総合原価計算を超基礎から学びなおそう2

総合原価計算の超基礎講座2
以下の記事の続きです。
あらためて総合原価計算の本質について
総合原価計算は、似た製品をたくさん作っている会社が、それらの製品原価は同一であると仮定して簡易的に計算する方法です。
「仮定している」という点が大事です。実際には製品ごとに微妙に原価は異なるかもしれません。しかし、それを追求することはせずに、同一であると仮定することで計算を簡略化しているのです。(なお、その微妙な差が重要ならば個別原価計算を採用すればいいわけです)
たとえば、同じ種類のケーキを100個作るとして、実際にはそれぞれに微妙な差異があるはずです。クリームの量が異なるとか、パティシエの作業時間が異なるとかです。
しかし、それをいちいち記録して、ケーキ100個それぞれの原価を算定することには通常意味がありません。それよりトータルでいくら掛かったのかを計算して、それを100個のケーキで按分しちゃえば単位原価が計算できます。これが総合原価計算です。
ざっくり言えば、投入(インプット)した費用を、産出(アウトプット)した製品で按分すれば、簡単に計算できるでしょというのが総合原価計算です。
総合原価計算の復習
さて、当店のケーキは、スポンジケーキをベースにして、クリームを塗って、最後にチョコを乗せて完成するとします。今月は、100個のケーキを作りました。すべて完成していれば掛かった費用を100等分すればOKです。しかし、当月は60個完成して、40個は未完成だったとします。この場合どうすればいいでしょうか。
ここでスポンジケーキは、100個投入しています。内訳は以下のとおりです。
完成品:60個、仕掛品:40個
一方で、クリームはパティシエが塗るとします。1個のケーキを完成させるのに50gのクリームを使います。また、未完成のケーキは、ちょうど半分(25g)のクリームが塗られています。ケーキにはどれだけクリームが塗られているでしょうか。
完成品:1個あたり50g×60個=3,000g
仕掛品:1個あたり25g×40個=1,000g
また、チョコは完成品にだけ乗っています。内訳は以下のとおりです。
完成品:60個、仕掛品:0個
さて、スポンジケーキの費用が10,000円、クリームの費用が4,000円、チョコの費用が1,800円だとします。さあ、完成品は1個いくらかってことですよ。
もうわかりますよね。次のように按分すればいいのです。
| 完成品 60個 |
月末仕掛品 40個 |
|
| スポンジケーキ 10,000円 |
60個 6,000円 |
40個 4,000円 |
| クリーム 4,000円 |
3,000g 3,000円 |
1,000g 1,000円 |
| チョコ 1,800円 |
60個 1,800円 |
0個 0円 |
| 合計 15,800円 |
10,800円 @180円 |
5,000円 @125円 |
完成品換算量とは何か
さて、ここで、クリームに注目してください。完成品が1個あたり50gのクリームを消費するのに対して仕掛品は半分の25g消費するという情報から、3,000g:1,000gで按分計算しました。この計算をするためには、1個あたりのケーキがどれほどのクリームを消費するのかという情報が必要です。
実はそのような情報がなくても、計算する方法があります。完成品が消費するクリームを1と仮定して、それに対して仕掛品は半分の0.5消費するという計算をすればいいのです。
すると、
完成品は、1×60個=60個
仕掛品は、0.5×40個=20個
となり、クリーム代金4,000円を、60個:20個=3:1で按分すればいいことがわかります。
この仕掛品20個が意味するのは「完成品に換算すると20個分のクリームを消費している」ということです。完成品は1個あたり50グラム消費しますから、仕掛品は50g×20個=1,000g消費しているという意味ですね。
この20個のことを、完成品換算量といいます。実際には完成していないけど、完成品に換算するなら20個分のクリームを消費しているよという意味です。
完成品換算量という用語は、すでに2級で学習済みです。しかし、あまり意味を考えずに使っている方も少なくないことでしょう。そういった方は、ぜひ完成品換算量の意味をしっかりつかみましょう。
月初仕掛品がある場合
いままでは、ケーキを作るにあたって、すべて新たに原料を投入することを前提にしてきましたが、月初の時点で作りかけのケーキがあるところからスタートすることもあります。
上記の例では、月末に40個の作りかけのケーキがあります。スポンジケーキは40個、クリームは1,000g、チョコはまだ乗っていません。当月は、この作りかけを完成させるところからスタートすることとしましょう。さらに、別途80個のケーキを新たに作ります。結果、120個のケーキ製造に着手し、100個が完成、月末に20個作りかけ(50%)が出来たとします。
この場合、どのように原価計算をすればいいのでしょうか。
当月投入量を求める
まずは、どれくらいの材料を当月、投入しなければならないのかを計算しましょう。
スポンジケーキは、完成品100個、月末仕掛品20個の計120個必要です。月初仕掛品がすでに40個ありますから、当月はあと80個投入すればいいことになります。
クリームは、完成品100個、月末仕掛品20個ですが、月末仕掛品は50%しか進捗していないので、完成品に換算すると合計110個分必要です。月初仕掛品にすでに20個分のクリームが塗られていますから、当月はあと完成品に換算して90個分のクリームを投入すればいいことになります。
チョコは、完成品100個、月末仕掛品20個ですが、月末仕掛品はまだ50%しか完成しておらず、チョコは完成直前に乗っけるので、まだ乗っかっていません。つまり、完成品の分の100個必要です。月初仕掛品に全くチョコが乗っていませんから、当月は100個のチョコを投入する必要があります。
当月製造費用を求める
上記のとおり、スポンジケーキとクリームとチョコを発注したところ次の費用が掛かりました。
- スポンジケーキ80個:8,720円(@109円)
- クリーム90個分:4,500円(@50円)
- チョコ100個:3,000円(@30円)
投入した材料について整理する
投入した材料について整理します。
| 月初仕掛品 | 当月投入 | |
| スポンジケーキ 計120個 |
40個 4,000円 (@100円) |
80個 8,720円 (@109円) |
| クリーム 計110個分 |
20個分 1,000円 (@50円) |
90個分 4,500円 (@50円) |
| チョコ 計100個分 |
0個 0円 |
100個 3,000円 (@30円) |
平均法と先入先出法は月初と当月の単価が異なるときのみ必要
さて、月初の段階で作りかけの40個のケーキのスポンジケーキの材料単価と、当月投入したスポンジケーキの材料単価を比較してください。異なりますよね。
一方で、クリームとチョコは、月初仕掛品の単価と当月投入の単価が一致しています。
このように、単価が一致している材料については、特に難しいことはありません。クリームなら@50円にもとづいて、完成品なら100個分、月末仕掛品なら50個分の金額を計算すればいいのです。チョコも同様ですね。@30円にもとづいて、完成品100個分の金額計算をすればいいのです。
一方で、スポンジケーキは単価が異なります。どうすればいいでしょうか。そこで、おなじみの平均法と先入先出法が登場するわけです。
何が言いたいのかというと、平均法と先入先出法というのは、月初仕掛品と当月投入の単価が異なるとき、どのような単価を使ってアウトプットの原価を決定するかを決めるための計算方法だということです。
ちょっと、話は逸れますが、材料費会計で主要材料の期末在庫を単価×数量で計算しますよね。このとき、数量を測定する方法が継続記録法と棚卸計算法であり、単価を決定する方法が平均法と先入先出法です。なんとなく漠然と、平均法と先入先出法は期末在庫の計算方法という覚え方をするのではなくて、単価を決めるための方法であるという点を意識してください。
平均法の場合
平均法は、月初仕掛品の40個と、当月投入の80個のスポンジケーキの単価が実際には異なっているとしても、それらが同じ単価であると仮定して計算する方法です。平均して同じ単価であると仮定しちゃうんですよね。
計算方法は、月初仕掛品の40個と当月投入の80個に掛かったスポンジケーキのコストを120個で割って1個あたりの平均単価を出すだけです。こうすれば、今まで通りの計算が出来ます。
| 月初仕掛品 | 当月投入 | 平均 | |
| スポンジケーキ 計120個 |
40個 4,000円 (@100円) |
80個 8,720円 (@109円) |
120個 12,720円 (@106円) |
| クリーム 計110個分 |
20個分 1,000円 (@50円) |
90個分 4,500円 (@50円) |
110個分 5,500円 (@50円) |
| チョコ 計100個分 |
0個 0円 |
100個 3,000円 (@30円) |
100個 3,000円 (@30円) |
完成品1個あたりの原価は、スポンジケーキ1個(@106円)とクリーム1個分(@50円)とチョコ1個(@30円)の合計なので、@186円ということです。
先入先出法の場合
先入先出法は、月初仕掛品の40個は全部完成すると仮定する計算です。そして当月投入の80個のうち、60個は完成し、残り20個が月末仕掛品になると仮定する計算です。
スポンジケーキの単価が実際に異なっているわけですから、その情報を活かした計算といえます。
| 月初仕掛品 | 当月投入 | |
| スポンジケーキ 計120個 |
40個 ①4,000円 (@100円) |
80個 8,720円 (③@109円) |
| クリーム 計110個分 |
20個分 ②1,000円 (@50円) |
90個分 4,500円 (④@50円) |
| チョコ 計100個分 |
0個 0円 |
100個 3,000円 (⑤@30円) |
完成品のうち40個は、月初仕掛品40個(①4,000円+②1,000円=5,000円)を加工して作ります。
クリームはすでに半分(完成品換算量で20個分)塗ってありますから、残り半分を当月塗ります。当月は1個塗るのに④@50円掛かりますので、クリーム代としてあと1,000円(=④@50円×20個分)掛かります。
さらに、最後にチョコを40個乗せます。当月はチョコを1個乗せるのに⑤@30円掛かりますので、1,200円(=⑤@30円×40個)掛かります。
ということで、完成品のうち月初仕掛品から作った40個分の原価は、5,000円+1,000円+1,200円=7,200円です。残りの60個は、当月投入分から作ります。1個あたり@189円(=③@109円+④@50円+⑤@30円)ですから、11,340円(=@189円×60個)です。
ということで、完成品100個に掛かったコストは、7,200円+11,340円=18,540円です。1個あたり@185.4円ですね。
ボックス図は何をしているのか
さて、ここまで、ボックス図などを使わずにすべて言葉とストーリーだけで総合原価計算を説明してきました。まずは、総合原価計算が何をしているのか、その仕組を知って頂きたいからです。
しかし、実際に本試験で、このような理屈にもとづいて、上記のように按分計算を行うのは手間です。
そこで、ボックス図が登場します。ボックス図は、まさに、上記の按分計算を行うためのツールです。総合原価計算の前提と按分の仕組みを理解していなくても、ボックス図を使えば製品原価が計算できてしまいます。優れものです。
生産データ(ボックス図)
|
月初仕掛品 |
完成品 100 |
|
当月投入
|
|
| 月末仕掛品 スポンジ 20 クリーム 10 チョコ 0 |
ボックス図は便利ですから、どんどん使ってください。ただし単に使い方(左側には何を書いて、右側のどこそこには何を書けばいいみたいな覚え方)だけを暗記すると、1級で苦労します。仕組を理解して使うことが大切です。
“総合原価計算を超基礎から学びなおそう2” に対して6件のコメントがあります。
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ねこ耳と申します(3)pro-bokiさん こんにちは
上記の記事で、ボックス図の月末仕掛品に当たる部分が月初仕掛品と表示されています。
お直しされると、ケーキがもっと美味しくなりますにゃ。
ありがとにゃ。なおしたにゃ。
富久田先生こんばんは 初めてメールします。
先生もご存じの通り、日商2級の工業簿記はパターン暗記とヤマ張りから出来ています。
特に今は商業簿記が20年前の1級と言われるほど、量も内容も激増しているので、独学でやっていると特にそうなります。
非常にバランスの悪い試験で、前回・今回と落ちてしまい、らちが開かないと思ったので私は全経に切り替えました。
全経1級の工業簿記・原価計算は本当に内容が良いですよ。日商と違い、商業と工業で時間を分けているので、幅広く総合的に聞けるからだと思います。(理論問題もちゃんと出します)
特に、第4問は勘定連絡の練習に非常になるので、良い勉強になります。
先生が前に記事で書かれていた、「費目別計算は個別原価計算のためにあるのではない」というのがよく分かる問題です。
私は1級を受けるつもりは今はないですが、1級をやる人には超おススメです。
全経1級、良い試験ですよね。
受験経験はありませんが、全経1級の工簿は解いた事があります。
初めて解いたときはとても驚きました。非常に良問でなのです。工簿の基礎を学ぶのにはうってつけ。勘定連絡はもとより、工簿全体の流れも分かります。
そして結構難しいんですよね。正直、この難易度で初見で7割取るのはかなり難しいと感じました。2級より上かなと。
その割には合格率が50%前後と非常に高い。どうなっているの?とかなり不思議に思ったものです。
結局、過去3年分くらい解いてみて、ああ、なるほどね、と思った次第です。
まあ、仕方ないのかなとも思いますが。
ただ、それが格を下げているような気もします。
現在の全経1級の受験者数はだいたい2,000人くらいでしょうか。
2級が20万人(今はもっと減っているのかな?)なので、ここもネックですね。
100倍違うと、かなり知名度的にも違いますので。
とはいえ、試験問題単独で見ると非常に良い問題なので、受験するしないは別にして、
工簿を理解するうえでは、私もかなりおすすめです。
先生お久しぶりです。
前回の記事の冒頭でもあった通り、まずは1級の工原を勉強する前に、2級の復習が大切だと痛感しました。
153回で受かったのですが、工業がとても簡単な年であったため、2級の過去問を何年度分かは復習してみようと思います。
PS 動物の写真を使われる頻度が高いと思っていたのですが、前回、今回の記事でスイーツの画像を使用されているのは…わざとでしょうか。。。
食べたくなります…。。。
153回って、あの伝説の連結の回?すごい!
1級の勉強始めちゃっていいと思いますよ。ただ、やり方暗記ではなくて、なぜ、そうやるのを意識すること。そして、少しでも疑問を感じたら、いつでも2級に戻る心づもりでいれば、良いと思います。
動物、好きなんです。ねこちゃんが好きですが、まあ、何でも好きです。
最近のお気に入りはウォンバットです。
スイーツは、総合原価計算ので作っているのがケーキなので、それにあわせてみました。