究極にやさしい税効果会計その5

税効果会計インデックス
- 第1回:税効果会計の基礎の基礎
- 第2回:税効果会計を適用したときの仕訳と損益計算書の表示
- 第3回:会計上と税務上で見解が異なるのは具体的にどういうとき?
- 第4回:繰延法と資産負債法って何?(なぜ有価証券評価差額金も税効果会計対象?)
- 第5回:連結会計で税効果会計をするのはなぜ?
- 第6回:その繰延税金資産って本当にそれだけの資産価値ある?
連結財務諸表での税効果会計
さて、ここまでの税効果会計の記事は、すべて個別財務諸表を前提に記述してきました。まあ当然ですよね。いくらグループ企業を形成しているとしても、法人税は個々の法人ごとに納税義務があるわけですから個別財務諸表ベースで考えるのが自然です。(連結納税という制度もありますが、ここではおいておきます)
ところで、連結会計を行うときも税効果会計って登場しますよね?あれ、どういう意味なんでしょう。まあ、1級学習しているとテキストに「ここでは税効果会計を適用する」なんて書かれているから、よくわからんけど、ま、とにかくそういうもんかな、と思って処理を覚えちゃうことが多いと思います。
ですが、今一度、ここで考えてみましょう。なぜ、連結会計で改めて税効果会計をやらないといけないの?と。
だって、考えてもみてください。連結財務諸表っていうのは、個別財務諸表を合算して作られるんですよ。そして、税効果会計は個別財務諸表の段階ですでに済んでいるのですよ。税務と会計のズレは、ちゃんと調整されているのです。調整済みの個別財務諸表同士を合算したのに、なんでまた税効果会計をやらないといけないんでしょうか?
読み進める前に、しばし考えてみることをおすすめします。
連結と個別では資産・負債の価額が異なる
まず、資産・負債の貸借対照表価額について考えてみましょう。個別財務諸表上では、土地や事業用の有形固定資産の簿価は、取得原価に基づいて算定されています。
で、連結財務諸表ではどうでしょう?親会社は簿価のままですよね。ところが連結される子会社は、支配獲得時の時価に評価しなおしてからくっつけますよね。
そうなんです。連結財務諸表の資産の額というのは、個別財務諸表の単純合計とはならないのです。子会社の資産・負債は、簿価ではなくて時価でくっつけるのです。
税効果会計っていうのは、税務上と会計上の資産・負債のズレを修正するものでしたよね。ですから、個別財務諸表においてズレを修正済みでも、連結するときにまたズレちゃうので、またしても税効果会計を適用しないといけないわけです。
つまり、「資本連結に際し,子会社の資産及び負債の時価評価により評価差額が生じた場合」には、税効果会計を適用しないといけないのです。税効果会計基準 第二 一 2(2)
連結と個別では利益の額も異なる
また、利益についても同様です。個別財務諸表上の利益を単純合算しても、連結財務諸表上の利益と一致しません。それは、成果連結において、親子間の取引から生じた未実現利益を消去したり、親子間の取引から生じた貸倒引当金の修正をしたりするからです。税効果会計基準 第二 一 2(2)
つまり、単純合算して成果連結をしただけでは、連結上の利益と税額が対応しなくなるわけです。そこで、連結財務諸表においても税効果会計を適用する必要があるのです。
税効果会計基準 第二 一 一時差異等の認識
2.一時差異とは、貸借対照表及び連結貸借対照表に計上されている資産及び負債の金額と課税所得計算上の資産及び負債の金額との差額をいう。一時差異は、例えば、次のような場合に生ずる。
(2) 連結財務諸表固有の一時差異
資本連結に際し、子会社の資産及び負債の時価評価により評価差額が生じた場合
連結会社相互間の取引から生ずる未実現損益を消去した場合
連結会社相互間の債権と債務の相殺消去により貸倒引当金を減額修正した場合
連結税効果の具体例
簡単な具体例を見てみましょう。
親会社と子会社の個別損益計算書が次のとおりだとします。
親会社個別損益計算書(将来減算一時差異1,000、税率40%)
| 税前利益 | 2,000 | |
| 法人税等 | 1,200 | |
| 法税等調 | △400 | 800 |
| 当期利益 | 1,200 |
子会社個別損益計算書(将来減算一時差異500、税率40%)
| 税前利益 | 1,000 | |
| 法人税等 | 600 | |
| 法税等調 | △200 | 400 |
| 当期利益 | 600 |
単純合算個別損益計算書
| 税前利益 | 3,000 | |
| 法人税等 | 1,800 | |
| 法税等調 | △600 | 1,200 |
| 当期利益 | 1,800 |
上記までは整合性が取れています。
さて、ここで、親会社から子会社に商品を売却していて、期末に在庫が残っていて未実現利益が1,000生じているとします。すると、成果連結として次の仕訳を行います。
売上原価1,000/商品1,000
結果、連結損益計算書は次のようになります。
連結個別損益計算書(連結税効果適用なし)
| 税前利益 | 2,000 | |
| 法人税等 | 1,800 | |
| 法税等調 | △600 | 1,200 |
| 当期利益 | 800 |
売上原価が1,000増えたため、利益が1,000減ったわけです。税引前当期純利益に40%掛けても会計上の法人税等になりませんよね。税引前当期純利益だけを動かしたので当然なのですが。
整合性を取るなら、法人税等は2,000×40%=800じゃなきゃおかしいです。とはいっても税務上の法人税等は確定していますので変えられません。となると、法人税等調整額を現状の△600から△1,000にするしかありません。ということで、次の仕訳をしないといけないのです。
繰延税金資産400/法人税等調整額400
こうすることで次のような整合性をもった連結損益計算書が作れるのです。
連結個別損益計算書(連結税効果適用あり)
| 税前利益 | 2,000 | |
| 法人税等 | 1,800 | |
| 法税等調 | △1,000 | 800 |
| 当期利益 | 1,200 |
これで無事、整合性の取れた損益計算書が出来ました。これが連結会計において税効果会計を行わなければならない理由です。
“究極にやさしい税効果会計その5” に対して5件のコメントがあります。
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いつもわかりやすく解説していただき、本当にありがとうございます。
連結会計ののれんについて質問いたします。
1.のれんは連結財務諸表固有の一時差異ですか。
2.税務上、のれんの取り扱いはどうですか。
ご回答をいただきますようお願い申し上げます。
>1.のれんは連結財務諸表固有の一時差異ですか。
「連結財務諸表固有の一時差異」とは、連結決算をしたことで連結BSと個別BSとの間で、資産・負債の額が変わってしまい、そこで生じる差異のことです。その定義から言えば、のれんは連結財務諸表固有の一時差異です。「連結財務諸表固有の一時差異」の例示は、税効果会計適用指針の第86項に載ってます。こちらです。
>2.税務上、のれんの取り扱いはどうですか。
どうですか?とは何ですか?
少なくとも会計上は税効果会計の対象ではありません。「連結財務諸表固有の一時差異」の中でものれんだけ例外的な扱いです。税効果を適用すると循環するからです。この、循環するから税効果の対象外っていうのは、さまざまな記事で言及されていますが、特にこちらの記事がとても分かりやすいのでおすすめします。なお、税務上の取り扱いは、知りません。
丁寧な解説、本当にありがとうございました。
「どうですか」とは「のれんは税務上どうなりますか」ということを質問したいですが、日本語が母国語じゃないので質問仕方がよくなかったです。申し訳ありません。
ベトナムの方ですか?
日本語の正確さ、質問内容ともに、素晴らしいです。応援しています。
先生ありがとうございます。
連結fsで特有の税効果を加味しなければならない理論的背景とは経済的単一体説の基、企業集団を一つの法人として考え、当該法人をもしある時点で売却等した時の生じるタックスインパクトと考えております。
プロ簿記を何度も何度も拝見して合格した者です。