究極にやさしい税効果会計その3

税効果会計インデックス
- 第1回:税効果会計の基礎の基礎
- 第2回:税効果会計を適用したときの仕訳と損益計算書の表示
- 第3回:会計上と税務上で見解が異なるのは具体的にどういうとき?
- 第4回:繰延法と資産負債法って何?(なぜ有価証券評価差額金も税効果会計対象?)
- 第5回:連結会計で税効果会計をするのはなぜ?
- 第6回:その繰延税金資産って本当にそれだけの資産価値ある?
会計上と税務上で差異が生じるケース
そもそも論なんですけど、会計上の費用・収益と税務上の益金・損金が一致していれば、税効果会計なんて必要ないわけですよ。
費用だけど損金として認めないとか、収益だけど益金として認めないなどのズレがあるから、税効果会計を行わなければならないのです。
では、なぜ会計上と税務上ではズレが生じるのでしょうか。その理由を探るとともに、具体的にどのようなケースでズレが生じるのか具体例を見ていきましょう。
なぜ会計上と税務上で差異が生じるのか
いまいちど会計と税務の違いを見ていきましょう。
- 会計上:収益−費用=利益
- 税務上:益金−損金=所得(課税所得)
法人税等は、会計上の利益ではなく、税務上の課税所得にもとづいて算定されます。ここで、問題なのは、収益と益金および費用と損金が一致しないことです。(実際はほとんど一致します。ごく一部が一致しないのです)
なぜ、一致しないのでしょうか。それは、会計と税務では目的が異なるからです。会計は適正な期間損益計算を行うことを目的に利益を算定しているのに対して、税務は課税の公平性を目的に所得を算定しています。
例えば、期末棚卸資産の帳簿価額が100万円だとします。この商品在庫に収益性の低下がみられたので、正味売却価額まで切り下げることを検討しています。商品評価損の計上です。
経営者Aは「この商品は40万円くらいじゃないと売れないだろうな」と悲観的です。すると商品評価損は60万円です。結果として利益が少なくなります。
一方、経営者Bは「大丈夫。100万円以上で売れる」と楽観的です。すると、商品評価損を認識しないので、結果として利益が多くなります。
どちらの経営者もその経験と計画、信念に裏打ちされて見積もっているのなら、それぞれに正しいのです。会計的には。
しかし、税務的にはこれでは困ります。経営者の気持ちひとつで利益が変わり、税金が変わるようでは不公平です。経営者によっては、税金を払いたくないばかりに本心とは異なる見積もりをするかもしれません。それで実際に納める税金が少なくなるのは不公平です。
ということで、商品評価損については、税務上は損金として認めないケースがあるのです。(実際には、税務上、低価法を採用すると事前に申請し承認されることで損金算入されるケースもあります。)
このように、経営者の主観的な判断で、収益、費用に影響が及ぶようなケースは、大方、税務上は損金として認めてくれません。会計上は発生主義にもとづいて見積もりで費用を認識しますが、税務上は債務確定主義といって実際に債務が確定した時点で損金として認めるのです。
一時差異と永久差異
では、どのようなケースで会計と税務でズレが生じるのでしょうか。
まず、そもそもズレが生じるといっても、そのケースは2通りあります。1つは、決算時点でズレているだけで、いずれ時が経過すれば一致するケース。もう1つは、未来永劫一致しないケースです。前者を一時差異、後者を永久差異といいます。
一時差異は税効果会計の対象(ズレが解消されるまで繰り延べる会計処理を行う)ですが、永久差異は税効果会計の対象ではありません。単にその分の税金を多く支払うだけです。(一部、税金が少なくなるケースもあります)
一時差異のほとんどは、会計上の費用だけど損金として認められないというケースです。この場合、税金を前払いします。そして、そのときの差額を将来減算一時差異といい、前払いした税額は繰延税金資産としてB/Sに計上されます。
なお、一部ですが、逆のケースもあります。税金を後払いするケースです。この場合の差額は将来加算一時差異といい、後払いする税額は、繰延税金負債としてB/Sに計上されます。
一時差異の具体例
貸倒引当金
会計上は、貸倒実績率にもとづいて貸倒引当金を設定し、貸倒引当金繰入額を費用処理しますが、税務上は全額損金不算入です。(全額損金不算入は大企業の場合です。中小法人の場合、業種によってさまざまですが、一定額まで損金算入可能です。)
試験では、「全額損金不算入」とか「1%を超える分は損金不算入」など指示が出ますので、したがってください。
例題
会計上1.5%の貸倒実績率を適用する。一方、税務上の繰入限度額は1%であり、これを超えた分は、繰入限度超過額として損金不算入とする。税額40%とする。売掛金の期末残高は100万円であった。期末における税効果会計の仕訳を示しなさい。
会計上の貸倒引当金は1.5万円です。一方、税務上の貸倒引当金は1万円です。この差額5,000円が将来減算一時差異です。よって2,000円の法人税等を前払いするわけです。
繰延税金資産2,000/法人税等調整額2,000
この将来減算一時差異5,000円が解消されるのは、当該売掛金を現金で回収したとき、もしくは貸倒れたときです。
たとえば、当該売掛金を現金で回収した場合、会計上の貸倒引当金戻入は1.5万円である一方、税務上の貸倒引当金戻入額は1万円のみです(税務上は1万円しか貸倒引当金が設定されていないからです)。よって、税務上の益金よりも会計上の収益の方が5,000円多くなり、会計上の法人税等の方が税務所の法人税等よりも2,000円多くなるわけです。これは、前期に計上してある繰延税金資産2,000円を取り崩して対応します。仕訳にすると次のとおりです。
法人税等調整額2,000/繰延税金資産2,000
売掛金が想定通り1.5万円貸倒れた場合も考えてみましょう。会計上は貸倒引当金を取り崩すだけですから、費用は発生しません。一方、税務上は1万円しか貸倒引当金を設定していないので、5,000円の貸倒損失が発生し損金算入されます。つまり、この場合も、会計上の法人税等の方が税務上の法人税等よりも2,000円多いわけです。よって、さきほどの売掛金を現金回収したときの仕訳と同じ仕訳になります。
法人税等調整額2,000/繰延税金資産2,000
減価償却費
会計上は、経済的耐用年数にもとづいて算定された減価償却費が計上される一方、税務上は法定耐用年数もとづいて算定された減価償却費が計上されます。
なお、通常は、経済的耐用年数の方が、法定耐用年数よりも短く、会計上の減価償却費よりも税務上の減価償却費の方が少額になります。この差額が損金不算入となり、将来減算一時差異となります。
例題
期首に備品40万円を取得し、経済的耐用年数5年、残存価額10%、定額法で減価償却をする。税法上の法定耐用年数は8年であり、税額は40%とする。期末における税効果会計の仕訳を示しなさい。
会計上の減価償却費は7.2万円、税務上の減価償却費は4.5万円です。この差額2.7万円が将来減算一時差異です。よって10,800円の法人税等を前払いするわけです。
繰延税金資産10,800/法人税等調整額10,800
この繰延税金資産10,800円は1年目から5年目まで、だんだん積み上げられていきます。取得日から5年後には、54,000円の繰延税金資産が計上されています。そして6年目以降、解消されていきます。
6年目において、会計上は償却は終わっているため減価償却費はゼロです。一方、税務上はまだ償却の最中ですから4.5万円の減価償却費が計上されます。よって、会計上の法人税等の方が税務所の法人税等よりも1.8万円多くなるわけです。これは、前期までに計上してある繰延税金資産を取り崩して対応します。仕訳にすると次のとおりです。
法人税等調整額18,000/繰延税金資産18,000
まとめると、次のようになります。
- 1年目から5年目まで:繰延税金資産10,800/法人税等調整額10,800
- 6年目から8年目まで:法人税等調整額18,000/繰延税金資産18,000
退職給付引当金
会計上は、利息費用や勤務費用などから算定された退職給付費用を費用処理します。一方、税務上は退職一時金や企業年金の拠出など、現金の支出額を損金算入します。
例題
期首退職給付引当金40,000円、当期退職給付費用8,000円、退職一時金支出額5,000円、期末退職給付引当金43,000円、税率40%。期末における税効果会計の仕訳を示しなさい。
会計上は退職給付費用8,000円が費用処理される一方、税務上は退職一時金支出額5,000円が損金算入されます。この差額3,000円が将来減算一時差異です。よって1,200円の法人税等を前払いするわけです。
繰延税金資産1,200/法人税等調整額1,200
なお、期首繰延税金資産は、期首退職給付引当金40,000円×40%=16,000円であり、期末繰延税金資産は、期末退職給付引当金43,000円×40%=17,200円です。よって、この差額から「繰延税金資産1,200/法人税等調整額1,200」と導くこともできます。(できますというよりも、こちらが主流の解き方です)
未払事業税
会計上は、発生主義にもとづき、期末に事業税を費用処理します。一方、税務上は未払事業税を現金で支払った時にその支出額を損金算入します。
例題
第1期末、未払事業税3,000円を計上し,第2期に支払った。第2期末、未払事業税4,000円を計上した。税率40%。第2期期末における税効果会計の仕訳を示しなさい。
第2期期首時点では、繰延税金資産1,200円(=3,000円×40%)が計上されています。これが第2期中に現金で支払われたことで、取り崩されます。仕訳にすると次のとおりです。
法人税等調整額1,200/繰延税金資産1,200…①
第2期期末時点では、また新たに繰延税金資産1,600円(=4,000円×40%)が計上されます。仕訳にすると次のとおりです。
繰延税金資産1,600/法人税等調整額1,600…②
よって、①と②の仕訳をあわせて、次の仕訳となります。
繰延税金資産400/法人税等調整額400
なお、期末未払事業税4,000円−期首未払事業税3,000円=1,000円が将来減算一時差異であり、これに税率を掛けて、繰延税金資産400を導くこともできます。(できますというよりも、こちらが主流の解き方です)
永久差異の具体例
交際費(損金不算入)
社長「今期は結構利益出そうだな」
部長「はい。このままだとすごい税金取られそうです」
社長「それも、もったいないよなー。税金で取られるくらいなら、飲んじゃおうか」
部長「いいですね」
ということを防ぐために、交際費は、会計上は費用処理されますが、税務上は損金算入が認められません。(実際は、企業規模によって異なります。中小企業は一部損金算入認められます)
罰科金(損金不算入)
「交通違反したら罰金取られたよ。でも、経費になるからいいか」
って、おい、それじゃあ罰した意味が減っちゃうよってことで、税務上は損金算入が認められません。
受取配当金(益金不算入)
もらう側は、受取配当金で処理しますが、あげる側は繰越利益剰余金の処分です。
繰越利益剰余金はすでに法人税等を納めたあとの残りです。それを受け取ったからといって、それに対してまた法人税等をかけるのはおかしいよね、ということで受取配当金は会計上の収益ではあるけれども、税務上の益金には入りません。
これは、1つの利益に対して2重に課税するのを防ぐためです。
寄付金(損金不算入)
これは、理由はちょっとよく分かりません。多分に政治的なものだと思います。まあ、普通の費用は収益に貢献している(=つまりそれだけ税金がたくさんとれる)からいいとしても、寄付金は、国庫に入るべきお金を事業には関係ない(=収益に貢献しない)他にあげちゃったから、その分税金安くしてというのは許さないよ、という意図なんじゃないかと思います。
“究極にやさしい税効果会計その3” に対して4件のコメントがあります。
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ご無沙汰しております。
本試験直前に税効果会計の解説ありがとうございます。
計算では、とりあえず差額で抜いとけば税効果会計は大丈夫だと思っていた自分の認識の甘さを痛感しました。
発生主義と債務確定主義の差異調整を行っていた事をいまさら知りました。あと、6日。しっかり噛み砕いてものにします!
はい!がんばりましょう。ラストの追い込みでプラス5点はいきますよ。
先生お久しぶりです(1か月ぶりです)
税効果会計についていつもどのように調整仕訳を切るかだけに意識をおいており、
自分の意識の低さを痛感しました。
永久差異について確認したいのですが、
例 交際費10,000が損金不算入 法定実行税率 40%
法人税住民税及び事業税を計算する場合
税引前当期純利益 100,000
法人税住民税及び事業税※ 44,000
法人税調整額 0
当期純利益 56,000
※法人税住民税及び事業税は、(100,000+10,000)×40%=44,000
という認識でよろしかったでしょうか?
はい、正しいです。ちなみに、100,000+10,000=110,000のことを課税所得といいます。
あと、税効果会計適用後の当期純利益を、税引前当期純利益×(1−実効税率)で計算する方がいますが、これは、永久差異が無ければそのとおりですが、永久差異があると、この式は成り立ちません。