第156回日商簿記1級・連結会計の解き方

今回の連結会計、どこかで見たことがあるぞ。

過去問を探したところ、141回の会計学・第3問がそっくりでした。やっていた人は有利だったと思います。

本問は、連結損益計算書(以下、連結PL)のみが問われていました。当然ながら、解くために必要な情報は、連結PLに関連するもののみです。たとえば子会社(以下、S社)の純資産などは必要ありません。

こういった「これを解くためには、この情報が必要」を意識することが大切です。効率よく解くための鍵となります。

市販テキストは、開始仕訳から始まって、期中仕訳、成果連結と、とにかく順番通りに仕訳を切って集計するという解き方で書かれていますので、その手順通りにしか解けない人もいるかもしれません。しかし、それではいけません。

本問で苦戦した人は、解き方の見直しを検討してみましょう。

連結会計は集計テクニックで決まる

他社で解答解説会をやっていたので見てみました。まあ、普通なのですが、ちょっと違和感を覚えました。

仕訳がざっと書かれていて「これを集計すれば出来ますね」と、そういった感じの説明です。確かにそのとおりなのですが…

そういう解き方ですと、かなり手数が増えてしまいます。手数が増えるということは、それだけ時間が掛かるということです。手数が増えるということは、それだけミスをする可能性も高くなります。同じ結果を得られるなら、手数は少なければ少ないほどいいのです。

仕訳が出来ることは大切です。しかし連結はそれだけが全てではありません。いかに効率よく集計するかとか、無駄な計算をしないかといった集計テクニックも大切です。

そのあたりを解説しつつ、実践的な解き方を紹介したいと思います。

実践的解き方

では、本試験中に何を考えてどのように解いたのか、実際のところを紹介していきましょう。

何をするのかを確認

まずは、答案用紙を確認します。ああ、連結だなと思います。

それではとりあえずタイムテーブル書くかと、年度を確認します。支配獲得が20X1年で、当期末が20X3年です。下書用紙にタイムテーブルを用意します。

で、S社の純資産はどれ?と思って問題文を読んでいくのですが書いてありません。おかしいな。そこで思います。そもそも、これ、何を作ればいいんだ?BS?PL?SS?

改めて問題文をよく読むと、連結PLを作れとのこと。ああそうか。じゃあタイムテーブル必要ないじゃないかと。ようやくここで気付きました。

タイムテーブルを書かないということは、「のれん」の情報が必要です。問題文に書かれているはず、と思い読み進めていきます。「支配獲得時にのれんが160,000千円計上された」と書かれていました。20年で償却とのことですから、もう、この時点で答案用紙に「のれん償却額8,000」って書いてしまいます。

評価差額の実現

連結PLを作るなら、成果連結だけを処理すればOKです。となると、普通に作問すると簡単な問題にしかなりません。どこかでひねってくるんだろうなと思って問題文を読み進めていくと、評価差額の実現論点が登場しました。なるほど、ここでちょっと難易度を上げてきているわけです。

支配獲得時に土地に100,000千円、商標権40,000千円(残存8年)、建物50,000千円(残存10年)の時価評価差額があった。

先にも書きましたが、この論点の初出は141回です。今から5年前。このときは「これは難しいから捨てちゃっても大丈夫です」なんてスクール講師は言ってましたが、あれから、もう3度目の出題です。さすがに今は出来ないとまずいです。

評価差額の実現を仕訳にすると次のとおりです。

土地 100,000 評価差額 190,000
商標権 40,000    
建物 50,000    
利首 5,000 商標権 10,000
減価償却費 5,000    
利首 5,000 建物 10,000
減価償却費 5,000    
非株 4,000 利首 2,000
    非株PL 2,000

しかし。

こういった仕訳を書いて、集計するような解き方はおすすめしません。連結PLしか聞かれていないってことは、当期の費用と収益だけを集計すればいいわけです、具体的には減価償却費と非支配株主持分に帰属する当期純利益(以下、非株PL)だけですね。

評価差額の実現があったら、(PL上の連結修正仕訳は)残存年数にもとづく減価償却をやればいい」これだけ知っていれば秒殺です。

商標権は8年で40,000千円ですから減価償却費は5,000千円です。建物は10年で50,000千円ですから、こちらも減価償却費は5,000千円。これらを個別PLに足すだけです。知ってれば秒殺。

また、合計10,000千円の減価償却費が計上されたわけですが、すべてを親会社が負担する義務はありません。20%は非株の持ち分ですから、この減価償却費のインパクトを弱める方向(つまり貸方)に非株PL2,000千円を計上すればいいわけです。これで、評価差額の実現関連の処理はおしまいです。

受取配当金の処理

2.20X3年度においてP社およびS社が支払った配当金は、それぞれ70,000千円および50,000千円であった。

答案要求が連結PLですから、P社の払った配当金は関係ありません(連結PLに影響を与えません)。影響するのは、S社だけです。
つまり、S社は配当金を50,000千円払っていますが、うち、80%の40,000千円はP社がもらっているわけです。P社の個別PLの受取配当金(60,000千円)はこの40,000千円を含んでいますからこれを消せばいいのです。さっそく答案用紙に20,000千円を書いちゃいます。

商品売買と見本品費への振り替え

3.P社は、20X3年度においてS社に対して350,000千円の商品を売り上げ、このうち30,000千円の商品はS社が広告宣伝用に消費した

ここで、おや?っとなりました。

なにはともあれ、ダウンストリームで350,000千円の売上があるので、これを消します。売上高と売上原価からそれぞれ引けばOKです。問題はその次です。

「30,000千円の商品はS社が広告宣伝用に消費した」

なんでしょうこれは。やったことがありません。初めて見るパターンです。なるほど。ここでもちょこっと応用パターンを入れてきましたか。1級の威厳を保とうとしているのでしょう。そんなことしなくて、いいのにね。

ちょっと考えました。

もし、この30,000千円の商品が期末在庫として残っていたなら、利益率30%なので9,000千円の未実現利益を消さなければなりません。仕訳にすると「売上原価9,000/商品9,000」です。

ところが見本品費として使ってしまったわけです。ということは、個別上は販売費30,000千円となっていますがグループ全体では販売費21,000千円になるはずです。外部からは21,000千円で買ってきた商品を見本に使っただけですから。

そこで「販売費を9,000千円引けばいいんだな」と、そこまではすぐに気付きました。仕訳にすると「??? 9,000/販売費 9,000」です。

悩んだのは相手勘定です。なんだろうと。まあ、商品か、売上原価のどちらかなのでしょうが、よく分かりません。そこで考えてみたわけです。

これ、見本に使ったから販売費にしてますが、もし、倉庫においてあったら商品にしているはずですよね。片や資産で片や費用ですから、まるで違うものに見えますが、そもそも資産と費用って、どちらも収益を稼ぐために役立つものという意味では同じなわけですよ。

資産(厳密には費用性資産)は翌期以降に役立つもので、費用は当期に役立ったもの。その違いです。

ということは「売上原価9,000/商品9,000」をベースにして、商品の代わりに販売費にすればいいだけなんじゃないの?と。そう考えたわけです。つまり「売上原価9,000/販売費9,000」ということですね。

ちゃんと検証作業をしようかなとも思ったのですが、本試験中にそんなことやって時間使うの危ないなと思って、検証せずに、それで行こうと決意しました。(結果、あってました)

棚卸資産の未実現利益の消去

3.20X2年度末および20X3年度末において、S社の商品期末棚卸高のうちP社から仕入れた商品がそれぞれ20,000千円および24,000千円含まれていた。P社の売上高総利益率は、各年度を通じて30%であった。

いや、さすがにこれは楽勝です。税効果のないダウンストリームです。2級レベルです。プロ簿記の時短テク使えば瞬殺ですね。

(24,000千円−20,000千円)×利益率0.3=1,200千円 を売上原価に足すだけです。

役務収益と役務原価の相殺消去

4.S社が20X3年度において計上した支払手数料のうち7,000千円は、P社に対して支払ったものである。P社は、これを役務収益として計上している。当該役務収益に対応する役務原価5,250千円は、その他の営業費用に振り替える。

一瞬考えました。なんだこれはと。

やったことがありません。しかし、要するにP社からS社に何かサービスを提供し対価をもらったけど、グループ全体では、それはなかったことにしたいってことですよね。

こういうときは個別上で何やっているのかを考えて、それを消せばいいのです。個別上の仕訳を考えてみました。

S社
支払手数料7,000/現金預金7,000

P社
現金預金7,000/役務収益7,000
役務原価5,250/労務費のような何かの費用5,250

ということですね。これを消せばいいのです。「労務費のような何かの費用」は問題文に「その他の営業費用に振り替える」って書かれていますからそのとおりにします。

本来、本試験で初めて見るような処理は捨て問でいいと思います。ただ、このようにちょっと考えれば現場対応力で何とかなりそうなものはトライしてみる価値あります。特に連結は、個別での処理を消すだけというのが多いので、意外と簡単だったりします。

受取利息と支払利息の相殺消去

5.P社が20X3年度において計上した受取利息のうち9,000千円は、S社に対する貸付金に生じたものである。

2級レベルですね。受取利息と支払利息を9,000千円づつ消すだけです。

償却性資産の売却(アップストリーム)

6.S社は、20X3年度の期首に車両運搬具(帳簿価額50,000千円)をP社に70,000千円で売却した。当該車両運搬具は、残存耐用年数5年にわたり定額法によって減価償却する。

これも楽勝とまでは言いませんが、基本レベルです。

考え方として、前期末時点では個別と連結でズレはなかったのが、当期末には16,000千円のズレになった。これを消せばいいということです。

個別上、当期末の簿価は56,000(=簿価70,000−減価償却費14,000)です。一方、連結上は40,000(=簿価50,000−減価償却費10,000)です。ズレは16,000千円。

このズレ16,000千円は、20,000千円の売却益を取り消し、一方で、それだと減価償却のやりすぎになってしまうので、やりすぎた減価償却費4,000を戻す感じです。

ということで、売却益20,000を消して、減価償却費も4,000消せばOKです。

また、アップストリームですから、インパクトを弱める方向(つまり貸方)に非株PL3,200千円(=16,000千円×0.2)を計上します。

きちんと仕訳するなら、次のとおりですが、繰り返しますが、いちいちこのような仕訳を書くまでもありません。

売却益 20,000 減価償却費 4,000
    車両 16,000
非株 3,200 非株PL 3,200

 

T社の子会社化

7.P社は、20X3年度末にT社の発行済株式総数の60%を1,000,000千円で取得し、同社を子会社とした。さらに、当該株式の取得に当たって、P社はコンサルテイング会社に支払手数料として60,000千円を支払っており、P社の個別財務諸表においてこれを子会社株式の原価に含めている。T社の識別可能純資産の時価は、2,000,000千円であった。

おお、また来ましたね。取得関連費用です。前回に引き続き2回連続です。個別上は取得原価に算入しますが、連結上は費用として処理します。

つまり、個別上はT株が1,060,000千円と計上されているわけですが、連結上はT株1,000,000千円、支払手数料60,000千円にすべきだという話ですね。まあ、結論から言えば支払手数料に60,000千円を足せばいいわけです。

ここで、もう、やることないよな、これでおしまいだ!と思い集計結果を答案用紙に次々に書いていきました。そうしたところ、貸方に1箇所記入欄が余ってしまいました。ん?なんだこれと。

思いつきません。なんか、やりそこねたことあったっけ?と考えましたが分かりません。もしや、と思って、念の為T社を支配したときののれんを計算してみました。

T社の識別可能純資産の時価が2,000,000千円でその60%を1,000,000千円で買ったわけだから…おお、負ののれん発生益が出ちゃいますね。なるほど。これですね。以上で、全部おしまいです。

ちなみに非株PLは、以下を集計して10,800千円です。

・個別PLのS社当期純利益80,000×0.2=16,000
・評価差額の実現:△2,000
・アップストリーム:△3,200

複数の処理が必要なのは、これと減価償却費、売上原価くらいですね。あとは単発処理なので簡単だったと思います。

第156回日商簿記1級・連結会計の解き方” に対して9件のコメントがあります。

  1. nabe より:

    富久田先生 誤植と思われます。
    >S社は配当金を50,000千円払っていますが、うち、20%の10,000千円はP社がもらっているわけです。
    P社持ち分は80%なので40,000千円を消すではないでしょうか?

    1. pro-boki より:

      ご指摘、ありがとうございます。
      おっしゃるとおり誤植です。修正しました。
      助かりました!

  2. チゲ鍋 より:

    解説記事ありがとうございます。

    もしよろしければタイムテーブルの書き方について
    基本的な部分からご説明いただけるとありがたいです。

    他サイトで見ても問題とのつながりがイマイチ見えなかったり
    説明が端折られていて途中で分からなくなってしまいました…

    1. pro-boki より:

      タイムテーブルの書き方を基本的な部分からですか…。

      市販の1級テキストなら、どれにでも載っていますよね。例えば、TACの簿記の教科書なら、「CHAPTER03連結会計I」の「5.支配獲得日後2年目以降の連結」に丁寧に解説されています。

      まずは、テキスト読みましょう。話はそれからだ。

  3. UNIT02 より:

    役務収益と役務原価の相殺消去に関して

    P社
    現金預金7,000/役務収益7,000
    役務原価5,250/労務費のような何かの費用5,250

    というのが個別上のP社の仕訳だと書かれていますが、
    現金預金7,000/役務収益7,000
    役務原価5,250/仕掛品or買掛金5,250
    が正しいのではないでしょうか?

    某予備校の模範解答が
    役務収益7,000/支払手数料7,000
    その他の費用5,250/役務原価5,250
    となっているので…

    1. pro-boki より:

      >某予備校の模範解答が
      >役務収益7,000/支払手数料7,000
      >その他の費用5,250/役務原価5,250

      は、そのとおりだと思います。正しいのではないでしょうか。異論ありません。

      それで、なぜ、この模範解答だと、
      P社の個別の仕訳における役務原価の相手勘定が、
      仕掛品or買掛金5,250になるのでしょう?

      私が何か勘違いしているかな?

  4. UNIT02 より:

    あ、すみません勘違いしてました。

    相殺消去の仕訳が
     役務収益7,000/支払手数料7,000
     その他の費用5,250/役務原価5,250
    となるのであれば、

    P社個別上の2つ目の仕訳の貸方側は問題文からはわからないので
    本来以下の仕訳のように???(不明)であって、
    役務原価5,250/???5,250
    その他の営業費用に振り替えてるのは「(貸方の)労務費のような何かの費用」ではなく
    「(借方の)役務原価」ですよね、ということを言いたかったんです。

    仕掛品or買掛金というのはテキストの設例で出てくるので機械的に相手勘定にもってきてしまいました。

    1. pro-boki より:

      すみません、言わんとしていることがいまいち分からないのですが、

      おっしゃるとおり、P社個別上の役務原価の相手勘定は不明ですよ。
      P社の記帳次第ですよね。

      ①人的サービスを提供したなら、
        労務費XXX/現金などXXX としておいて、
       その労務費XXXのうちの一部が役務収益獲得に貢献してたなら当該部分5,250を振り替えます。
        役務原価5,250/労務費5,250
       労務費の部分は経費勘定とかほかの営業費用の科目使ってるかもしれませんが。

      ②もしくは、何か時の経過とともに完成するサービスを提供していてそれを作っている最中なら
        材料費XXX/買掛金XXX
        労務費XXX/現金などXXX
        経費XXX/現金などXXX
        仕掛品XXX/材料費XXX
        仕掛品XXX/労務費XXX
        仕掛品XXX/経費XXX
        役務原価5,250/仕掛品5,250

      となるのではないでしょうか。ですから、仕掛品の可能性もありますね。

      いずにして、貸方は不明であり、可能性として①をイメージして解説書いています。

    2. UNIT02 より:

      解説いただいた内容で納得できましたありがとうございました!

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