1級商会・純資産会計(分配可能額)

分配可能額はややこしい
分配可能額は、何度覚えても忘れてしまう論点No1だ。反論は認めない。そもそも、何を目的にこのような計算をしているのか分からない。どういう根拠であのような複雑な計算式になったのか分からない。だから、ただ単に覚えるしか無かった。しかし、あまり試験にも出てこないから、すぐに忘れる。毎回そのたびに覚え直した。いい思い出がない。
何を目的にこのような計算をしているのかは、この記事の冒頭の「債権者 VS 株主」を参考にしてほしい。これを読むだけでもだいぶ違うと思う。
手元にテキストがあったら、分配可能額の章を見てほしい。ね?訳分からないでしょ?どこが重要なのかといった解説の強弱もなく、なぜ、このような計算をするのかといった理論の説明もない。単に計算手順だけが書いてある。4種類のテキストを持っているけど、どれもだいたいそんな感じ。
そこで、ここでは、どこが重要で、なぜ、このように計算するのかの解説も含めて紹介する。ちなみに途中、難しくなるけど、頑張って最後まで読んで欲しい。後半で魔法のように理解できる解説を書いたから。
大まかな手順を理解する
まず、おおまかな計算手順を理解しよう。ざっくり3つのステップに分かれている。Step.1は必須だ。剰余金の計算が出来ないと話にならない。そして、本試験を考えたら、Step.2まで出来れば合格圏だ。Step.3までマスターすればパーフェクトだけど、本試験ではそれほど重要性は高くないだろう。
Step.3の「のれん等調整額」はいくつかのパターンがある。これらを全部覚えようとするから訳が分からなくなる。もっとも基本的な計算パターン1種類だけを覚えれば十分だ。断言する。それだけで試験対策としては万全だ。心配しなくていい。テキストに書かれている他のパターンは覚えなくていい。
Step.1 剰余金の計算
前期末の剰余金
分配時の剰余金
Step.2 自己株式に関する調整
分配時の自己株式の帳簿価額の控除
前期末から分配時までに処分した自己株式の処分対価の控除
Step.3 その他の調整項目
その他有価証券評価差額金の調整
のれん等調整額の控除
練習問題を使って実際に数字を動かしてみる
問題
次の資料にもとづいて、①前期末の剰余金の額、②分配時の剰余金の額、③分配可能額を求めなさい。
【資料1】前期末貸借対照表の一部
| 資本金 | 14,000 |
| 資本準備金 | 600 |
| その他資本剰余金 | 280 |
| 利益準備金 | 192 |
| 任意積立金 | 240 |
| 繰越利益剰余金 | 360 |
| 自己株式 | △60 |
【資料2】前期末から分配時までに行われた資本取引
- 株主総会により、資本準備金32の剰余金への振替えが決議された。
- 株主総会により、繰越利益剰余金からの配当160が決議された。
- 自己株式のうち40を48で処分した。
【資料3】資産の状況
のれんが29,400、繰延資産が180であった。
解答
① 前期末の剰余金の額:880
② 分配時の剰余金の額:744
③ 分配可能額:588
解説
Step.1-1 前期末の剰余金の計算
ここで言うところの剰余金とは、「その他資本剰余金」と「その他利益剰余金」のことだ。つまり、資料1では次の項目が該当する。
- その他資本剰余金 280
- 任意積立金 240
- 繰越利益剰余金 360
よって、合計の880が前期末の剰余金の額だ。
Step.1-2 分配時の剰余金の計算
前期末から分配時にかけて、次の資本取引が行われている。
| (資本準備金) | 32 | (その他資本剰余金) | 32 |
| (繰越利益剰余金) | 176 | (利益準備金) | 16 |
| (未払配当金) | 160 | ||
| (現金預金) | 48 | (自己株式) | 40 |
| (その他資本剰余金) | 8 |
上記仕訳を反映させた分配時の貸借対照表は次のとおりだ。
| 資本金 | 14,000 |
| 資本準備金 | 568 |
| その他資本剰余金 | 320 |
| 利益準備金 | 208 |
| 任意積立金 | 240 |
| 繰越利益剰余金 | 184 |
| 自己株式 | △20 |
よって、分配時の剰余金の額は、次のとおりだ。
その他資本剰余金320+任意積立金240+繰越利益剰余金184=744
Step.2-1 分配時の自己株式の帳簿価額の控除
自己株式があるときは、その額を剰余金から控除しなければいけない。したがって、控除後の額は次のとおりだ。
分配時の剰余金744−自己株式の簿価20=724
Step.2-2 自己株式の処分対価の控除
さらに、前期末から分配時までの間に自己株式を処分したときは、その処分対価を剰余金から控除しなければいけない。ここで、処分対価とは、【資料2】3.「自己株式のうち40を48で処分した」の48のことだ。したがって、控除後の額は次のとおりだ。
Step.2-1の724−自己株式の処分対価48=676
Step.3-1 その他有価証券評価差額金の調整
もし、その他有価証券評価差額金の借方残高(純資産での表示はマイナス)があるときは、その額を控除する。貸方残高のときは何もしない。本問は、その他有価証券評価差額金がないので何もしない。
Step.3-2 のれん等調整額
これがもっとも面倒。とりあえず、解法手順を示す。どのように解釈したら覚えやすいかは、後述する。
考え方としては「これだけは配当しちゃあまずいよという額」を資本等金額という。そして「これ、資産って言っているけど、財産的裏付けが無いからあやしいよなぁという額」をのれん等調整額という。 正確には、次のとおり。
- 資本等金額=資本金+資本準備金+利益準備金
- のれん等調整額=のれん×0.5+繰延資産
(いずれも前期末時点でのB/Sの金額によります。)
ここで、 A. のれん等調整額>資本等金額 なら、その超えちゃった分(=のれん等調整額−資本等金額)を剰余金から控除する。
ただし、B. のれんが巨額で、のれん×0.5>資本等金額+その他資本剰余金 なら、A.のことは無視して、「その他資本剰余金+繰延資産」の額を剰余金から控除する。(覚えられるかい!)
本問の場合、
- 資本等金額:資本金14,000+資本準備金600+利益準備金192=14,792
- のれん等調整額:のれん29,400×0.5+繰延資産180=14,880
A.より、のれん等調整額14,880>資本等金額14,792 なので、超えた分は88。
一方、B.は、29,400×0.5<資本等金額14,792+その他資本剰余金280 から満たしていないので、無視。
よって、分配可能額は、Step.2-2の676−88=588 ね、ややこしいでしょ。
試験対策としての分配可能額の求め方
上記問題で言えば、①前期末の剰余金の額、②分配時の剰余金の額は、出来ないとまずい。これらは全然難しくないから大丈夫だろう。要するに、その他資本剰余金+その他利益剰余金を計算できればOKなわけだ。前期末から分配時までに資本取引があったら、そのとおり仕訳を切ればいい。それだけだ。
で、③の分配可能額を算出するのだが、これは、次の3点だけ覚えておけば十分だ。それ以外は忘れていい。実際には、これだけでは不十分で、もっと複雑な条件があるのだが、そんなのはどうせ試験に出ないし、仮に出ても誰も出来ないので、埋没する。よって、これだけで十分だ。
- 自己株式があるなら引く。さらに自己株式を処分したならその処分対価も引く。
- その他有価証券評価差額金の借方残高があるなら、引く。
- のれん等調整額(のれん×0.5+繰延資産)が資本等金額(資本金+資本準備金+利益準備金)を超えてたら、その超えた分を引く。
ちなみに覚え方だが、1の自己株式と2のその他有価証券評価差額金の借方残高については、純資産の項目の中で△が付いている。△が付いているなら、引きたい気持ちになるでしょ。素直に引けばよろしい。覚えやすい。
繰り返すが、試験対策なら上記だけを覚えれば十分だ。本問もそうだし、過去問もこれだけで全て解ける。
魔法のように理解できる分配可能額の理屈
以上で話を終えたら、そこらへんのテキストと同レベルの解説になってしまう。(まあ、それでもテキストよりはだいぶ分かりやすいと思うけど)
ここからがプロフェッショナル簿記の本領発揮だ。なぜ、このような訳の分からない処理をするのか、出来る限り噛み砕いて解説する。多分、どのテキストにも載ってないし講義でもやらないと思うので、価値高いと思う。
なぜ自己株式の処分対価を控除するのか
多分、もっとも腑に落ちないのが、ここだろう。自己株式自体を控除するのは、なんとなく理解できるだろう。まあ、△付いているからね。引きたくなるよね。でも、前期末から分配時の間に、自己株式を処分したとき、その処分対価を控除するのは意味分からないという人も多いはずだ。
これは、基本書を読み、数値をこねくり回して、ようやく意味が分かったよ。紹介しよう。上記の設例を使う。
ちょっと話がややこしくなるので、のれん等調整額については無視する。それから自己株式以外の資本取引も無視する。その上で、前期末の時点と、分配時の分配可能額を計算してみよう。
問題再掲
【資料1】前期末貸借対照表の一部
| 資本金 | 14,000 |
| 資本準備金 | 600 |
| その他資本剰余金 | 280 |
| 利益準備金 | 192 |
| 任意積立金 | 240 |
| 繰越利益剰余金 | 360 |
| 自己株式 | △60 |
【資料2】前期末から分配時までの間に自己株式のうち40を48で処分した。
前期末時点での分配可能額
その他資本剰余金280+任意積立金240+繰越利益剰余金360−自己株式60=820 つまり、この時点で配当金を分配しようと思ったら820まで可能なわけだ。
分配時の分配可能額
前期末から分配時までの間に自己株式のうち40を48で処分した。したがって、分配時の純資産は次のようになっている。自己株式が△60から△20になって、差益が8出ているので、その他資本剰余金がその分増えている。
| 資本金 | 14,000 |
| 資本準備金 | 600 |
| その他資本剰余金 | 288 |
| 利益準備金 | 192 |
| 任意積立金 | 240 |
| 繰越利益剰余金 | 360 |
| 自己株式 | △20 |
さて、この時点で分配可能額を計算してみよう。まずは、あえて、自己株式の処分対価を控除しないで、この純資産の額から計算してみる。
その他資本剰余金288+任意積立金240+繰越利益剰余金360−自己株式20=868 つまり、この時点で配当金を分配しようと思ったら868まで可能なわけだ。
あれ?前期末より増えている、と思わないだろうか。前期末時点では820だったのに、自己株式を処分したら868になった。48も増えている。そう。自己株式を処分するとその処分対価の分だけ増えるんだ(これは当たり前で、式を変形するとそうなる)。だから、株主にたくさん配当金を出そうと思えば、自己株式を処分すればいいんだ。その処分対価の分だけ分配可能額が増えるから。
それじゃあ、おかしいよねということ。前期末時点で利益は確定しているのだから、その時点で分配可能額は確定しているはず。自己株式を処分したからって、それによって、分配可能額が増えたらおかしい。
そこで、自己株式の処分対価を控除しているわけだ。本問の場合は、868から処分対価の48を引けば820になって、前期末時点での分配可能額と同じになるよね。そういうことだ。
のれん等調整額の本質的な意味は何か
続いて、一番やっかいな「のれん等調整額」の話。次のようなB/Sがあったとしよう。
| 現金 | 300 | 借入金 | 300 |
| 土地 | 300 | 資本金 | 300 |
| 繰延資産 | 300 | 剰余金 | 300 |
ここで、こんなこと考えてみてほしい。貸方の「借入金」は、借方の資産のどれに対応しているか?もちろん本当は、どれにも対応していない。あくまで、貸方の負債と純資産の合計900で借方の資産の合計900を得たわけだ。借入金300が資産900のどの資産に対応してる?なんて言われても分かるわけない。でも、あえて考えてほしい。
ここで、例えば、借入金300は現金300に対応しているとする。で、資本金は土地に、剰余金は繰延資産に対応しているとする。そして、負債や純資産はその対応している資産から払い戻すものとする。
さて、ここで、債権者が「お金返してほしい」と思ったとする。すると借入金は現金に対応しているので、すぐに返してもらえる。債権者は一安心。
一方で、株主が「配当欲しい」と思ったとする。剰余金に対応しているのは、繰延資産。繰延資産って知ってるよね。資産とは名ばかりで実質的には費用。適正な期間損益計算のために無理してB/Sに載せてるわけだ。換金価値ゼロ。すると、配当出そうと思っても、その根拠となる資産が繰延資産じゃあ、配当なんて出せない。すると、株主は「ふざけるな」となるわけだ。
じゃあ、こうしよう。繰延資産は資本金に対応させよう。そして、土地を剰余金に対応させよう。これならば、うまくいく。土地なら換金性あるしね。こうすれば剰余金300を全部配当にまわせる。株主も納得、債権者も返済原資として現金300が確保されているので文句ない。みんなニコニコ。
要するに、資本金(と準備金)は、払い戻すことが無いので、そこに繰延資産みたいな問題児を割り当てちゃえば、どこからもクレームが来ないというわけだ。ここまでいい?
さて、もし、次のようなB/Sだったらどうだろう?
| 現金 | 300 | 借入金 | 300 |
| 土地 | 200 | 資本金 | 300 |
| 繰延資産 | 400 | 剰余金 | 300 |
土地が200しかなくて、繰延資産が400。すると、繰延資産を資本金に対応させようとしても、資本金は300しかないので、まかないきれない。100足りない。これをどうするかってことだ。その分、借金の返済をあきらめるか、ってわけにはいかない。債権者はブチギレだ。現金300あるなら現金で返せ!と言ってくるに違いない。
ということで、どうするかというと、この場合は、株主に泣いてもらおうということになってるんだ。つまり剰余金は300だけど、200しか配当しないってことにしようと。要するに100を配当制限しようと、そういうルール。
何の話してるか分かるよね?そう、分配可能額の算定における、のれん等調整額の話だ。この説明ってすごい納得感ない?まあ、この理屈自体が試験に出ることは無いけど、知っていれば腑に落ちるし、記憶も定着するよね。
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“1級商会・純資産会計(分配可能額)” に対して17件のコメントがあります。
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資本等金額は、前期末の合計額だったような気がしますが
cafeさんへ
いつもお世話になります!ありがとうございます。そのとおりです。修正しました。
そうですよね。前期末の額使わないと、配当金分配する直前に計数変動しただけで分配可能額変えることできちゃいますもんね。
今までモヤモヤ感のあった「自己株式の処分対価の控除」と「のれん等調整額の本質」について、本当に魔法のように理解できました。ありがとうございました。
それから、のれんが巨額の場合について、覚えにくくて困っていましたが、試験対策としては深追いしなくて良いということで安心しました。(私の錯覚なのかもしれませんが、基本をきっちり押さえつつ例外を深追いしないことによって、逆に例外が記憶に残りやすくなったような気もします。)
ニュートリノさん
コメントありがとうございます。分配可能額は、たまにしか出題されないので、忘れちゃいますよね。特にテキストには「なぜ?」が書かれていないのでなおさらですね。少しでも覚えやすくなれば嬉しいです。
>私の錯覚なのかもしれませんが、基本をきっちり押さえつつ例外を深追いしないことによって、逆に例外が記憶に残りやすくなったような気もします。
そうそう。そうなんですよ。とにかく「ここが主軸だ」というのを見極め「それ以外は例外だから、まあいいや。過去問にも1回も出てないし」なんてことを試行錯誤しながらやっていると、あら不思議、結局、全部覚えちゃうんですよね。フラットに覚えようとせず強弱付けるのがいいのかもしれませんね。
いつもお世話になります。
一つ質問があり、メール致します。
このページの、解説 Step.3-2 のれん等調整額
のところの、
本問の場合、
•資本等金額:資本金14,000+資本準備金600+利益準備金192=14,792
•のれん等調整額:のれん29,400×0.5+繰延資産180=14,880
A.より、のれん等調整額14,880>資本等金額14,792 なので、超えた分は88。
一方、B.は、29,400×0.5<資本等金額14,776+その他資本剰余金320 から満たしていないので、無視。
とありますが、一方、B.のところですが、
のれん29,400×0.5 < 資本等金額:資本金14,000+資本準備金600+利益準備金192=14,792+その他資本剰余金320
じゃないのかな・・・・資本等金額14,776は、分配後の金額と思うのですが、
よく解らなくて・・・・
もし宜しければ、ご教授宜しくお願い致します。
ご返信遅くなって申し訳ないです。ご指摘ありがとうございました。そのとおりです。資本等金額が前期末の合計額であることをcafeさんという方から1年以上前にご指摘があってそのとき修正したつもりでしたが、抜け落ちていました。
ご丁寧にご指摘頂いてありがとうございました。助かりました。
先生、こちらこそ有難うございます。
いいHPを有難うございます。
今は、標準原価計算の所を、勉強させて頂いています。
差異をどの時点で算出するのか・・・・
なるほどと恐れ入るばかりです。
有難うございます。
プロ簿記様
上記コメントしたものです。
Bは、のれん1/2のみで繰延資産はいらないですね・・・
勉強不足で申し訳ありませんでした。
資本等金額の方はまだよく解っておりません
分配可能額について質問です。
分配可能額算定にあたり剰余金の額は、なぜ前期末の数字を使わず、分配時の数字を使うのでしょうか?仮に前期末の剰余金の額で計算すれば、前期末から分配時までの株主資本の計数変動の影響を受けないので、計数変動を考慮したり自己株式の処分対価を引いたりする必要はありません。のれん等調整額からの控除額を計算する際も各項目の数字が、あれ、前期末のだっけ?それとも分配時?と悩まずに済みます。そもそもP/L利益額は前期末に確定しているしそれをもとに計算すればいいじゃん…と思ってしまいます。
それともやはり、前期末から分配時までの株主資本の計数変動の影響を分配可能額に反映させたい、ということなのでしょうか。このあたりいまいちイメージができかねております。
お手数をおかけしますが、もしよろしければ何卒ご教示いただけますと幸いです。
>分配可能額算定にあたり剰余金の額は、なぜ前期末の数字を使わず、分配時の数字を使うのでしょうか?
分配時における分配可能額を算定したいからです。
前期末時点のBSで、分配可能額はいったん決定されますが、前期末から分配時までにすでに分配していたり、準備金への振替え取崩しが発生しているかもしれません。そのような処理を考慮したいのです。ちなみに、自己株式の
処分取得(修正しました)は株主への直接の支払であり、剰余金の配当と同じ効力を持ちます(分配可能額を減らします)。なお、計算を楽にするなら、分配時ではなく前期末時点のBSで分配可能額を計算しましょう。その後、剰余金の配当と準備金の振替え・取崩しだけ考慮すればOKです。この計算方法だと自己株式の処分対価を控除する必要がなく楽です。
ただし、会社法では、いったん分配時の剰余金の額を求めるというステップを要請しているので、正しい計算手順も押さえておきましょう。
ご返信ありがとうございます。
理解できました。が、さらに疑問が。
自己株式の処分が株主への直接の支払であり、剰余金の配当と同じ効力を持つとは、なぜでしょうか?会社からすれば自己株式の処分は、株主に自己株式を渡して、対価としてキャッシュを得る、と考えると剰余金の配当と逆の効力の持つような気がしてしまいます。つまり自己株式を処分するとその分キャッシュが増えるので、その増えた分、分配可能額も増えるような気がします。従って、分配可能額の算定にあたり、なぜ前期末から分配時までの自己株式の処分対価を控除するのかも疑問です。いや、キャッシュ増えてるじゃん、その分配当も増やしてよね(株主の心の声)…と思いました。
度々の質問で大変恐縮ではありますが、何卒よろしくお願い申し上げます。
すみません、書き間違えました。「自己株式の処分」ではなくて「自己株式の取得」でした。株主への資本の払い戻しという意味で剰余金の配当も自己株式の取得も同様の効果を持ちます。
ちなみに分配可能額は、例えば「自己株式を取得したい」と思ったとき、いくらまで取得できるか、その上限額でもあります。数年前に、HOYAがこの分配可能額を上回る額の自己株式の取得をしてニュースになっていました。
https://www.nikkei.com/article/DGXLZO02492090Y6A510C1DTA000
ご返信いただきましてありがとうございます。
”自己株式の取得”が、株主への直接の支払であり、剰余金の配当と同じ効力を持ち、従って分配可能額も減額される、ということはイメージできました。大変勉強になります。
しかし、今ひとつ腑に落ちない点があり、恐縮ではありますが再度の質問をいたします。
(前期末~分配時までの)”自己株式の処分対価”は、なぜ分配可能額から控除されるのか、という点です。自己株式を処分すれば、自己株式処分差益(その他資本剰余金の変動)に関わらず、処分対価としてキャッシュが増えるので、その分の分配可能額も増えていいような気がします。また、(前期末~分配時までの)他の株主資本の計数変動で剰余金が増えれば分配可能額も増えるのに、”自己株式の処分対価だけ”は控除するのは、どうも会計処理が非対称な感じがして理解しづらいです。
今年は株主に世話になったから多めに配当出したいなぁ、でも利益が思ったより出なかったんだよなぁ、しょうがない資本金と準備金を剰余金に振り替えて配当の原資にしよう!
ということで分配可能額を多くすることが理論上できるのに対して、
そうだ!自己株式があったんだ!あれを売って配当の原資にしよう!え、自己株式を売ってもその分配当できる額は変わらないの?そんなぁ~(´・ω・`)
というのはおかしく思う、といった感じでしょうか。
あるいは、自己株式とはそういうもんだ!ということで暗記するしかないのでしょうか。
お手数をおかけしますが、もしよろしければ何卒ご教示いただけますと幸いです。
>自己株式を処分すれば、自己株式処分差益(その他資本剰余金の変動)に関わらず、処分対価としてキャッシュが増えるので、その分の分配可能額も増えていいような気がします。
いやいや、そりゃおかしいでしょ。配当って原則、利益からしか出せないのよ。例外的に、その他資本剰余金は資本ではあるけど明らかに余っていて債権者に迷惑掛けないから配当に出せるけど。
自己株式の処分って、新株発行と同じことやってるわけでしょ。引き渡す株が新たに発行されたものか、金庫に入ってたものかが違うだけで。
つまり、増資によって資本金増やして現金もらっているのと一緒よ。それでゲットしたお金を配当に回したらおかしいでしょ。タコ足配当になっちゃうよ。
>今年は株主に世話になったから多めに配当出したいなぁ、でも利益が思ったより出なかったんだよなぁ、しょうがない資本金と準備金を剰余金に振り替えて配当の原資にしよう!ということで分配可能額を多くすることが理論上できるのに対して、
確かに、理論上できるっちゃあ出来るけどね。ただ、債権者保護のための制限あるよ。詳しくは会社法調べてね。
まあ普通に考えて、資本を取り崩して利益に振り替えれば、その分を配当に回せるじゃん!って言い出したら、そもそも資本と利益を分けている意味がなくなっちゃうよね。それが自由に出来たら、企業会計原則がうたっている資本と利益分けようねの根底が崩れちゃうよね。
なるほど、自己株式の処分によるキャッシュ受領が増資による資本金増加と一緒、と考えれば、自己株式の処分対価を分配可能額から控除する必要性のイメージがつきました。どうもありがとうございました。
いつも拝見しています。
のれんが巨額で、
のれん×0.5>資本等金額+その他資本剰余金 なら、「その他資本剰余金+繰延資産」の額を剰余金から控除する。
とあると思うのですが
その場合、資本等金額以上に割当てが可能とあると思うのですが、この場合はどう考えるのでしょうか?
はい、わんこさんの書かれているとおり、そういうルールありますね。
これは、合併などであまりに巨額ののれんが生じてしまったときのためのイレギュラールールです。
M&Aでは、場合によっては巨額ののれんが生じることがあります。この場合、通常通りのルールでいくと、分配制限額が大きすぎて、事実上配当ができなくなってしまいます。債権者保護はそれでいいんでしょうけど、今度は、株主からの支持を得られなくなり、資金調達に支障が出たり、株価が下落したりします。すると、それが怖くて、巨額のM&Aに躊躇してしまうということになりかねず、企業再編生を促進させて国内企業を強くしたい政府は、それはまずいと思って、イレギュラールールを作ったんだと思います。つまり、のれんがあまりに膨大でもある程度は分配できるようにしてあげているのです。
なお。
このイレギュラールールって非常に覚えにくいですよね。あと、こういう通常ルールと似ているけどちょっとだけ違う部分があるイレギュラールールって覚えにくいだけじゃなくて、場合によっては、既に覚えてたところまで混乱させてしまう可能性があるんですよね。
そういったことを考えると切るのが吉だと思います。
もし「いや、私は、ルールは完璧に覚えないと気持ち悪い派なんだ」ということなら、覚えてもいいと思いますが、おすすめはしません。なお、出題実績はゼロです。今後の出題可能性も低いと思います。さらに仮に出ても埋没する可能性は大です。