1級商会・デリバティブ取引

デリバティブ取引
デリバティブ取引。ここ、結構苦手にしている人多いんじゃないかな。実は、これ、全然難しくない。難しいのは用語だけ。やってることも仕訳もとっても簡単。でも、用語にやられちゃうんだよな。
今回から2回、デリバティブとヘッジ会計について解説するよ。しっかり読めば必ず理解できるはず。仕訳を覚えるんじゃなくて、その取引の意味を知ろう。でははじめるよ。
FXはデリバティブ取引
皆さんはFXって聞いたことあるだろうか。FXはまさに外国通貨のデリバティブだ。やったことある人は、もうデリバティブを体験済みということだ。多分、自分がデリバティブをしているという感覚は無いと思うけどね。
やったこと無い人に簡単に説明するよ。
今、1ドルあたり100円だとするね。これを1万ドル買う。100万円だ。しばらくしたら1ドルあたり110円になった。ここで1万ドル売る。110万円だ。10万円儲かった。これが基本。
で、この取引をするには、普通は100万円必要だ。ところがこれを10万円でやる方法があるんだ。(もっと少なくてもいいけど分かりやすく10万円とする)。それがFX。
どういうことかというと、まず、保証金として10万円をFX会社に預ける。そして1ドルあたり100円のときに1万ドルの買い注文を入れる。で、1ドルあたり110円になったら売り注文を入れる。すると差額の10万円が貰える。こういう仕組み。
もちろん逆に円高になって1ドルあたり95円のときに1万ドルの売り注文を入れると5万円損する。すると保証金から5万円引かれる。こういうこと。すごく簡単。
ポイントは、「損失は、保証金の額までしか許されない」ということ。つまり、もし円高になって1ドルあたり90円になったら10万円の損だから保証金と同じになっちゃうよね。こうなると強制的に売らされて10万円の損失が確定して、終了する。これをロスカットという。(実際は、1ドルあたり90円になる前に、たとえば91円くらいで「そろそろロスカットですよ。もし続けたいなら、保証金を追加で入れてね」っていう連絡がくるけど。)

デリバティブ取引は約束するだけ
どうだろう。仕組みは分かっただろうか。今回はFXを例に説明したけど、先物取引とよく似ている。仕組みはほとんど一緒だ。FXは対象が外国通貨。一般的な先物取引は、金とか銀とか原油とか小豆とかが対象。あと、FXは期限がない。一方、先物取引は期限がある。そういった相違点はあるけど、考え方も会計処理はほぼ同じだ。
ここで勘違いしやすいのが、FXの世界で「買った」といっても実際に買ったわけではないということ。あくまでも「1ドルあたり100円で1万ドル分買って、いつかはカレントレートで売るという”約束”をした」にすぎないということだ。
ここまで分かれば、もうデリバティブの半分くらいは分かったようなものだ。
デリバティブ取引の会計処理
さて、会計処理。
1ドルあたり100円で1万ドル分の買い注文を入れたとしよう。でも、この瞬間は約束をしただけにすぎないので仕訳はしない。
そして、決算時に、為替レートが1ドルあたり105円だったとしよう。すると、その瞬間に約束を行使すれば(つまり1ドルあたり100円で1万ドル分買って、即時105円で売れば)5万円儲かるわけだ。実際に行使しなくても行使しようと思えば出来る状態だ。これは、売買目的有価証券の時価評価と似ている。つまり、含み益の状態だけど、行使しようと思えば即時行使できるので、これをその期の損益として損益計算書に計上する。
ここで、勘定科目が問題になる。有価証券のように実体のあるものではなく、「約束」というバーチャルなものなので、イメージつかみにくいけど、まあ、行使すれば収益が得られる約束なので資産価値あるよね。よって何らかの資産であることを示す勘定を使う。
一方、相手勘定は何らかの収益を示す勘定にする。別に名前は何でもいい。ようするに営業外収益に計上されるよってことが分かればOK.
なお、先物取引とFXは厳密には違うもの。しかし、考え方も会計処理もほぼ同じなので、ここからは、先物取引を使ったときの勘定を例にして、仕訳を示す。
まず、取引時は、
仕訳なし
決算時に5万円の資産価値があるなら、次の仕訳が切られる。
(先物取引差金)50,000 (先物損益)50,000
さて、翌期首。これも売買目的有価証券と同じような感じだ。洗替法を採用しても切り放し法を採用しても構わない。洗替法なら再振替仕訳をするだけの話。ここでは、洗替法を採用しているとする。よって、次の仕訳が切られる。
(先物損益)50,000 (先物取引差金)50,000
そして、決済時。1ドルあたり110円になったので、決済した。すると1ドルあたり100円で1万ドル分買って、110円で売却したことになるので10万円儲かる。よって、次の仕訳になる。
(現金)100,000 (先物損益)100,000
実際は、冒頭にも書いたとおり、保証金を入れないと先物取引は始められない。なので、上記の仕訳に加えて、契約したときに次の仕訳が入る。
(先物取引差入証拠金)100,000 (現金)100,000
さらに、決済時に、もうそのFX会社とは付き合わない、というのなら保証金を返金してもらう。そのときは次の仕訳を行う。
(現金)100,000 (先物取引差入証拠金)100,000
ただ、現実には、保証金は入れっぱなしの場合が多いと思う。しかし、試験では、だいたい、1回の取引が終わると、保証金も返金するという仕訳をするようだ。このあたりは問題文に従ってくれ。

取引イメージが大事
まずは、ここまでの取引イメージを完全につけてほしい。そして大事なことは、デリバティブは実体がないバーチャルなもの(上記では約束と表現)だけど、それでも決算時にはその約束を資産(または負債)計上し、かつ、評価差額を損益計上するということだ。
損益計上するということは損益計算書にも計上されるし、税金にも影響してくるってこと。これ、実務では結構、見落とすんだよね。
次は、ヘッジ会計書くよ。
次回のヘッジ会計の理解には、その前提として、このデリバティブがちゃんと分かっていることが必要だ。だいたいヘッジ会計が苦手な人は、デリバティブも分かっていない。だから、まず、ここまでしっかりイメージしよう。
余談
ものすごい余談なんだけど。僕は2006年からFXやっているからもう10年やってることになる。当時は全然法整備もされていなくて、あやしい業者がたくさんいた。それでも、とにかくこれは儲かると思ってやっていた。
事実2006年から2008年に掛けては数千万円の利益を出していた。もう、一生これだけで食っていけるんじゃないか、と思うほどだった。税金が大変だった。ところがそこにやってきたのがリーマンショック。数千万の利益は全てふっとんだ。もうね。阿鼻叫喚とはこのことだよ。
でも、トータルしたら多分プラスマイナスゼロくらいじゃないかなと思う。でもとんでもないワナがあった。儲かったときは税金何百万円も取られるのに、損しても返って来ないんだ。これは個人でやっていたから。当時、FXの収益は雑所得扱いで、損益通算も繰越控除も出来なかったんだよね。これはがっかりした。
で、あわてて、法人契約のFXに切り替えたんだ。登記簿の定款も変更してね。こうしておけば、損益通算も出来るし、損しても繰越欠損金になるからね。
ということで、このあたりは、経験あるので詳しいのでした。
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“1級商会・デリバティブ取引” に対して19件のコメントがあります。
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>> 法人契約のFXに切り替えたんだ。登記簿の定款も変更してね。こうして
>> おけば、損益通算も出来るし、損しても繰越欠損金になるからね。
この手がありましたか。
そういえば、次期某国大統領もこれに似たような話があったような…
今後の参考になりました!?
熱男さんもFXやってるんですか?
法人いいですよ。PCも書籍も新聞も自宅の家賃(の一部)ですら事務所費として損金にできますし。自分自身への給料すらも経費ですからね。まあ、これは会社持っていれば誰でもできますけど。
法人作るのなんて簡単だから、もしある程度大きな額を動かしているなら、法人作るのおすすめです。ただ、法人だと決算で税理士さんのお世話にならざるを得ないので、その額を上回るくらいの利益が出そうな場合におすすめです。
>> 熱男さんもFXやってるんですか?
FXは、時間もないので、やっていません。
今はサラリーマンなので、
法人を持つことができませんが、
将来的には考えており、
これって株の場合でも、売買目的有価証券ということで、
似たようなことができるかなと思った次第です…
そのときには、税理士さんときちんと話ができるぐらい
簿記の知識も高めたいです。
こんにちは。
差入証拠金って何のためのお金なのか、いまいちわかりませんでしたが、その金額まで損失はオッケーって感じなんですね。
テキストでは最後にいつも逆仕訳なので、どうせ返ってくるなら差し入れる必要ある?なんて思ってましたが、そういうことなんですね。
勉強になりました。
>差入証拠金って何のためのお金なのか、いまいちわかりませんでしたが、その金額まで損失はオッケーって感じなんですね。
そうですそうです。先物取引において、証拠金は超大事。これを担保にして約束しているわけですから。これがないと先物取引にならない。ちなみにFXの正式名称は、外国為替証拠金取引といいます。こういうのって授業では教えてくれないのかな?結構大事ですよ。
先生、デリバティブ取引もあまり問題を解いていないので苦手です。
私も「先物取引差入証拠金」は、保証金なんだろうなあと思っていたぐらいで
超大事だとは・・詳細までは、理解していませんでした。
「先物取引差金」勘定もB/S勘定だと理解しておらず・・実態がよくわかりました。
ところで、もし「切放法」であれば、
決済時に、現金100,000/先物取引差金50,000
/先物損益 50,000
以上の仕訳になるんでしょうか?
(投資ってこわくて手が出せません・・)
>ところで、もし「切放法」であれば、・・・
そのとおりです。その仕訳であってます。
洗替法のメリットは、取得原価だけ判明すれば、決済時に仕訳が切れるということですね。
もし切放し法にしちゃうと、そのときの簿価(つまり前期決算における時価)が判明しないと仕訳が切れないですからね。
基本、デリバティブは会計処理だけ見れば売買目的有価証券と同じことやっているということですね。
ブログ拝見して勉強させていただきました。
初歩的な事で申し訳ないのですが、上記説明の
期末(先物取引差金)50,000 (先物損益)50,000
翌期首(先物損益)50,000 (先物取引差金)50,000
翌期末(現金)100,000 (先物損益)100,000
で仕訳した場合、1番初めの期末時に5万円分の利益を出した分、税金を払うのでしょうか?
翌期末に処分せずに利益が出たまま保有した場合は毎期、毎期、利益分の税金を払う事なのでしょうか?
それだと、多く税金を払ってる計算になりませんか?
いまいち、計算がわかりません。教えていただけると幸いです。
>で仕訳した場合、1番初めの期末時に5万円分の利益を出した分、税金を払うのでしょうか?
はい。課税対象です。
>翌期末に処分せずに利益が出たまま保有した場合は毎期、毎期、利益分の税金を払う事なのでしょうか?
評価額が上昇し続けた場合は、そのとおりです。逆に評価額が下がればその分は税務上の損金となりますので税金が安くなります。具体的に次のケースを考えてみましょう。
1年度取得:100で取得
1年度期末:110で評価
2年度期末:150で評価
3年度期末:140で評価
4年度期中:120で売却
この場合、1年度期末に10に対して課税され、2年度末には40に対して課税され、3年度末は逆に10の分税金が安くなります。さらに、売却時には、20の分税金が安くなります。
結局1年度から2年度にかけて50に対して課税されますが、3年度から4年度にかけて30の分税金が安くなりますので、トータルすると、20に対して税金が掛かります。
100で取得したものを120で売却して20に対して税金が掛かっているので、損も得もしていません。
とても分かりやすい説明して頂きありがとうございます。
なぞが全て解けました。
実際に売却して利益が出た時に税金を納めないのが不思議でしたが、そもそもの考え方が違っていました。
分かりやすい説明のおかげで、全て納得できました。ありがとうございました。
FXはレバレッジをかけるので、保証金以上の損失が発生します。
保証金でカバーできない損失は追証連絡が来る。後日入金します。
デタラメな知識をネットに公開しないで欲しい。
スリッページのこと?くみさん、くらったのですか?
私もリーマンショックのときにくらったのでお気持ちは分かりますが…
それ言ったら「銀行の普通預金はいつでも出し入れ可能ですよね」という説明に「銀行が潰れそうになったら出せないときもある。取り付け騒ぎを知らないのか」と絡みつくのと同じですね。
簿記会計の解説記事であるという趣旨を理解していただければと。
丁寧な解説記事ありがとうございます。
一つ確認させていただきたいのですが、デリバティブ取引が記事に出てくるのみだとした場合、当期末のPLに計上される先物差益は50,000という金額で合っていますでしょうか?
はい、そのとおりです。
取得時100→前期末105→当期売却110 となっていますから、前期50,000、当期50,000の先物差損益を計上します。
お忙しいところ、解説ありがとうございました。
他の論点の記事を熟読中で、お返事が遅くなり、申し訳ありません。
FXの話について質問させてください。
1ドルあたり100円のときに1万ドルの買い注文を入れ、1ドルあたり110円になったら売り注文を入れると、差額の10万円が貰えるというのはわかりました。
しかし、どうしてこれが先物取引にあたるのでしょうか?
あらかじめ決められたレートで、いつか取引を行うことが先物取引だと認識しています。
今回のFXの話では、現時点のレートで1回目の取引をし、その後レートが変化してから2回目の取引をするということですよね。
先物取引ではなく、外貨換算を2回しているだけに思えてしまうのですが・・・。
おっしゃるとおりです。FXと先物取引は、取引対象が異なりますが、そのほかに、以下2つの相違点があります。
ただ、考え方も会計処理も同じですので、身近なFXを使って解説しています。しかし、当初の書き方では、FXと先物取引がイコールであると勘違いさせてしまう書き方でしたので、修正しました。
ご指摘ありがとうございます。
P.S
このページの一覧表が分かりやすいです。
はじめまして。このサイトを最近知り、有意義に利用させて頂いております。
金利スワップについて教えてください。
こんな問題に出くわしました。
1.当期首にA銀行より変動金利にて借入、200000。
同日、B銀行と金利スワップ契約を締結。(変動金利を受取、固定金利4%を支払、利払、年1回で期末)
2.利払日の変動金利は、5%であり、現金で決済した。
その日の金利スワップ取引から生じる正味の債権の時価1500。
必要な仕分けをせよ。
解答
支払利息 10000 現金 10000
現 金 2000 支払利息 2000 (200000x(5-4)%)
金利スワップ資産 1500 金利スワップ差損益 1500
この仕分が、問題文が要求する仕分けとして、正しいと理解出来ます。
ただ、これまで、デリバティブ取引としての金利スワップは、金利スワップ資産が増減するだけであって
実際に利息差額の受渡は、発生はしないものと考えていました。
この問題の取引例だと、デリバティブ取引というより、B銀行を媒体とした相対取引と感じてしまいます。
これまで、期末の金利スワップ資産だけ与えられる問題しか見たことが無かったので、「金利スワップ取引ってどんな取引なんだ?」と考え込んでしまいました。
モヤモヤした状態なので、アドバイス頂けたら幸いです。
>この仕分が、問題文が要求する仕分けとして、正しいと理解出来ます。
はい、この仕訳で正しいと思います。
そして、トノマさんも、この仕訳が正しいと理解できるのですよね?何が問題なのでしょうか。
>ただ、これまで、デリバティブ取引としての金利スワップは、金利スワップ資産が増減するだけであって実際に利息差額の受渡は、発生はしないものと考えていました。
???実際に金利交換(利息の受け渡し)しますよ。そして、その金利交換が自分にとって有利ならスワップ契約を資産計上しますし、逆に不利なら負債として計上します、金利交換をしないのであれば、スワップ契約の意味がないのでは?
>これまで、期末の金利スワップ資産だけ与えられる問題しか見たことが無かったので、「金利スワップ取引ってどんな取引なんだ?」と考え込んでしまいました。
ということは、先の仕訳は納得出来ていないということですかね?
できれば、何が問題で、どうあるべきだと思われているのかを書いて頂けると答えやすいです。