みんな大好き!包括利益。うそつきました。

包括利益を勉強する前の話
包括利益の計算(包括利益計算書の作成や連結S/Sの記入など)は、分かっちゃえば極めて簡単だ。機械的にサクッと解ける。
でも、それは、純資産の構造とか、基本的な連結がちゃんと分かっていることが前提。包括利益が分からない人は、それ以前の連結財務諸表がよく分かっていないという可能性がある。
あと、解くだけなら簡単だけど、その理論的背景までも習得しようとなるとなかなか大変だ。そもそも利益ってなによ?というところから勉強しなければならない。
前提として概念フレームワークをさわりだけでいいから勉強しておくとよい。理解しやすくなる。
あと、日本の会計が大事にしてきたこと(ざっくりいうと企業がどれだけ本業を頑張ったかを財務諸表に表したい)と、国際会計基準が求めていること(ざっくりいうと本業だろうと、たまたま買った株が値上がりしていようと、何でもいいから、どれだけ儲かったかが知りたい。M&Aをする企業や投資家目線で見ている。)の相違点に注目すると、何をしたいのかがわかりやすくなる。
このあたり、かなり面白い。いつか、しっかり記事を執筆したいと思う。
それはそうと、ここでは本試験に効く包括利益の解法テクを紹介しよう。
そもそも包括利益ってなんなのか
包括利益の解法テクを紹介しようとは思ったものの、とはいえ、そもそも、包括利益ってなんなのか?それ自体、ふわっとした理解しか出来ていない人もいるだろう。そんな状態で小手先のテクだけを学んでも何も力にならない。
ということで、そもそもの話だけど、包括利益が何かを超簡単に説明する。
ちなみに、市販テキストを見るとこんな感じで書かれている。
包括利益とは、ある企業の特定期間の財務諸表において認識された純資産の変動額のうち、当該企業の純資産に対する持分所有者との直接的な取引によらない部分をいう。包括利益のうち当期純利益及び少数株主損益に含まれない部分を、その他の包括利益という。(包括利益の表示に関する会計基準)
いや無理でしょう。市販のテキストはこの文章をベースに、噛み砕いて解説しようとしているけど、普通は頭が拒否反応示して受け付けないと思う。
確かに大事なんだけどね。物事には順序っていうのがある。ここから入っちゃだめ。ということで、基準はさておき、誰でもわかる普通の感じで説明してみる。
超簡単な包括利益の例
要するに今まで利益っていうと、商品仕入れて販売して、そこから得られたものを利益と言ってるわけなんだよね。
ちょっと細かい事言うと「何をもって販売と言うか」が難しいのだけど、まあ、商品を相手に引き渡して、対価が確実にもらえる状態とみなせるなら、販売できたってことにしようというルールがある(これを実現主義っていう)。つまり、今までの利益って、実現した利益だけのことなんだ。
でもね。例えばその他有価証券を買って、これが値上がりした場合、どうすればいいんだろう。買っただけで、まだ売ってない。ただ値上がりしただけ。含み益がある状態。
この含み益だって利益って言えば利益でしょ。この実現利益と含み益をあわせた新しい利益の概念を作ることにした。これが包括利益。極めて簡単。
たとえば、1,000万円を元手に何か商売を始めたとする。うち、200万円は株を買った。残りの800万円は商品仕入とか販管費に使った。その結果、当期は販売によって300万円利益が出た。それだけじゃなく株は220万円に値上がりした。
さて、当期の利益はいくらかって話。
当期純利益(実現利益)は300万円、含み益は20万円、包括利益は320万円、とこういうこと。簡単。難しく考えてはいけない。
ちなみに、ここではわかりやすさ優先で”含み益”って書いたけど、会計的には「その他の包括利益」っていう。英語だとOCI(Other Comprehensive Income:アザー・コンプリヘンシブ・インカム)っていう。
包括利益を勉強する前にこれも知っておいてほしい
知ってもらいたい理論背景としては、上記くらいでまあ大丈夫なんだけど、もうひとつ、大事なことを思い出したので書いてみる。
利益ってどうやって算出するかって話。
企業会計原則っていう会計の憲法みたいなやつ(だいぶ古くなっちゃったけど)は、これ、明確にP/L重視で、要するに収益から費用を引いたものが利益だよって、定義している。
でもね、同時に、利益はこうも計算できる。
利益=期末のB/S純資産−期首のB/S純資産
そして、ここ、大事なところなんだけど、このP/Lから出した利益とB/Sから出した利益は基本同じ額になる。
これは、よく水の入った桶で説明される。もともと100リットル入った桶があって、80リットル入れて、60リットル出したとする。結果、桶には120リットルの水が入っている。
さて、正味、どれだけ水は増えたか(利益が出たか)を考える。
PL的に考えるなら、入れた水(収益)80−出した水(費用)60=利益20
BS的に考えるなら、最後の水の量120−最初の水の量100=利益20
どちらも同じだよねってこと。当たり前。実は、こんな一見すると当たり前のようなことにも名前がついている。これをクリーン・サープラスという。サープラスって利益剰余金って意味なので、無理やり訳すと利益剰余金の関係がB/SとP/Lできれいな状態にあるという感じ。
で、理由はさておき、日本の会計は、P/L推し。
で、国際会計基準は、B/S推し。
でも、まあ利益に関していえば、P/L推しでもB/S推しでも、どちらでも同じ金額になるんだから、いいじゃない、って感じなわけ。
と思ってたら、ここで問題が生じた。
そう。含み益。
P/Lベースで利益を出すと、そこには含み益は入れてもらえない。
B/Sベースで利益を出すと、含み益は当然にカウントされる。というか自然に入ってしまう。
つまり、含み益があると、P/Lベースの利益とB/Sベースの利益が異なってしまうわけ。つまり、クリーン・サープラスが崩れてしまう。この状態をダーティ・サープラスっていう。汚い利益剰余金?
で、これをなんとかしようよってことになった。そこで、色々工夫した。その結果、わかりにくくなったと。そんな感じ。
組替調整(リサイクリング)なんてまさにそう。
ねじれた状態のとき、ねじれを修正する方向に行くのではなくて、ねじれ状態を維持しながら、なんとか体面を保とうとして、むちゃくちゃ分かりにくくなったという感じ。
このあたりは、とりえず1級の試験対策的にはスルーしても大丈夫。
包括利益を勉強する前にこれも知っておいてほしい2
あと、包括利益の記事をマスターする前に、もう1つ知って欲しいことがある。
用語だ。会計は用語を大事にしてほしい。用語の理解がふわっとしている方は今一度正確な用語の意味を勉強してほしい。それだけで、今まで甘い理解だった論点がしっかり分かったりするから。
ここで、知ってほしいのは、つぎの5つだ。
- 当期純利益といえば、P/Lで算定される実現利益のこと。大事なことは、会計期間(ここでは1年間とする)の分ということ。累積されたものじゃないよ。
- 利益剰余金といえば、B/Sの純資産に計上される実現利益のこと。大事なことは1年分ではなくて、累積されたものってこと。
- 評価・換算差額等といえば、(個別F/Sの)B/Sの純資産に計上される含み益の表示される場所のこと。大事なことは1年分ではなくて、累積されたものってこと。
- その他の包括利益といえば、連結包括利益計算書(C/I)で算定される含み益のこと。大事なことは、1年分ということ。累積されたものじゃないよ。
- その他の包括利益累計額といえば、(連結F/Sの)B/Sの純資産に計上される含み益の表示される場合のこと。大事なことは1年分ではなくて、累積されたものってこと。
上記の3と5は、個別F/Sか連結F/Sかの違いだけってこと。正確に覚えよう。
ごめん、長くなったので次回に続く
では、長い前置きはこれくらいにして、ここからは、本試験対策講座としよう。
小1時間勉強すれば、しっかりマスターできて、本試験でも十分対応できるすぐれものだ。
では、いくよ。本試験レベルのサンプル問題作ったので、それを使って見ていこう。
“みんな大好き!包括利益。うそつきました。” に対して5件のコメントがあります。
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包括利益がずっと得体のしれないものでしたが、この記事を読んでようやく何者かがわかりました。
ありがとうございます
メッセージありがとうございます。そう言っていただけると書いたかいがあるというものです。
包括利益の事を忘れるたびに、プロ簿記様にお世話になっています。
一つどうしても理解出来ない事があり質問させて頂きました。
この「みんな大好き!包括利益。うそつきました」の末尾に、ここで知って欲しい次の5つがあり
1当期純利益
2利益剰余金
3評価・換算差額等
4その他包括利益
5その他包括利益累計額
その中の、「3評価・換算差額等」で、大事な事は1年分でなくて、累積されたものとありますが、ここがいまいち理解出来ませんでした。
その他有価証券評価差額金を考えた時に
例えば
1年度末
その他有価証券取得価額 100円
期末価額 200円
その他有価証券評価差額金 100円
2年度末
その他有価証券期末価額 300円
その他有価証券評価差額金 100円
となり、累計の含み益で有れば2年度末のその他有価証券評価差額金は200円と表示されると思いますが、100円の表示となり累計ではなく当該1年分の含み益の表示になっているのではないかと思い、分からなくなってしまいました。
ぜひ解説頂ければ大変助かります。
当期が2年度だとして、
取得100→前期末200→当期末300 ってこと?
だったら、当期末のその他有価証券評価差額金は200だよ。
期首の再振替仕訳忘れてない?
早速のコメントありがとうございます。
勘違いしていました…
再振替はしてたのですが、1年度末に切った仕訳の
その他有価100/その他評差金100
を無かった事にしてしまっていました。
おかしくなりますよね。
意味のわからない質問になっていたと思います。大変失礼しました。