコメントがあります。

  1. peta より:

    非累加法はどこのスクールのテキスト見ても参考程度の掲載だったので
    私も完全無視していました。
    先生の噛み砕いた説明は飲みこみやすいです。
    あとは練習のみ。
    以前第3工程まである問題を見たことありますが
    もしそれで非累加法での出題だった場合
    第2工程生産データと同じように考えれば良いのですかね?

    1. pro-boki より:

      >以前第3工程まである問題を見たことありますがもしそれで非累加法での出題だった場合第2工程生産データと同じように考えれば良いのですかね?

      はい、そのとおりです。全く同じことです。

      ちなみに、第3工程まである問題って、これですかね?
      もしこれなら、私が執筆したものです。なぜ、ネットで誰でも見れる状態になっているのかは謎です。(もともとは、紙の書籍のためにNS社に原稿を提供したものです。)

  2. アラフィフおじさん より:

    非累加法は正直苦手でした。というより、考え方そのものが前の方も仰っていたように、参考程度でしか目にしたことがないため、飲み込めないでいました。
    ですが、先生の解説を一通り読んでみただけですが、すごくよく理解出来ましたし、繰り返し解けるようになるまで練習を重ねることによって苦手→得意とまでは行かなくても、ある程度自信は持てるようになる感触は出来ました。どの論点も同じだと思いますが、問題を見た時に頭の中に何が問われていて、自身がどう対応すればいいのかがピンとくるまで頭と体で理解していきたいと考えています。

  3. peta より:

    そうです、この問題です。
    立ち読みで見たと記憶してるので
    ネットではないです。
    先生が作成された問題だったのですね。

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