第199回全経上級・商業簿記レビュー

問題1 セール・アンド・リースバック
解答と解説
基本的なセール・アンド・リースバックの仕訳問題でした。テキストの設例に載っていそうな問題です。注意点は、支払利息を「年金現価係数」にもとづいて計算しなければならないことですね。そこだけ注意が必要かな。
| (1)① | 備品減価償却累計額 | 140,000 | 備品 | 420,000 |
| 現金 | 334,540 | 長期前受収益 | 54,540 | |
| (1)② | リース資産 | 334,540 | リース債務 | 334,540 |
| (2) | リース債務 | 79,966 | 現金 | 90,000 |
| 支払利息 | 10,034 | |||
| (3) | 減価償却費 | 83,635 | リース資産減価償却累計額 | 83,635 |
| 長期前受収益 | 13,635 | 減価償却費 | 13,635 |
支払利息について
通常は、リース債務334,540円×利子率3%=10,036円と計算します。しかし、本問は「利息の計算は年金現価係数を用いること」と指定があるため、以下の計算式によって計算しなければなりません。
期末リース債務簿価:90,000円×3年年金現価係数2.8286=254,574円
リース債務返済額:期首簿価334,540円−254,574円=79,966円
支払利息:90,000円−79,966円=10,034円
なお、次の計算式による算定も(試験委員の意図ではないような気がしますが)間違えとは言えないはずです。
リース債務返済額:(4年年金現価係数3.7171−年年金現価係数2.8286)×90,000円=79,965円
支払利息:90,000円−79,965円=10,035円
このため、10,035円も別解として認められるべきでしょう。(認められるかどうかは分かりません)
勘定科目について
なお、本問は勘定科目の指定がないため、リース資産を備品としたり、減価償却費を長期前受収益償却としても、正解となるでしょう。
問題2 株主資本等変動計算書
解答と解説
こちらも簡単。日商簿記2級レベルであり満点を狙うべき問題でしょう。注意点は、配当にともなう利益準備金の積立がゼロである点くらいかな。
仕訳
| (1) | 現金預金 | 500,000 | 資本金 | 251,000 |
| 新株予約権 | 2,000 | 資本準備金 | 251,000 | |
| (2) | 繰越利益剰余金 | 130,000 | 未払配当金 | 100,000 |
| 別途積立金 | 30,000 | |||
| (3) | その他資本剰余金 | 3,000 | 自己株式 | 3,000 |
| (4) | 繰越利益剰余金 | 25,000 | 損益 | 25,000 |
解答
① 2,251,000
② △3,000
③ 0
④ △130,000
⑤ △25,000
⑥ △7,000
⑦ △100,000
⑧ △2,000
問題3 損益勘定と閉鎖残高勘定
解答と解説
これまた簡単。どうしちゃったんでしょう。こうなってくると逆傾斜の心配が出てきます。ケアレスミスが致命傷となりそうです。
なお、「社債発行差金」を出題したのはどうかと思います。これは、現行の会計基準で認められていないばかりか、全経協会も「今後は出題しない」と宣言した論点です。それにも関わらず、出題をするということで、その論点の良否はさておき、自分の言ったことも守れない(忘れてしまっている?)という点で信頼の毀損につながることが懸念されます。
1 銀行勘定調整表
4つの論点がありますが、いずれも日商簿記2級レベルです。5分以内を目安に処理しましょう。
| (1) | 当座預金 | 1,300 | 償却債権取立益 | 1,300 |
| (2) | 売掛金 | 2,000 | 当座預金 | 2,000 |
| (3) | 当座預金 | 1,800 | 未払金 | 1,800 |
| (4) | 社債利息 | 21,500 | 当座預金 | 21,500 |
当座預金:前TB431,800+1,300−2,000+1,800−21,500=411,400 として、銀行残高と一致することを確認します。そのうえで、答案用紙に当座預金411,400を記入します。
また、償却債権取立益、売掛金、未払金もまとめて答案用紙に記入してしまいましょう。後で動くかもと思っても、とりあえず記入することをおすすめします。動いたら、そのとき修正すればいいのです。
なお、社債利息は、問題文に「<資料2>7参照」と書かれており、参照すると償却原価の計算が必要であることが分かるので、これは、後回しにします。
2 貸倒引当金
これも日商簿記2級レベルです。瞬殺してください。ミスしそうな点は、電子記録債券が売上債権に含まれないという判断をしてしまうことくらいでしょうか。いや、さすがにそれはないか。
| 貸倒引当金繰入 | 2,280 | 貸倒引当金 | 2,280 |
* (352,000+2,000+21,000)×2%−5,420=2,280
3 有価証券
これも簡単です。5分以内に片付けましょう。ミスしそうな点は……ないですね。
| (1) | 有価証券評価損 | 7,000 | 売買目的有価証券 | 7,000 |
| (2)① | その他有価証券評価差額金 | 30,000 | その他有価証券 | 30,000 |
| (2)② | その他有価証券 | 20,000 | その他有価証券評価差額金 | 20,000 |
| (3) | 投資有価証券評価損 | 65,000 | その他有価証券 | 65,000 |
なお、仕訳にすると上記のとおりですが、実践的にはいちいち仕訳など切る必要はありません。
BS価額は、売買目的有価証券とその他有価証券が期末時価、子株は取得原価のままと分かっているのですから、さっさと答案用紙に答えを書きます。あとは差額をどう処理するかだけを考えて、有価証券評価損、その他有価証券評価差額金、投資有価証券評価損などで処理すればいいだけです。
なお、その他有価証券は期首の振り戻しをしていないなど一見ひねってあるように見えますが、そんなことには惑わされてはいけません。全部純資産直入法の問題なら、いつでも期末時価と取得原価の差額が解答になることを知っておきましょう。
4 商品売買
これも2級レベル。どうしたんだ、いったい。
| 仕入 | 92,000 | 繰越商品 | 92,000 |
| 繰越商品 | 80,000 | 仕入 | 80,000 |
| 商品評価損 | 3,940 | 繰越商品 | 7,440 |
| 棚卸減耗損 | 3,500 | ||
| 仕入 | 7,440 | 商品評価損 | 3,940 |
| 棚卸減耗損 | 3,500 |
なお、こちらも、仕訳にすると上記のとおりですが、実践的には上記のような仕訳など切る必要は一切ありません。
本問は、商品評価損と棚卸減耗損を売上原価に算入するとありますから、期末実地棚卸高をBSに計上して、貸借差額を売上原価にするだけです。
期末実地棚卸高:@94×290+@500×85+@280×10=72,560(BS商品)
仕入:92,000+2,245,000−72,560=2,264,440(PL売上原価)
5 固定資産
これも2級レベル。これ、本当に全経上級?
| 減価償却費 | 22,500*1 | 建物減価償却累計額 | 22,500 |
| 減価償却費 | 23,040*2 | 備品減価償却累計額 | 23,040 |
*1 675,000÷30=22,500
*2 (160,000−102,400)×40%=23,040
6 為替予約
一応1級の問題だけどひねりなし。基本問題。瞬殺してね。
| 締結時 | 為替差損益 | 600 | 買掛金 | 1,000 |
| 前払費用 | 400 | |||
| 決算時 | 為替差損益 | 200 | 前払費用 | 200 |
なお、これも、実践的には上記のような仕訳など切る必要は一切ありません。
まず、@110円×$200=22,000円の買掛金が@115円×$200=23,000円で確定したので、前TBの買掛金106,550にプラス1,000円して、107,550を答案用紙に記入。
続いて、この差額1,000円のうち、いくらが前払費用になるかを考える。直先差額は@113円と@115円の差額から@2円×$200=400円。これが3/1〜4/30までの分。翌期に帰属する分はちょうど半分なので、200円が前払費用。ということは残りの800円が為替差損益だよねという感じで、答案用紙に記入すると早くて確実。
7 社債
唯一、少し頭を使わなければならない問題。打歩発行なので間違えやすい。それはさておき、社債発行差金を出題する神経が分からない。
| 社債発行差金 | 1,257 | 社債利息 | 1,257 |
結果的に上記のような仕訳を行うことになりますが、試験中はそんなこと(どういう仕訳になるか)など考える必要がありません。
社債の問題は次のように解きます。簿価を追えばいいのです。
- 期首簿価:1,013,400(=1,000,000×101.34%)
- 9月末日簿価:1,013,400×1.02−21,500円=1,012,168
(ここで前TBを確認して、社債発行差金が12,168であることを確認すること) - 期末簿価:1,012,168×1.02−21,500円=1,010,911
よって、社債発行差金は10,911(=1,010,911−1,000,000)
また、期首簿価1,010,340が期末には1,010,911になっているので償却原価分は △2,489であり、社債利息は、1,000,000×利率4.3%−2,489=40,511
8 商標権償却
期間の計算を間違えないようにね。そこだけだね。
| 商標権償却 | 4,800 | 商標権 | 4,800 |
2X02年12月1日に取得していて、10年償却ってことだから2X12年11月30日まで有効。前TBの商標権41,600円は、期首のX04年4月1日から2X12年11月30日までの104ヶ月分なので、当期の償却額は、41,600÷104×12=4,800
9 長期性預金
未収利息を計上するだけ。
| 未収利息 | 2,000 | 受取利息 | 2,000 |
* 200,000円×2.4%×5ヶ月÷12ヶ月=2,000
10 消費税等
借方に仮払消費税等56,000が、貸方に借受消費税80,000があるので、相殺して24,000を未払消費税等にするだけ。
11 法人税等
借方に仮払法人税等80,000があって、当期の法人税等が180,000なので、100,000を未払法人税等にするだけ。
決算振替仕訳
最後に、損益勘定の貸借差額から480,660が算定されるので、これを繰越利益剰余金に振り替えておしまい。
“第199回全経上級・商業簿記レビュー” に対して4件のコメントがあります。
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富久田先生はじめまして。
日商の勉強中ですが、全経の記事も参考にさせていただきます!いつもありがとうございます。
ひとつ、セールアンドリースバックの解説に関してですが
期末リース債務簿価:90,000円×3年年金現価係数2.8286=
ですと、334,359円ではなく254,574円でしょうか?
そして関係ないですが、トップ画が3枚ともかわいいので勉強の合間に癒されます…^^
ご指摘ありがとうございます。誤植でした。修正させていただきました。
猫さまは正義です。
2点質問させて下さい。
・今回出題ありました問題3の閉鎖残高と損益勘定記入について全経上級の試験では良く出題される形式ですが、答案用紙の空欄に勘定を記入する際、順番は採点基準に影響ありますか?模範解答通りでないと、点数はもらえないものなのでしょうか?
・全経上級の勉強方法について過去問を何度も回す方法なのですが、その他取り組んでおいた方がよい教材等はありますか?
>順番は採点基準に影響ありますか?
うーん、どうでしょう。全経の採点基準が分からないので明確に答えるのは難しいところがあります。問題によるのかなと思います。
たとえば、閉鎖残高勘定は、大陸法を採用しているときに設けられる勘定で、決算振替仕訳のときにBS勘定を振り替える勘定ですよね。要するにあくまでも勘定であって、財務諸表ではないので、そこまで厳密に並びに重要性があるとは思えません。ですから、多分ですが、順番が多少異なっても配点されると思います。
とはいえ、例えば、有形固定資産の方が現金よりも上に来るとか、あまりにめちゃくちゃだと、いくら勘定とはいえ、財務諸表(BS)のもとになるわけですから、減点したくなります。
本問の閉鎖残高勘定は、借方が、前払費用と未収利息、貸方が、未払金と未払消費税等、未払法人税等でしたよね。これくらいなら順番が異なっても減点されることはないと思います。
>全経上級の勉強方法について過去問を何度も回す方法なのですが、その他取り組んでおいた方がよい教材等はありますか?
1級の学習はされているのでしょうか。それであれば、過去問を回すだけで十分だと思います。
余力があれば理論対策をしておいてもいいですが(税理士の財務諸表論のテキストや問題集などを使う)コスパは悪いです。学習時間ほどには効果が出ません。
とにかく、基本問題を落とさないことです。テキストの例題レベルを落とさなければ、余裕で合格できます。