第167回日商簿記1級・詳細解説【会計学】

第1問 理論問題

(ア)の保証債務が意外と出てこないかもしれません。(イ)の後発事象は、取らないとまずい箇所です。(ウ)の契約資産は、収益認識基準において計算だけではなく理論対策をしているかどうかで出来不出来が分かれるところです。(エ)の減価償却費は、「減価償却」と解答された方もいるかもしれません。文章が通らなくなりますから、ここは減価償却費が正解です。(オ)の総平均法も、単に平均法と解答された方もいるかもしれません。平均法は、総平均法以外にも移動平均法がありますから、ここは、総平均法と解答しないといけません。

最低3問、標準的には4問、出来れば5問すべて取りたいところです。

(1)「金融商品会計に関する実務指針」136項
(2)「後発事象に関する監査上の取扱い」2(4)
(3)「収益認識に関する会計基準」10項
(4)「リース取引に関する会計基準の適用指針」49項

第2問 分配可能額と一株当たり当期純利益

分配可能額

いわゆるB論点と言われるところで、切っている方も少なくなかったと思います。

とはいえ、分配可能額が難しくなるのは、前期末から分配時までの間に資本の変動があるケースです。特に、自己株式の処分があると面倒になります。

本問は、前期末におけるのれん等調整額と分配可能額が問われており、分配可能額の問題としてはもっとも易しい部類に入ります。用語の定義だけ知っていれば取れる箇所ですから取っておきたいところです。

(1)のれん等調整額:3,000,000÷2+61,000=1,561,000

(2)分配可能額

剰余金の額:その他資本剰余金42,500+任意積立金87,000+繰越利益剰余金264,000=393,500
自己株式:△110,250
のれん等調整額の減算額:△41,000
合計:242,250

*資本等金額:資本金1,500,000+資本準備金11,000+利益準備金9,000=1,520,000
 のれん等調整額の減算額:資本等金額1,520,000-のれん等調整額1,561,000=△41,000

一株当たり当期純利益

一株当たり当期純利益は、C論点ですから切ってしまっている方も多いことでしょう。取れなくても仕方のないところです。とはいえ「一株当たり当期純利益」という用語通りに「当期純利益を株式数で割ればいいのでは?」と気付いて試しに計算する現場対応力があれば取れたところです。

ポイントは、分母の株式数は期首と期末それぞれで与えられており、この平均を取ることに気付けたかどうかと、自己株式数の平均を控除することに気付けたかどうかです。

(3)一株当たり当期純利益:当期純利益146,700千円÷815,000株180円

*期中平均株式数:(期首800,000株+期末840,000株)÷2=820,000株
 期中自己株式数:(期首5,100株+期末4,900株)÷2=5,000株
 820,000株-5,000株=815,000株

潜在株式調整後一株当たり当期純利益は、切ってしまって構いません。知らないと無理でしょう。

潜在株式とは、新株予約権などの保有者が普通株式を取得できる権利のことを言います。この権利を行使することで普通株式が増えますから、一株当たり当期純利益はその分だけ減ることになります。これを希薄化効果といいます。過去に理論問題で出題されたことがありますから、押さえておいてください。

本問は、この希薄化効果について実際に計算してみましょうという問題です。ポイントは、潜在株式の権利が行使されたことによる普通株式数の増加数の算定と、それによって当期純利益がどれほど変動するかを読み取ることです。

本問は、もし権利行使されると50,000株増加し、それにともなって社債利息500千円を支払わなくて良くなり、その分だけ当期純利益が増加します。(法人税等の実効税率が30%とされているため、税引後の350千円だけ当期純利益が増加します。)以上より、潜在株式調整後の一株当たり当期純利益は次のように算定されます。

(4)潜在株式調整後の一株当たり当期純利益:(146,700千円+350千円)÷865,000株170円

*期中平均株式数:(期首800,000株+期末840,000株)÷2=820,000株
 期中自己株式数:(期首5,100株+期末4,900株)÷2=5,000株
 820,000株-5,000株+普通株式増加数50,000株=865,000株

第3問 事業分離

初出なら、B論点〜C論点かつ難易度高めなので捨てましょうと言いたいところですが、第134回の初出以降、繰り返し出題されている論点ですから、対応しておくべきと言えます。

個別財務諸表上の処理は、投資が精算されているか、継続しているかだけで判断が付きます。よって落としてはいけないところです。連結財務諸表上の処理は幾分難しい点もありますが、繰り返し出題されていてパターン化されていますので、取りたいところです。

個別財務諸表上の処理

A事業の分離

日本商工社(分離元企業)
A事業負債 2,000*1 A事業資産 10,000*1
その他有価証券 11,000*2 事業移転損益 3,000*3

*1 簿価で計上
*2 投資が精算されているため時価で計上:@550円×20,000株=11,000千円(1)
*3 貸借差額より3,000千円(2)

甲社(分離先企業)
A事業資産 11,000*4 A事業負債 2,000*4
のれん 2,000*6 資本金 5,500*5
    資本剰余金 5,500*5

*4 パーチェス方なので時価で計上
*5 @550円×20,000株÷2=5,500千円
*6 のれんは貸借差額より2,000千円(3)

甲社の資本剰余金:BS 60,000千円+5,500千円=65,500千円(4)

B事業の分離

日本商工社(分離元企業)
B事業負債 150,000*1 B事業資産 500,000*1
乙社株式 350,000*2 事業移転損益  

*1 簿価で計上
*2 投資が継続しているためB事業の株主資本相当額で計上:350,000千円(5)

乙社(分離先企業)
B事業資産 500,000*3 A事業負債 150,000*3
    資本金 175,000*4
    資本剰余金 175,000*4

*3 逆取得であり共通支配下の取引に相当するため簿価で計上
*4 (500,000千円-150,000千円)÷2=175,000千円

乙社の資本剰余金:BS 20,000千円+175,000千円=195,000千円(6)

連結財務諸表上の処理

  B事業 乙社
簿価 ①350,000 ③230,000
資産負債の時価 ②360,000 ④260,000
事業・企業の価値   ⑤280,000*1

*1 @640円×437,500株=280,000千円

(1)のれん:(⑤280,000千円−④260,000千円)×60%=12,000千円
(2)資本剰余金:BS 300,000千円+⑤280,000千円×60%−①350,000 千円×40%=328,000千円
(3)非支配株主持分:(①350,000千円+④260,000千円)×40%=244,000千円

会計学の目安点数

会計学の得点の目安は、目標15点、最低限守りたいのは12点くらいですが、うまくハマれば20点以上得点するのも容易だったと思います。