第165回日商簿記1級・詳細解説【会計学】

第165回会計学の感想
問題1 理論問題
(1)と(2)は、ほとんどの受験生が出来たのではないでしょうか。(ケアレスミスや漢字のミスはあるかもしれませんが)
一方で(3)は、ほとんどの受験生がノーマークでしょうから、出来なくても仕方がありません。なお「会計上の〜」の語感から「見積り」を当てた方もいたとのことで、素晴らしいと思います。
今回の理論問題は、多くの受験生がそれなりに出来ていると思われ、大きく点数がバラつくことは無かったのではないかと思います。
問題2 連結株主資本等変動計算書
一方で、連結株主資本等変動計算書の問題については、出来た受験生と出来なかった受験生に二分されたのではないかと思います。
連結会計について、以下に示す応用論点までを守備範囲にしていた受験生にとっては比較的楽な問題だったことでしょう。短時間で高得点が狙えたことでしょう。一方で、基礎論点に留めていた受験生にとっては厳しい問題だったと思います。
近年の簿記1級の連結会計は、基礎論点に加えて、以下の応用論点が頻出です。
- 利益剰余金、その他の包括利益累計額のダイレクト算定
- 評価差額の実現
- その他有価証券評価差額金のある一部売却
- 包括利益計算書の作成とその他の包括利益の注記(組替調整など)
- 取得関連費用
- 在外子会社
今回はこの中から「利益剰余金、その他の包括利益累計額のダイレクト算定」「評価差額の実現」「その他有価証券評価差額金のある一部売却」の3つの論点が出題されました。
会計士受験生にとっていずれも必須レベルの論点であり有利な問題だったと思います。一方、独学で1級を学習されている受験生や、このあたりの論点に対応していないスクールで学ばれている方にとっては不利な戦いだったかもしれません。
得点の目安は、素点ベースで目標18点、最低限守りたいのは14点くらいだと思います。
問題1 理論問題
(1)税効果会計
- (ア)将来減算一時差異、(イ)繰延税金資産
- (ウ)法人税等調整額:期首繰延税金資産20,000×35%-期末繰延税金資産22,000×33%=400千円
- 税効果会計の理論と計算問題です。過去にも同様の問題が出題されたこともあるため正答率が高いと思われます。必ず取らなければならない問題です。
(2)貸倒引当金
- (エ)貸倒懸念債権、(オ)担保の処分見込額
- (カ)貸倒見積高:50,000-(500÷1.032+30,600÷1.033)=21,525千円(別解21,526千円)
- 「懸念」を漢字で書けたかどうかが問題です。「遡及」「破産更生」「誤謬」あたりは、漢字の書き取りの練習もしておきましょう。
- 計算はCF見積法の基本問題です。キャッシュ・フローは2年後と3年後に発生しますが、1年後と2年後の発生と勘違いするケアレスミスがありそうです。
(3)会計上の見積りの開示に関する会計基準
- (キ)会計上の見積りの開示に関する会計基準、(ク)リスク
- これは理論対策をしておかないと取れません。出来なくても仕方がないです。
難易度
(ア)〜(カ)までの6問は取りたいところです。
第2問 連結株主資本等変動計算書
1 タイムテーブル
| 1 | 2 | 3 | |
| 資本金 | 400,000 | 400,000 | 400,000 |
| 利剰 | 250,000 | 280,000 | 300,000 |
| そ評 | 10,000 | 13,000 | 11,000 |
| 土地 | 8,000 | 8,000 | 8,000 |
| 建物 | 2,000 | 1,600 | 1,200 |
| 670,000 | 702,600 | 720,200 | |
| 非株 | (20%)134,000 | (20%)140,520 | (30%)216,060 |
| 取得 | 550,000 | ||
| のれん | 14,000 | 12,600 | 11,200 |
2 P社の個別上の仕訳
増資
| 現金預金 | 20,000 | 資本金 | 100,000 |
| 資本剰余金(資本準備金) | 100,000 |
自己株式の処分
| 現金預金 | 18,000 | 自己株式 | 20,000 |
| 資本剰余金(その他資本剰余金) | 2,000 |
3 連結修正仕訳
一部売却
| 子会社株式 | 68,750*1 | 非支配株主持分 | 72,020*3 |
| 子会社株式売却益 | 13,250*2 | 資本剰余金 | 9,980*4 |
| その他有価証券評価差額金 | 100*5 | 資本剰余金 | 100*5 |
- 売却原価:取得原価550,000÷8=68,750
- 売却額82,000-個別上の売却原価68,750=13,250
- タイムテーブルの×3年度株主資本合計720,200×10%=72,020
- 売却額82,000-72,020=9,980
- 一部売却によって、その他有価証券評価差額金の取得後の増分1,000のうち10%が実現し資本剰余金に振り替えられたと考える
4 解答
Aランク〜Cランクは難易度で、Aランクは取らなければならない問題です。Bランクの出来不出来が合否に直接影響を及ぼすと思われます。Cランクの問題は現時点では取れなくても問題ありませんが、いずれ近いうちにこのあたりも出来て当然の時代が来ると思います。
資本金(Aランク)
- 当期首残高:P社個別より1,000,000
- 株式の発行・当期変動額:増資仕訳より100,000
- 当期末残高:1,000,000+100,000=1,100,000
資本剰余金(A〜Bランク)
- 当期首残高(A):P社個別より500,000
- 株式の発行(A):増資仕訳より100,000
- 自己株式の処分(A):自己株式の処分仕訳より△2,000
- 子会社株式の売却による持分増減額(B):一部売却仕訳より10,080
- 当期変動額(B):100,000-2,000+10,080=108,080
- 当期末残高(B):当期首残高500,000+当期変動額108,080=608,080
利益剰余金(A〜Cランク)
- 当期首残高(B):P社300,000+(S社取得後増加額30,000-評価差額の実現400)×親持分80%-のれん償却額1,400-未実現利益2,000=320,280
- 当期末残高(C):P社400,000+(S社取得後増加額50,000-評価差額の実現800)×親持分80%-のれん償却額2,800-未実現利益1,600-S株売却益13,250=421,710
- 当期変動額(C):421,710-320,280=101,430
- 剰余金の配当(A):P社の配当金のみ△20,000
- 親会社株主に帰属する当期純利益(C):差額より121,430
自己株式(Aランク)
- 当期首残高:P社個別より△80,000
- 当期末残高:P社個別より△60,000
- 自己株式の処分・当期変動額:差額より20,000
その他の包括利益累計額(Bランク)
- 当期首残高:P社20,000+S社取得後増加額3,000×親持分80%=22,400
- 当期末残高:P社18,000+S社取得後増加額1,000×親持分70%=18,700
- 当期変動額:18,700-22,400=△3,700
非支配株主持分(Aランク)
- 当期首残高:タイムテーブルより140,520
- 当期末残高:タイムテーブルより216,060
- 当期変動額:216,060-140,520=75,540
