シリーズ最終回・特殊商品売買のあれこれ

特殊商品売買のあれこれ
昨年末からスタートした特殊商品売買シリーズもいよいよ最終回。本試験を見据えるなら、このシリーズの設例を繰り返し解くのが効果的だ。ここでは、これまで紹介しきれなかった特殊商品売買のちょっとしたテクニックと関連コラムを紹介しよう。
会計処理方法の判別の仕方
このシリーズでは、特殊商品売買を会計処理別に解説してきた。未実現利益整理法、対照勘定法、手許商品区分法(期末一括法、その都度法)の4つだ。本試験でも、特殊商品売買が出題されたら、まずは、会計処理方法を確認しよう。ここでは、もし、問題文に会計処理方法の指示がなかったとき、どのようにして、決算整理前残高試算表(前T/B)からそれを見抜くのか、その方法を紹介しよう。
未実現利益整理法
未実現利益整理法は、前T/Bに繰延利益控除といった勘定科目が並んでいる。そこから判断できる。
対照勘定法
対象勘定法は、委託販売契約や◯◯仮売上といった、勘定が並んでいる。そこから判断できる。
手許商品区分法
ちょっと難しいのが手許商品区分法だ。期末一括法なのかその都度法なのかで迷うことがある。期末一括法は、積送(または試送)すると積送品(試用品)勘定がどんどん大きくなる。しかし、販売しても全然減らない。なぜなら売上原価への振替処理は期末に一括してやるからだ(だから期末一括法という)。よって、積送品勘定(試用品勘定)の額が大きいことが特徴だ。
一方で、その都度法は、販売の都度、積送品勘定(試用品勘定)から売上原価(期中は仕入勘定)に振り替えてしまう。だから、売れば売るほどその額は小さくなっていく。そしてその分、仕入勘定が大きくなっていく。だから、その都度法は、積送品勘定(試用品勘定)の額が小さく、仕入勘定の額が大きいのが特徴だ。
この見方でほぼ間違いなく特定できるので、ちょっと頭の片隅にでも置いておいてほしい。
委託販売と出版社の話
さて、少し実務関連の話をしたいと思う。
みなさんは、委託販売と言われて思い付くのはどんな商売だろう。私は、某出版社に勤務するまで、出版社は委託販売だと思っていた。事実、出版社と本屋さんの間には、問屋さんが存在するのだけれど、これは取次(とりつぎ)という。つまり、売買ではなくて取り次いでいるだけですよ、という意味合いなのだと思っていた。
某出版社勤務中、出版営業部では「これは、注文分、これは委託分」なんて会話がされていた。だから、すっかり、注文分(書店や学校からの注文)は売買取引で、委託分は、委託販売なのだと思っていた。
しかし、実際には違うんだよね。結論から言えば、某出版社では、出荷分全てを売上計上していた。委託販売は、原則、受託者(本屋さん)が販売した分のみ売上計上するもの。そうではなくて、取次に出荷した時点で売上を立てていたんだ。そして、後で返品されてくるわけだけど(ちなみに業界の平均返品率は40%弱)返品されたら、そこで始めて売上をマイナス計上するんだ。
これって全然、委託販売じゃない。普通の売買取引だ。法的には認められているようだけど、会計的には、あまりいいやり方じゃないと思う。だって、例えば今期の経営成績が悪ければ、決算直前に、売れるかどうか分からなくても、とにかくたくさん刷って、無理やりにでも卸しちゃえば売上(収益)になっちゃうんだよ。まあ、翌期にドバっと返品されるけどね。でも、少なくとも今期の決算書はよく見せることが出来る。
ただ、一度、このサイクルに入ると、翌期も同じことしないといけなくなる。つまり、翌期は返品による売上のマイナスがあるから、普通にしていたら赤字になってしまう。何とかしなきゃいけない。特に資金繰りが厳しいと赤字にしたくない。赤字が続くと銀行からも睨まれて融資条件厳しくなる。ということで、「とにかく本を出す」ことが目的になってしまう。もう内容とか後回し。出版業界というのは、こういう負のループに入ってしまいやすい業界なんだ。構造的な問題だね。
出版業界は倒産が多い。もちろん出版不況がもっとも大きな理由だけど、こういった倒産を誘引するような会計上の仕組みにも問題もあると思うんだよね。ということで、変な話だけど、出版社は本来、委託販売(書店は受託販売)で会計処理すべきだと思う。すると決算書のお化粧が出来なくからね。結果、それが健全な経営のインセンティブになる(というか不健全な経営をするインセンティブが働かなくなる)と思うんだ。そう考えると、やっぱり会計ってすごいよね。
委託販売とデパートの話
さて、もうひとつ委託販売・受託販売といって思い付くのはどんな商売だろう。私は、デパートもメーカーの委託販売なんだろうと思っていた。だってデパートって、基本、場所貸しでしょ。内装工事から看板まで全てメーカー持ちだし、店員さんもデパートの社員じゃなくてメーカーの派遣。で、商品の陳腐化リスクもメーカー負担なんだから、デパートは何らリスクを負ってない。
売買取引というのは、仕入れが生じるわけで、そうすると、売れない、流行遅れになる、盗難にあう、など様々な仕入れリスクを負うことになるわけだ。販売代金を収益計上出来るのは、そういうリスクを負う代償だ。その点、受託販売は仕入れリスクが無いから販売代金を売上にはできずに、手数料だけを収益にする。そういうイメージを持っていたんだ。
その考えからすれば、デパートなんて受託販売(メーカーの委託販売)でしょうと。そう思い込んでいた。と、思って調べたら(というか顧問税理士に聞いたら)これも違うんだって。一般販売として会計処理しているんだって。つまり、手数料だけを収益計上するのではなく、お客さんへの販売代金を売上計上しているんだ。正直、驚いた。
じゃあ、デパートは仕入れリスクを負っているのかというと、それも違うらしい。デパートはそういうリスクは負わない。どうしているのかというと、お客さんに売れる直前までは、仕入れじゃなくて、単にその場所に商品が置いてあるだけ、という考え方をするらしい。そして、売れた瞬間に、それと同時に仕入れたことにするんだって。だから、売れる前のものが盗難にあおうが、汚損しようが、そんなことはデパートの知ったこっちゃない。仕入れてないんだからデパートのものじゃない。メーカー負担だ。だけど、売れた瞬間に仕入れたことにするから、販売代金をデパートの売上に出来るんだって。はぁ〜なるほど。すごいなデパート。
これを、売上仕入とか消化仕入というらしい。いやいや、これ、インチキでしょ。と思ったら別に問題無いんだって。う〜ん、会計の信頼性って何なのかね。これじゃあ、実態とかけ離れた売上高になっちゃうじゃないのと思うけどね。まあ、利益は一緒だから税務当局的にはどっちでもいいんだろうけどね。
ちなみに、これは日本の会計基準だから許されていて、IFRS基準では利益分のみ収益計上すべきという見解らしい(つまり受託販売と同じ)。まあ、そうだよね。ということで、IFRSが本格導入されるとデパートの売上は激減するかもしれないね。
さいごに
こんな感じで、学習した論点に関連する経済ニュースなんかを意識的に探して読んだりすると面白いと思うよ。1級まで学習していると、日経新聞とか経済週刊誌(週刊ダイヤモンドとかエコノミストなど)の記事のほとんどを理解できるようになるからね。最近だと東芝の不正会計(というかもうこれ粉飾としか言いようが無いけど)なんて、最高の教材だよ。そして、気付くとそれが記憶の定着と知識の深みにつながってるんだよね。おすすめ。
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