簿記受験のための電卓講義

簿記受験のための電卓講義
簿記に電卓は欠かせません。
「どんな電卓でも同じでしょ」そんなことはありません。電卓の良し悪しは、普段の学習にも試験の点数にも影響してきます。3,2級はまだしも、1級、税理士、会計士クラスを目指すなら、是非、ある程度良い電卓を手に入れてほしいものです。
それから、電卓の機能を使いこなすことも大切です。効率の良くない使い方、無駄な操作は、時間のロスにもなりますし、何よりミスが誘引されてしまいます。
「電卓の機能をマスターし、練習することも簿記の勉強のうち」そう考えてください。ここでは、電卓の選び方から、よく使う機能、そして簿記の試験での実践的な使い方までを紹介します。
プロ簿記1級合格プログラム・電卓講座
プロフェッショナル簿記1級合格プログラムでは、ライブ配信システムを用いた講義を行っています。本ブログでは、そのときに使用した講義スライドの一部を公開します。
電卓の選び方
- 電卓は簿記のかなめ
- 必要な機能といらない機能
- 電卓を選ぶ時の注意点
- おすすめ電卓
電卓ワザ
- GTキーとメモリ機能
- 繰り返し計算
- 定数計算(じょうすうけいさん)
- 逆数計算
- 残り分計算
実践編
- 工業簿記の配賦額計算
- 現価係数と年金現価係数
- キャッシュ・フロー見積法による貸倒見積額
- 200%定率法
スライドの内容から一部抜粋
製造間接費の実際配賦(スライド19ページ)
製造間接費の当月実際発生額が1,200,000円、各製品の直接作業時間は以下のとおりである。直接作業時間を配賦基準とした場合の実際配賦率と各製品への配賦額を計算しなさい。
| 直接作業時間 | 配賦額 | |
| A製品 | 250時間 | |
| B製品 | 150時間 | |
| C製品 | 200時間 |
解き方
1.直接作業時間合計
250時間+150時間+200時間=600時間
2.実際配賦率の計算
1,200,000円÷600時間=@2,000円
3.配賦額の計算
A製品:@2,000円×250時間=500,000円
B製品:@2,000円×150時間=300,000円
C製品:@2,000円×200時間=400,000円
電卓操作方法(シャープ)
| 操作方法 | 電卓表示 | 意味 | |
| 1 | 250+150+200 | 600 | 直接作業時間 |
| 2 | ÷=1200000= | 2000 | 実際配賦率 |
| 3 | ×250= | 500000 | 2000×250 |
| 150= | 300000 | 2000×150 | |
| 200= | 400000 | 2000×200 |
電卓操作方法(カシオ)
| 操作方法 | 電卓表示 | 意味 | |
| 1 | 250+150+200 | 600 | 直接作業時間 |
| 2 | ÷÷1200000= | 2000 | 実際配賦率 |
| 3 | ××250= | 500000 | 2000×250 |
| 150= | 300000 | 2000×150 | |
| 200= | 400000 | 2000×200 |
解説(逆数計算)
上記操作で鍵となるのは、逆数計算です。シャープの電卓では「÷=」、カシオの電卓では「÷÷」の操作のことです。この操作を行うと「何とか分の何々」という計算になります。
たとえば、5÷2=と操作すると、2.5
これが、(シャープの場合)5÷=2=と操作すると、0.4になります。つまり「5分の2」という意味ですね。
この機能、実に便利です。電卓で割り算するときは、通常、分子を先に入力し後から分母を入力します。ですから分母の計算が先にくるときは、いったんその数値をどこかに仮置きしなければいけません。逆数計算を使うと、この仮置きが必要なくなります。とても便利です。
逆数計算を使って配賦率を求める
では、この逆数計算機能を使い実際配賦率を求めてみましょう。
1,200,000円÷(250時間+150時間+200時間)=2,000円/時間
電卓で、250+150+200 と計算し、そこで(シャープの場合)「÷=」と操作してみましょう。電卓には「0.0016666…」と表示されているはずです。これは、600分の1を表しています。つまり、合計値600の逆数です。
続けて、1200000= と入力します。すると、120万円に600分の1を掛けたことになります。結果として、120万円÷600時間=配賦率2000円の計算をすることが出来たわけです。
解説(定数計算)
続いて定数計算を行って各製造指図書の配賦額を求めます。
シャープの電卓では、「A×B」という掛け算を行うと、自動的に「A×」の部分が記憶されます。これが定数計算です。具体的には「2000×250=」と計算した時点で「2000×」の部分を電卓が覚えてしまうわけです。そのため、以降は「2000×」を省略することが出来ます。つまり、150= 200= とだけ操作すればいいわけです。この機能も、非常によく使います。
なお、カシオの電卓では、「A××」と×を2回押すことで、Aを掛けることを記憶させることができます。そのため、少し操作体系が異なっています。
キャッシュ・フロー見積法(スライド23ページ)
貸付金50,000円(利率5%、利払い年1回、返済期間3年)について、返済期間を2年延長し利率を1%にする旨の申し出がありそれを受けた。キャッシュ・フロー見積法により貸倒見積額を計算しなさい。
解き方
以下のキャッシュ・フローを割引率5%で現在価値に割引くことで計算できます。
| CF(単位:円) | |
| 現時点*1 | △50,000 |
| 1年目*2 | 500 |
| 2年目 | 500 |
| 3年目 | 500 |
| 4年目 | 500 |
| 5年目 | 50,500 |
*1 貸付金50,000円
*2 貸付金50,000円×利率1%=500円
電卓操作方法(シャープ)
| 操作方法 | 電卓表示 | 意味 | |
| 1 | 1.05÷ | ||
| 2 | =====GT | 4.32947… | 5%,5年 年金現価係数 |
| 3 | ×500 M+ | 2,164.73… | 利息分現在価値合計 |
| 4 | 50000÷1.05 | ||
| 5 | =====M+ | 39,176.3… | 元金の現在価値 |
| 6 | RM | 41,341.046… | 貸付金の現在価値 |
| 7 | -50000=+/− | 8,658.9533… | 貸倒引当金の額 |
電卓操作方法(カシオ)
| 操作方法 | 電卓表示 | 意味 | |
| 1 | 1.05÷÷1 | ||
| 2 | =====GT | 4.32947… | 5%,5年 年金現価係数 |
| 3 | ×500 M+ | 2,164.73… | 利息分現在価値合計 |
| 4 | 1.05÷÷1 | ||
| ===== | 0.783526… | 5%,5年 現価係数 | |
| 5 | ×50000 M+ | 39,176.3… | 元金の現在価値 |
| 6 | MR | 41,341.046… | 貸付金の現在価値 |
| 7 | -50000=+/− | 8,658.9533… | 貸倒引当金の額 |
200%定率法(スライド25ページ)
次の条件にもとづいて当期(2015年3月31日)の減価償却費および、B/Sに表示される減価償却累計額を求めなさい。
| 取得日 | 2012年4月1日 |
| 取得価額 | 240,000円 |
| 償却方法 | 200%定率法 |
| 耐用年数 | 5年 |
| 保証率 | 0.10800 |
| 改訂償却率 | 0.500 |
解き方
- 簿価一覧を作成します。
- 上記簿価一覧にもとづいて減価償却費と減価償却累計額を求めます
電卓操作方法
| 操作方法 | 電卓表示 | 意味 | |
| 1 | .6×240000= | 144000 | 2013年3E簿価 |
| 2 | = | 86400 | 2014年3E簿価 |
| 3 | = | 51840 | 2015年3E簿価 |
| 4 | = | 31104 | 2016年3E簿価 |
上記はシャープの場合です。カシオは、1を「.6××240000=」と操作します。
| 操作方法 | 電卓表示 | 意味 | |
| 1 | 86400−51840= | 34560 | 減価償却費 |
| 2 | 240000−51840= | 188160 | 減価償却累計額 |
解説
まず、償却率を求めます。5年の200%定率法ですから、1÷5年×200%=0.4 です。したがって、簿価は、毎期0.4(40%)償却されて、60%残るはずです。ここで電卓の繰り返し機能を使って毎期の簿価を計算します。これは下書き用紙に書いておきます。
続いて、答案要求されている箇所がどこかを慎重に検討します。本問の場合、2015年3月31日時点の減価償却費を問われているので、その前期末の簿価から引けば計算できます。また、減価償却累計額は、最新の簿価を取得原価から引けば計算できます。
“簿記受験のための電卓講義” に対して10件のコメントがあります。
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逆数計算のやり方
大変勉強になりました。ありがとうございました。
今までいちいちメモリーに入れていました…。
うん、逆数計算は、試験でも実務でも本当に大活躍なので、ぜひ活用してください。
記事にも書いたけど、逆数計算で配賦率を計算して、定数計算で配賦額を計算するとか、もう最強。
定数計算のやり方は某スクールのK社長の講義でお話しされていましたけど、逆数計算のやり方は工原で大活躍しそうですよね。工原の授業ではYさんは教えてくれませんでした。もっと早く知りたかった…
わたしは簿記を始めるときに、堀川洋先生の『日商簿記受験生のための電卓操作完ぺき自習帳』というのを買っていたので(3級の勉強も堀川先生のテキスト ちなみにこちらはおすすめはできません笑)独学であるにもかかわらず左手うちを練習し電卓の機能を習得するよう努めました。
学校に行ったら普通に教わることなのかもしれませんが、簿記の市販テキストはそういうこと書いてないですよね…
堀川先生ですかぁ。
昔(7,8年位前)ですが、「税理士試験受験生のための税法と財務諸表論の理論暗記」という本をもらったのですが、まあ、なんというか、私には合わない本でした。
理由など関係なく、ひたすら暗記しましょう。声に出しましょう。気合です。根性です。役に立つかより暗記です。・・・という内容の本で、ある意味衝撃を受けたものでした。
あと、電卓左手打ちですか・・・よく聞く話ですけどね。まあ、必要ないと思いますよ。
電卓に消費する時間なんて試験全体で見ればほんのわずかです。どれほど電卓を練習しても、そのわずかな時間が2,3分減るだけです。ほとんどの時間は「どうやって仕訳するんだっけ?」と考えているのです。1つでも仕訳でつまづくと、5分、10分すぐに経ってしまいます。電卓左手打ちやるくらいなら、仕訳の1つも覚えた方が有効だと思います。まあ個人的な意見ですが。
ちなみに、スクールで私が講義をするときは「本試験のとき、電卓は早く打たない方がいい。あえてゆっくり打つくらいでちょうどいい。絶対に間に合うから。その代わりノーミスで」とよく言ってました。
ありがとうございます。堀川先生の本は本質理解には遠く、今は遠回りしたと思っています。今の方が断然理解が早く、楽しいです。
右利き右打ちでも、あまり差はないんですね…ゆっくり打つことには同意です。またよろしくお願いします。
電卓講座の感想ですが、この時期に掲載いただき、あらためて良い復習になりました。
特に、スライドの最後の25~26ページ 実践編4(定率法)の計算で、Step2「減価償却費と減価償却累計額を求める」のところで、
「減価償却費は、期首と期末の簿価の差額 86400-51840=」で、「減価償却累計額は、取得価額と期末の簿価の差額 240000-51840=」で、求める計算式となっており、
「B/Sの費用性資産が減価償却されてP/Lの減価償却費になる」というイメージが頭の中にパッと描けることが重要なんだなと、今更ながら再認識することができました。
>電卓講座の感想ですが、この時期に掲載いただき、あらためて良い復習になりました。
いえ、読んで頂きありがとうございます。
そうなんです。今の時期だからこそ、電卓講座開催しました。試験直前じゃあ意味ないですから。
>「B/Sの費用性資産が減価償却されてP/Lの減価償却費になる」というイメージが頭の中にパッと描けることが重要なんだなと、今更ながら再認識することができました。
ああ、指摘されて、気付きました。
これ自分の中で当たり前になりすぎちゃっていて、解説を端折っちゃっているんですね。ちゃんと解説書いた方がいいですね。追記します。ありがとうございます。
スライドの9ページ目、%キーの説明ですが、
「100×0.6=」「100×60%」ではなく、
「500×0.6=」「500×60%」ではないかと。
ご指摘ありがとうございます。修正しました。